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不動産業界の常識を刷新し、事業課題を解決するためにDXを強化 —日鉄興和不動産さまの場合

これまでなかった視点から、新たな不動産サービスの創出に挑戦している日鉄興和不動産さま。アジケも事業開発のパートナーとして、いくつかのプロジェクトに参画してきました。今回はイノベーションDX推進室の和田浩明さんと、アジケ代表の梅本周作が対談を行いました。本質的なDXとは何か。不動産業界におけるこれからのUXデザインとは——さまざまなテーマを掘り下げていきます。

(※記事内の情報は2021年11月時点のものです)


事業課題を解消するため、DXの取り組みを強化

梅本:本題に入る前に、和田さんの所属部署である「イノベーションDX推進室」について概要を教えていただけますか。

写真左から日鉄興和不動産株式会社企画本部イノベーション・DX 推進室兼広報室 和田浩明さん、株式会社アジケ代表取締役 梅本周作


和田さん:イノベーションDX推進室は、企画本部内で2021年4月に立ち上がりました。現在注力しているのは、組織横断でのDXの推進サポートと、それに関連するスタートアップへの新規投資です。

今後5年間、弊社にとってDXが非常に重要なキーワードとなっています。これから私たちが事業開発に取り組んでいくにあたり、必ず視点として必要となるのがDXであることは間違いありません。

そのため「そもそもDXとは何か」であったり、各事業にとってのDXのあり方を明確にするなど、組織内で横串をさして実践していくための取り組みを行っています。


梅本:事業的な課題を解消するためにDXが必要となる、ということですね?


和田さん:そうです。DXは目的ではなく、ユーザーのペインと徹底的に向き合い続けた結果、直面する事業課題を解消するための手段だと考えています。

梅本:おっしゃるとおり、手段ですよね。
私はDXは包括的な概念になるので、点で捉えてはその本質が見えないと考えています。
DXの目的はデジタル化ではなく、会社の業務をデジタルに変革することで、企業として競争優位を生み出していくことだと捉えています。


他領域のプロフェッショナルと協業し、成果を生み出していく

梅本:御社は2021年夏にも、ITコンサルティング・システム開発会社に出資し、業務提携契約を発表されていましたね。(※1)

※1:「ワンストップ型DXコンサルティング・IT開発スタジオ~ アルサーガパートナーズ株式会社への 出資及び業務提携契約の締結について」(2021年7月1日)


和田さん:はい。アルサーガパートナーズさんは、当社のDXパートナーという位置付けでご出資させていただきました。専門的な技術と知見をもつ社外CTO的な存在のチームが必要だったんです。


梅本:パートナー企業との提携に加え、インハウスのエンジニアやデザイナーの採用を検討されたことはありますか?

和田さん:現時点ではまだありません。私たちデベロッパーは普段の仕事の特性上、プロジェクト全体をコントロールすることが得意です。だから開発やデザイン領域をはじめとするプロフェッショナルの方に集まっていただき、パートナーとして気持ちよく仕事をして成果を出してもらう仕事のやりかたが、一つの最適解だと考えています。

梅本:他社とのパートナーシップ構築という観点からみたとき、新規サービスデザインや、DX関連のプロジェクトのパートナーとしてアジケにお声がけいただいたのはどんな期待からだったのでしょうか。当社の支援内容はUXデザインが軸になっているとはいえ、社内の方に対して「何に対する投資か」を言語化して説明するのが難しかったのではないかと思います。


和田さん:確かに「デザイナー」に対する社内の理解はまちまちですし、「UX」という言葉になじみがない人もまだまだ多いかもしれません。

ただそこはもうシンプルに、「自分たちだけで考えるより良いアウトプットが生まれる」ことに尽きます。自分たちが思い描いたことの実現や、課題の解決に向かってきちんと前進できることが、アジケさんとご一緒する理由の一つですね。

それに加え、第三者としてプロジェクトを進める役割、ファシリテーションを担ってもらえることも大きいと考えています。社内のメンバーだけだと、どんなに意識しても役職や年齢に影響されてしまいがちなんですよね。そこにアジケさんが入り、中立的な立場で全体を見渡しながら進行してもらうと、ものごとが公平に整理されていく感覚がありました。


梅本:ありがとうございます。
デザイン会社の価値をつきつめると、私は2つになると考えています。
ひとつはお客様自身で見つけられなかった課題や解決案を提示できること。もうひとつは、お客様がやりたいことをイメージや形にできること。

世間では、後者のほうがデザイン会社のイメージかと思いますが、いまの時代はお客様自身も解くべき事業課題がわからないのが実情でしょう。だから、課題を抽出するためのファシリテーションも大事だし、課題とプロジェクトへ参画するメンバーの納得性も重要です。

この2つがプロジェクト成否をわける重要な要因なので、私どもが大事にしていることをまさに言語化していただいたかと思います。



不動産業界におけるUXデザインの今

梅本:和田さんご自身は不動産業界におけるUXデザインについて、どのように捉えていらっしゃいますか? 


和田:不動産の世界のUXは難しいんですよね。例えば住宅分譲事業で考えると、大半の人にとって不動産購入の機会は、人生に1〜2回しか訪れないじゃないですか。しかも不動産の価値って、「どこで買うか」よりも最終的には立地になるんですよね。人に「どこに住んでいますか?」と聞いたとき、最初に出てくるのはマンション名ではなく、地名ですから。

だから不動産を買っていただくとき、お客さんが独自の業界慣習にぶつかって面倒臭さや不満を感じたとしても、選択肢が豊富にあるわけでもなく、その1回だけ耐えてもらえればOKとされてしまう。だから現状、UXを放置していてもそれなりに利益が上がる構造になっているんです。

ただ私たちは、その価値観を変えていかなければいけないと考えています。流動性を高めて、今まで人生で1回しか不動産を買っていなかった人の購買サイクルが生まれないと、これから先、人口が減っていく日本社会の中で勝ち残っていけないので。


梅本:なるほど、とてもおもしろい事業の捉え方だと思います。不動産は資産性が高いにもかかわらず、個人の取得機会は人生で1-2回に絞られてしまっている。その大きな要因がこれまでの不動産業界の商習慣や、手続きの面倒くささなどにあるのなら、おっしゃるとおり、顧客体験を改善することによって可能性が広がりそうです。

「流動性を上げる」とは、不動産をポータブルな状態にしていく、つまり売買するための一連の取引をサービスによって手軽にしていくイメージでしょうか。お客さまにとって不動産の売買がより簡単になり、資産を持つ際に手軽に選べるようになると、新しい価値観の創出につながると思います。



今後のUX戦略について

梅本:現状、アジケがお手伝いしているのは「住んだ後の体験」を高めるための取り組みですが、他の顧客体験についてはどう考えていますか?

和田さん:まずユーザーとの接点ができないとはじまらないので、その突破口をどう作っていくかを考える必要はあります。大事なのはもちろんユーザー視点ですが、趣味嗜好などもふくめていくつも切り口があり、10人中10人にヒットする答えは存在しません。その切り口の中から、多少の偏りがあるとしても、少なくても自分が信じている部分に切り込んでいければいいかなと思っているんです。


梅本:偏りがある、というのはどういうことですか?


和田さん:例えば僕は、あらゆることがデジタルでスムーズに進められないと嫌なんです。その話を持ち出すと「そうじゃない人もたくさんいるよ」と言われるのですが、少なくとも自分自身がそうなので、同じ思考の人もきっといるはずだと信じ続ける。

それを体現したサービスの一つがマンションのオンラインストア「sumune(スムネ)」なのですが、従来の不動産業界では想定されていなかった、こうした入り口が突破口になって新たに物件が売れたりするわけです。


梅本:なるほど。想定されていなかった切り口から、一つの仮説が成立したわけですね。

「人生で1回しか買われないもの」「対面で販売(購入)するもの」などという固定観念を疑って壊していくプロセスの中で、ユーザーに向き合うアプローチが生まれ、UXデザインが必要とされていく。面白いですね。

和田さん:とはいえ何が入り口になり得るのかという問いは、私たちにとって永遠のテーマなんです。例えば単に「初期費用をなくします」といえば多くの人が不動産を買うかというときっとそうではないし、単にニーズを満たすことだけでなく、マーケティングのやり方まで考えなければいけない。ただ、一度そこを見つけられれば事業が大きく変わっていくのではないかと思っています。


その他日鉄興和不動産さまとの取り組みについて

 

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