見出し画像

コント『銭湯』 【ショートショート】【#138】

A「ちょっと聞いてや」
B「なんや? かーちゃんが家出でもしたんか?」
A「ちゃうわ。だいたいうちのかーちゃんの家出なんてなんも珍しくないわ。オヤジとケンカするたび毎回や」
B「そうなんか」
A「そんなしょーもないことやなくてな。この前俺な、初めて銭湯に行ったんや」
B「お前、銭湯初めてなん? 裕福な家庭なんやなぁ」
A「裕福かどうかは知らんけど、まぁ初めてやったからな。これが色々ビックリしたんよ」
B「銭湯でそないビックリすることなんてあるか?」
A「だってな。まず行ったらこれがすごい長蛇の列でな……」
B「おー、人気の銭湯なんやな」
A「幸い一番前にツレ(友達)がおったから入れてもらったんよ」
B「ん? あれか? 銭湯だけに先頭がいいってか?」
A「……お前、何言ってんの?」
B「すまん。思わずチャチャ入れたくなってしまって」
A「でな、せっかくド頭で入ったのに中入ったら、えらい太ったおっさんたちがドワーっておってな。これがまーどいつもこいつもセイウチにそっくりなんよ」
B「あーなるほどなるほど。わかったで。さては1000人くらいおったんやろ? ほらセイウチやし、銭湯だけに1000頭みたいな……」
A「……いやだからお前さっきからなんなの?」
B「あれ? それもちゃうの?」
A「違うもなにも、1000人も居るわけないやろ。銭湯やで」
B「ま、そりゃそうか」
A「そんでな、その太ったおっさんたちは最初は流れる浴槽とかで大人しく遊んでたんやけど、途中でなんか詰まってまったみたいでモメ出しよんねん……」
B「おっ! 俺、今度こそわかったわ。これ正解やわ。太ったおっさんたちは始めてまったんやろ? ――戦闘を!」
A「……はぁ?」
B「え、ちゃうの?」
A「ちゃうわ! 相撲や。太ったおっさんがモメた時にとんのは相撲に決まっとるやろ」
B「いや決まってへんとは思うけど……」
A「ええねんええねん。……で、おっさんたち、やっと落ちついたー思ったら今度はスライディング浴槽には夢中になったらしくてな」
B「いやちょっと待てや。スライディング浴槽? なんやそれ」
A「あるやろ? そういうスイーーってすべって入浴できる風呂が」
B「いや普通ないと思うで……」
A「そこはあるんやって。そんでな、次から次へと滑ってるうちに、これがまた詰まってしまってなー」
B「よう詰まるおっさんたちやな」
A「詰まったところにドンドン後ろからくるからな、下手したら100人くらいそこに詰まってしまって……。ついには壊れて崩れ落ちてしまったんや」
B「ははーん……聞いてや。今度は真っ当な意見やで。これは否定でけへんわ。そこの耐荷重は、――1000トンやったっちゅうオチやろ? 銭湯だけに!」
A「お前アホやろ。100キロそこそこのおっさんが100人おっても、ようやっと10トンがせいぜいやわ。小学生からやり直せや」
B「――や、あの……そらそうなんやけど……、そうやなくてほら銭湯やし……」
A「だからなんやねん?」
B「いや、その……なんでもありません」
A「ようわからんこと言いよってからに……。ま、わかればええねんけど。でもな。俺、そうこうしてるうちにわかってしまったんや」
B「はぁ……何がわかったんや?」
A「そこな、銭湯やと思ってたんやけど、多分プールやわ」
B「せやろな。俺もそう思っとったわ」
A「おー気が合うなぁ」
B「やっとな!」



#ショートショート #銭湯 #会話劇 #二度と関西弁で書こうなんてしませんから #関西弁むずすぎ #方言にかんするツッコミはお手柔らかに

「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)