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今敏監督の世界に触れて

かれこれ5年以上通っている新文芸坐にて、今敏監督の上映が行われる。ということで「オハヨウ」を除く全ての監督作品を鑑賞してきた。

私が今監督の作品に触れる1番最初のきっかけは、友人と飲みに行った時に「パプリカって聞くとこっちなんだよなぁ」と平沢進のパレードの動画を見せられた1年前のあの日。

最初はよく分からん音楽だと思いながらも次第にヒラサワの世界に没入し、今年の春には極悪GN団員となった。

7月にユリイカという文芸誌で今監督の特集が組まれ、ヒラサワのメールインタビューを読むために買ったが、一応一通り読む。

読了後、何か物凄く強い力に吸い込まれるように"観ねばならない"という強迫観念を持ち始めたところ、各地でのリバイバル上映が始まった。
平日は休めそうもなかったので土日に予約。そのため、公開順とは異なる順番で4作品を鑑賞することとなった。

以下、簡単に観た作品の感想を書き並べていく。

東京ゴッドファーザーズ

・初っ端から70年代の空気が漂っているように見えたが、時代背景が現代だったw
・さりげなく街の書店に「千年女優」のポスターが貼ってあったり、オープニングのスタッフクレジットの見せ方が好き。
・ミユキかわいい。というか、10〜20歳頃の私のグレ加減に近いものを感じた。
・カーチェイス最高!!

内容も割と明るめでとっつき易く、4作品の中で1番わかり易くて好きな作品となった。
登場人物全員幸せになってほしい。

パプリカ

・平沢進の音楽が随所に使われていて、それだけで満足
・時田先生初登場時のインパクト大!!
・所長の発狂シーンからのパレード…何度でも観たくなる。
・渡り廊下を走りながら敦子からパプリカに変身するシーンがとても良い
・原作と違って誰も死なない…!
・EDの白虎野の娘でなんか泣けてくる

この作品が今さんの劇場作品として最後になってしまったのが惜しい。
観賞後、原作を読んだ。キャラ設定にはすごく忠実であるが、DCミニの形状や粉川警部の夢の内容がオリジナルであることがわかり、文字から絵に描き起こす想像力の半端なさを知る。
"夢見る子供たち"もとい"夢見る機械"だけでなく、他の作品ももっと観てみたかった。

PERFECT BLUE

・未麻が抜けた後のオリコンチャート入りを祝うシーンでchamの上に「アフリカのクリスマス/島崎和歌子」の文字を見つけ、ヒラサワ愛を強く感じるw
・1990年代にネットなりすましストーカーを題材にする時代の先取り力…!
・何処からが妄想で何処からが現実か。さっぱり分からないようにしてしまうことで視聴者側の想像力を掻き立ててくれる。
・日本でもR-18+とかで良いのでは(・∀・)?

朝っぱらから観るもんじゃなかったw
でも観れて良かった。オチはユリイカで知っていたもののそれでも怖い。実写だったら観れなかったけど実写ばりの演出力がやっぱり凄い。

千年女優

・えっ、何処からが映画の話ですか!?と観る側をも唖然とさせる手法は今さんならでは。
・劇中に出てくる映画のシーンが名画のオマージュ。もっと沢山古い映画を観てから観直したい
・千代子の複雑な「鍵の君」への心境に思わず自分を被せてしまった
・泣けた

「あの人を追い掛けている私が好き」…この心情、自分の身に覚えがある。高校生の頃に知り合った方をもう一度会ってみたいと思いながらももう自分も若くないなと思ってしまい、未だに再開を果たせていない。

EDのロタティオンが美しかった。

劇場版4作品を観た2週間後、再び新文芸坐を訪れる。人生初のオールナイトは「妄想代理人 一挙上映」というなんたる贅沢なことか。

妄想代理人

(井上俊之さん談)
・1・2・11〜13を観れば話は繋がるww
・8話は揉めて大変だったから観てほしい
(観た感想)
・ラーイーヤーライヨラで泣ける。夢の島思念公園13回も聴けて歓喜
・マロミのテーマで落ちぬよう耐えること13回
・予告ではなく夢告であるセンスの高さ
・5話で置いてかれそうになった()
・8話「明るい家族計画」は草。内容はかなり好きな部類
・9話の井戸端会議、なぜ明らかにおかしいのに信じてるんだwww
・10話の手抜き感が実は手抜きじゃない。アニメーション現場の狂った感じがやたらとリアルで好きw
・ポカーンとしていうるうちに終わった。結局少年バッドとは…?
・少年バッドの声がもやしもんの沢木の声だ!!と観終わってから気づく(遅

1時間超えのトークショーが結構面白かった。新文芸坐の方が最初の挨拶で「私の自慢は15年ぐらい前に今敏監督にサインを頂いたことです。私が20年ぐらいここに勤めていてサインを貰ったのは今敏監督と哀川翔さんだけです!」と熱弁してて最高だったw

アニメに疎すぎて登壇した井上俊之さん、安藤雅司さん、司会の小黒祐一郎さんのことは全然知らなかったけれど、いかに今さんがAKIRAの頃からすごい人であったかは分かった。

老人ZとMEMORIESぐらいは観なきゃなぁ…と思っていたが、ジョジョも観なければならなくなりそうだ。

主軸の1、2、11〜13話より、間に入ってくる独立したサイドストーリーの方が面白く感じてしまったのは何故だろうw

真夜中の寝落ちしてはならない緊張感の中で観ていたので、ゆっくり観直す機会を作ろうと思う。

中古で小説が手に入ったので読んだところ、同時並行で時系列が進んでいくスピンオフになっており、アニメを観た直後より理解が深まった。

YouTubeで1分間の「オハヨウ」を視聴し、「あぁ、今監督の絵柄だな」と思いながら全監督作品の鑑賞を終えた。

生きていれば、親と同い年。

こんな素晴らしい才能に限って10年前に若くして亡くなってしまうとはこの世は残酷に感じる。

今、自分に出来ることといえば「こんな素晴らしい作品があるのだよ!」と次世代に繋げていくことぐらいだろうか。

合計5日間に渡り今敏監督の作品を上映してくれた新文芸坐での映画体験を忘れないようにここに刻む。

清々しい気持ちで3日とも池袋から水道橋まで歩いたこともきっと忘れない。