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ワンコとアジソン病

 犬は飼い主に似ると言いますが(あるいは、飼い主は犬に似る?)、こんなことまで似てしまうのでしょうか?


 夫は十代の頃から、日本では指定難病の免疫疾患を抱えています。我が家は二匹犬を飼っていますが、6歳のリリが、1ヶ月前にアジソン病という診断を受けました。夫と同じ病気ではありませんが、やはり人間だったら指定難病の免疫性疾患です。


 もともと性格的にナーバスな子ではありました。とりわけハエが嫌いで、家の中にハエが一匹でもいると、怯えてあらぬところに逃げ込んだりする子です。先月、生後10週間の仔犬を数日間預かり、家の中がてんやわんやだったことと、リリの大好きな娘が大学に戻ったこと、そしてハエが家の中にいたことが重なり、たいそうな落ち込みぶりでした。仔犬が帰り、ハエも退治したというのに落ち込んだままで、食欲がみるみるうちに落ちていきました。最後の砦であるササミを食べなくなった時点で、救急に連れて行く判断をしました。最初は、胃腸でも弱っているのだろうぐらいに思っていたため、1000ドルかかると言われた血液検査とレントゲンを断り、食欲増強剤と痛み止めをもらってきました(それでも500ドル)。しかし帰宅後、容体は悪くなる一方で、お水も飲んでないようだったので、再び救急へ。前回検査費用をケチったことを反省し、必要な検査を全てしてもらった結果の診断でした。今後ずっと、毎日ステロイド剤の服用と1ヶ月に一度の注射を続けていかなければならなくなりました。処方されたステロイド剤は、なんと夫が服用しているものと同じです。


 現在は、薬のおかげで元気も食欲も取り戻しましたが、日中、臀部と後ろ足が小刻みに痙攣し(震え?)て、それが気になるようでお昼寝ができなかったり、本人(犬)も私たちも、適応段階です。


 正直なところ、救急で診断を受けてから具体的な治療方法が分かるまで頭をもたげたのは、今後ずっと続くであろう治療費のことでした。我が家にとってワンコは家族同様かけがえのない存在ですが、人間の生活が優先なのは言わずもがなです。


 幸い、薬代はそこまでショッキングな額ではなかったので、必要な治療を諦めずにケアしてあげられそうですが、現実問題、我が家は何があろうと費用を度外視できるような家計ではないという事実に向き合わざるをえませんでした。

 リリは、妊娠中に捨てられた親犬から産まれました。生後いったん一般家庭に引き取られましたが、手に余ると手放され、巡り巡ってうちに来ました。たしかに、決して飼いやすい性質とは言えませんが、とびきり明るい天使のような子です。愛情いっぱい注いできました。脚が震えてぐっすりお昼寝できていない様子なのを見るだけでも胸が痛みます。


 獣医の医療技術が進み、ペットの病気や怪我もあらゆる治療が可能になった分だけ、治療や延命の判断は、飼い主に委ねられます。自分がやってあげられることに限界がいつやってくるか分からないという覚悟を持っていなければ……ということを考え、重い心を引きずった1ヶ月でした。


 リリが我が家に来たのも神さまの取り計らい。この子の寿命もおそらく決まっていて、それはきっと、我々の判断のように見えて、そうではないのかも知れない。いずれにしても、心を強く持って、いっぱい愛情を注いであげて、幸せな犬生を送らせてあげたいと思います。


 ちなみに、人間界では、ケネディ大統領がアジソン病であったと言われています。

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