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クッキーのこと


2020/01/30 09:49

 クッキーというお菓子が好きです。



 初めてクッキーを焼いたのはいつだったか思い出せませんが、小さい頃からクッキーを焼くのが好きで、何もすることがなくて暇な時、「そうだ!クッキーを焼こう!」と思い立つと、ウキウキしたものでした。とりわけ型抜きクッキーにはものづくり的な工程が多い分、「こんなお菓子が自分で作れるんだ」という達成感に気分が高揚したものです。



 焼けたクッキーを人におすそ分けするという行為にも、なにか素敵な意味合いを見出していたように思います。ハイジだとか赤毛のアンだとか、世界名作劇場にでもそういうシーンがあったのか、こんがり焼けたクッキーをナプキンに包んで手渡す、というイメージが私の中に原風景のようにあり、クッキーは焼いたら人におすそ分けするものだと思っているフシがあります。



 中学生の頃、近所に住むアメリカ人と友達になりました。その時にも、子供の私に考えられることといったらクッキーを焼いてあげることぐらいでした。今考えたら、日本風のクッキーはアメリカ人の口に合ったのかしら?とか、クックパッドもない当時、子供の私がどんなレシピで作ったのかしら?なんて思いますが、私なりの精一杯の歓迎の印であり、国際交流の形であったのだと思います。



 逆に、アメリカのクッキーを初めて口にして目を白黒させたのも忘れられない思い出です。私の通っていた中学高校にはアメリカ人の宣教師が数名おり、英会話や聖書を教えていました。経緯は全く思い出せませんが、そのうちの一人、ミセスPのお宅でお茶を呼ばれる機会がありました。真っ白の銀髪で背中の曲がったミセスPは、学校の隣に建てられた小さな宣教師住宅に住んでいました。そこでいただいたクッキーはなぜかカラフルで、丸でもなく四角でもなく、まるで何かの失敗作のようなボテッとした形をしていました。それはクッキーと呼ぶにはあまりにも歯ごたえがなく、それまで食べたことのない食感の焼き菓子でした。そして何より、それが「砂糖よりも甘い」ことに衝撃を受けました。顔が歪むほど甘くニチャッとしたアメリカのクッキーが、コーヒーをこの上なく美味しく感じさせることを知ったのは、それから10年以上も後のことでした。



 初めてアメリカのレシピでチョコチップクッキーを焼いた時、その砂糖の量と、生地は単なるつなぎであるというようなチョコレートチップとナッツの量に、アメリカの豊かさを見たような気がしました。アメリカのレシピでクッキーを焼く時はお砂糖の量は半分強ぐらいにするとちょうど良いようですが、チョコレートとナッツはやっと生地でつながってるぐらいたっぷり入れた方が、ガッツリアメリカンな味がして美味しいと思います。

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