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くるぐる使い

大槻ケンヂのSF短編集。
「キラキラと輝くもの」「くるぐる使い」「憑かれたな」「春陽綺談」「のの子の復讐ジグジグ」の5篇と糸井重里さんとの対談が収められている。

どれも世にも奇妙な物語でドラマ化してみたいと思うような要素を持った"ありそうで無いけど地球の何処かでは有るんじゃないか"と思える話で構成されている。

キラキラと輝くもの

筋肉少女帯のアルバムタイトルにも使われているが、内容的には「UFOと恋人」に入っている「くるくる少女」に通じるものがある。

衝撃のラストを迎えるが、世の中にはこうやって亡くなっていく人が本当にいるのではないかと思うと背筋が凍る作品。

くるぐる使い

この物語は"くるぐる"と呼ばれる人を二束三文で買い取り、面倒を見ながら芸を披露する旅芸人の懺悔・罪滅ぼしを死ぬ間際に若い看護師にするそこそこ残酷で悲しい物語だった。

表題作。母が子どもの頃、近所の大きな神社で行われる夏祭りでテントで何か模様し物をしているのに興味があったようだが、祖母に「そこはダメ!」と手を引かれて入れなかったと言っていた。

高校生の頃、現代文の授業で中原中也の"ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん"でお馴染みの「サーカス」を学んだが、先生が「昔、お祭りの時に見世物小屋というのがあって…」と話した時に全てが繋がった。

今もあったら相当問題になるだろうな。

憑かれたな

突如悪魔付きとなった女子高生に困り果てた母親が、オール・ジャンル・エクソシストと名乗る滝田一郎に除霊を頼むが…というナンセンスなお話。最後の一行がグッとくる。

あとがきで「滝田一郎のその前後の物語もいつか書きたい」とあったが、まだ実現していないのでオーケン先生に期待を寄せてみる。

春陽綺談

友達もいない詰まらない日々を「この鉛筆でいつか壊してやる」と、毎日学校でナイフを使って鉛筆を尖らせている少年が、異界へ導かれそうになる姿と現実と向き合いたい葛藤を描いた作品。

思春期独特の人には無い何かを探しながらもがく姿が作中で削られた鉛筆のように鋭く突き刺さる。

のの子の復讐ジグジグ

虐められていたのの子がある日、臨死体験を経てスターダムにのし上がり、世間への復讐を行う話。

読みながら「こうやって教祖が誕生して信者がアホみたいに増えていくのか…」と、漠然と考えていたが、全ては復讐のためであり予定通り市を迎えたのの子のずる賢さに脱帽した。

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どれも秀逸で後気味悪いが、「くるぐる使い」「のの子の復讐ジグジグ」が星雲賞に輝いたのは納得である。

のほほん学校か何かで「小説書きたいとは思うんだけどデジャヴが怖くて書けないんだよね」と言っていたので、無理のない範囲でいつかオーケン先生の作品を"新作"として手に取ってみたい。