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パソ・ロブレスへ小旅行


 元旦生まれの娘が、アメリカの飲酒年齢、21歳になったので、パソ・ロブレスのワイナリーに女子二人で行って来ました。パソ・ロブレスは、ロサンゼルスから北に400キロ、車で3時間半ほど走ったところにあるワイン産地です。


 娘も私も古いものが好きで、旅先でアンティーク屋さんがあると、必ず立ち寄ります。都会にある洗練されたアンティークショップは、お洒落にディスプレイすることで付加価値をつけて売っているものが多いのに比べ、地方の店は掘り出し物が多いのです。



 アンティークとは、厳密に言うと100年以上前のもの、それより後のものになるとヴィンテージと呼ぶらしいですが、私はそこには全くこだわりません。ランダムに積み上げられた玉石混合の古道具を見ていると、様々な時代にタイムトリップしているようで楽しいです。「これはこういう理由で価値がありますよ」と説明してくれる博物館よりも、あれやこれやと想像力をめぐらす楽しさがあります。


 アンティークショップには、一般人の古いポートレート写真やグループ写真なども売られているのですが、年代と服装と背景などからあれこれ想像を巡らすのも楽しいです。大恐慌時代なのに、ドレスで優雅にピクニックなどしているのは富裕層だったんだろうなぁとか……。古雑誌もまた興味深いです。真っ赤な水着姿の金髪女性が表紙を飾っている1944年の雑誌を見て、日本の市井の人々がその頃どんな生活を送っていたかを想像して、胸が傷んだり……。



 ティーカップなど集めていた若い頃に比べて今はあまり物を増やせなくなったので、買うことはあまりないのですが、向こうから心に訴えてくるような物との出会いがあったら、迷わず買います。パソ・ロブレスでは、使い込まれた感じのレンガ型があり、購入しました。黒光りした木や鉄の古び方にグッときました。

 

 多くのアンティークショップは委託販売で、2畳ほどに分けられた小さなセクションは、それぞれのオーナーの個性が反映されています。馬具やコカコーラグッズに特化していたり、どさくさに紛れてオカンアートを売ってたり。2年前に訪れたニューオーリンズのアンティークショップでは、売春が合法だった時代の売春許可証が売られていたりと、教科書では見られないようななかなかショッキングなアイテムに出くわすこともありました。


 覗いた途端に、「あぁここはもしや……」と嫌なオーラを感じる一角があります。星条旗やミリタリー関係のものなど、パトリオティック、つまり愛国的なものが異常に多いセクションです。人種差別的なアイテムが紛れていることが、たまにあるのです。パソ・ロブレスは、カリフォルニアの中でも保守派層の多い地域なので、あるだろうなぁと思っていたら、やはりありました。




 ちびくろサンボやパンケーキのジェマイマおばさんなどの廃止により、キャラクター化された黒人像が差別的であるという認識はもはや説明不要の常識となっているにもかかわらず、『アンティーク』という枠だから許されるのか、堂々と陳列されていました。


 
 もはや人間なのかも分からないぐらいデフォルメされた明らかな悪意を感じるものはもとより、一見毒気がなさそうに見えるものにも、引っかかるものがあります。裸だったり、奴隷を連想させる格好だったりするからです。


 これにどのような価値を見出すかは自由です。個人的には、こういったアイテムをこの世から抹消すべきだとは思いません。そのような歴史があったことから目を背けるべきではないからです。きちんと負の遺産を学ぶ教材として、正しい用いられ方がされれば良いと思います。


 パソ・ロブレスから連れ帰ったレンガ型には、帰り道に寄ったモロ・ベイにあるインテリアの店、The Garden Gallery から連れ帰った多肉植物を収納しています。




 

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