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2022年真夏の大冒険⑯与那国島2日目 西崎ダイビングの話

今日からはダイビング中心の毎日になる。1日3本、それぞれ1~3時間の休憩を挟む。
今となっては島の大半を巡ってしまい、あらためて観光する場所もなくなってしまって、休憩時間は、寝るか漫画を読むかPCをいじってるかのインドアな怠惰な時間を過ごしているけど、まだ物珍しさがいっぱいあった頃はレンタルバイクを借りっぱなしで島のあちこちを走り回っていた。ダイビングの合間が1時間しか無くても、すぐにかっ飛ばして出かけたものだ。元気いっぱいだった頃が懐かしい。

宿に泊まっているダイバーは朝起きるとほとんど全員が同じ行動をする。道の真ん中に仁王立ちになって西崎の海を眺めて海況を想像するのだ。

夏の黒潮は笑えないくらい暴力的に流れることもある。
エントリーしたポイントから流れに乗ってドリフトするのだけど、浮上するポイントのラインはだいたい決まっている。そのラインを超えると波が高い外洋に出てしまいボートに乗り移るのが超困難になる。
だから流れの速さによってエントリーポイントを潮上にずらして移動距離を稼ぐしかない。そうでもしなきゃダイビング時間10分「今のダイビングなんだったんだ?」で終了なんてことになる。
与那国に来てるダイバーのほとんどは「西崎」海域に潜るのが第一希望なので、潮が速すぎて西崎に入れないとなると潮の流れが弱いポイントを探すしかなくなる。
遭難しないギリギリのラインで安全にダイバーを満足させるポイントを選ぶ。それがガイドの腕の見せどころ悩みどころなので、朝はそれぞれの思惑を胸に海を眺める。
今朝の西崎も潮目くっきり、三角波が暴れている。今日も流れは強そうだ。
ガイドもゲストも道の真ん中に仁王立ちしている姿は、潜らない人が見たら滑稽な風景なのかも知れない。

与那国の海で有名なのは「海底遺跡」だけど、リピーターでリクエストする人はごく少ない。皆一度は潜ったことがあるし、何回潜ってもいつも同じ光景(変わらないこそ遺跡なんだけど)、それよりも潜るたびに違った海になる西崎を好むことになる。

海底遺跡(2011年)
海底遺跡(2009年)

サファリパークでは、ライオンが見たければライオンのエリア、キリンが見たければキリンのエリアに行けば100%の確率で見ることができる。
ダイビングも同じようなものでカクレクマノミが見たければこのポイント、ハナヒゲウツボが見たければこのポイントと、特定の生物が100%居着いてところもある。でも西崎はパークではないサファリ、ただの深い海域なので潜れば必ず◯◯が見れると言う確証は一切ない。
夏はイソマグロ、バラクーダ、ギンガメアジ、ロウニンアジが、冬はハンマーヘッドシャークが「高確率で見れることがある」というだけで、魚一匹見ないでダイビング終了なんてことも普通にある。

冬の名物みんな大好き ハンマーヘッドシャーク(2017年)

そんな博打のような西崎なんだけど、ガイドに「どこに行きたい?」と聞かれれば、「そりゃー、西崎しかないっしょ」と迷わず即答する。
「高確率で見れることがある」もの以上に、「稀に偶然出会ってしまう」レアな遭遇への期待は大きく、潜って流されてる最中にも「なーんかいないかな」とキョロキョロしながら全方位にアンテナを広げているから緊張と集中がずっと続く。

今回の夏与那国もバラクーダやGTは楽に見れるはずくらいの気持ちで潜っていたし、終始探していたのは野良ジンベイや野良マンボウ、野良クジラや野良シャチ、野良カジキ、野良ブルーシャーク、季節外れのハンマーヘッドだった。
過去には現れた記録もあるし、マンボウやカジキ、海底から湧き上がってきた数百のロウニンアジの大群、ぐるぐる渦巻いて柱を作ってるバラクーダの大群、真夏のハンマーヘッドは見たことがある。だから可能性は0ではない。
そんなミラクルな遭遇を願いながら潜っていた。

野良マンボウ(2015年)

与那国のダイビング時間はだいたい30分前後である。緊張と集中が持続できるのも同じくらいで、この濃い30分に慣れてしまうと他の島でのダイビングに弊害が起きる。
飽きてしまうのだ。

前に与那国と石垣を続けて潜ったことがあった。
石垣島のとあるポイント、水深は10m程度だから明るくてキンギョハナダイがすごく綺麗だった。けど、30分を過ぎるといつ終わるんだろう、早く上がりたい気持ちが大きくなってくる。
ガイドが「浮上するよー」のサインをいつ出すのかチラチラ見てるんだけどいっこうにその気配はない。浅くて動かないからエアも減らない。40分過ぎたあたりでガイドが石めくりを始めた。キンチャクガニでも探してるんだろうけど、もうダメ。ガイドに寄っていって「エアが切れそうだから先に上がるよ」とゼスチャーをしてエキジットする羽目になった。
与那国でしか潜れない30分ダイバーの誕生だった。

途中で飽きた石垣島 2006年

与那国でしか潜れなくなったのにはもう一つ理由がある。
ポイントが近いから、1本毎に戻ってきてシャワーで潮を流したら風呂に入って乾いた服に着替えられることだ。これで那覇からの日帰り慶良間は我慢できなくなった。ずっとウエットスーツを着てるなんて、今ならきっと地獄だ。
1本毎に戻ってシャワーは前からしてたけど、大浴場を作って風呂に入れるようになってからは気分の良さは段違い。風呂の力はシャワーとは桁違いだ。
2本目と3本目に生乾きのウエットスーツを着るのに手こずるのだけがマイナスかな。

そう言えば以前、外の喫煙所で一緒になった旅行者おじぃが「最西端の宿と最西端の大浴場に期待してきたけど、あの程度の風呂じゃねー」と愚痴ってこられて「まあ、あくまでもダイバーに都合のいい風呂ですからね」としか答えられなかったっけ。温泉ホテルの展望大浴場みたいのを期待してくる人もいるんだと驚いたこともあった。

今日のダイビング1本目は「北東の根」
-23mの根のトップをかすめるグルクンは何度見てもきれいだ。-43mのボトムではアケボノハゼに集まるダイバーから離れて(寄っていったところで老眼でロクに見えない)砂地のアカエイとアキアナゴを這いつくばってガン見していた。

北東の根
根のトップ グルクン

2本目3本目はエントリーポイントを変えて「西崎」
バラクーダとロウニンアジ。ダイブタイムは28分と27分。
ビューンと流れてスパッと終わった。

バラクーダ
ペアリング中のロウニンアジ

その後は夕飯前から知人と呑み。知人持参の高級ワインから始まって、夕陽を見ながら生ビール、食事の後からは泡盛。この流れはたぶん当分続くと思われる。
与那国2日目も平和に終了。

今日の日没


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