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2022年真夏の大冒険⑩日帰りヤンバル 安須森御嶽

15年ほど前に国頭村奥集落の民宿に連泊してヤンバルを集中的に攻めたことがあった。その時はけっこう隅々まで見て回ったのだが今回は那覇からの日帰り、もう一度見てみたい景色だけをピンポイントに攻めることにした。
西原ICから許田ICは旅のポリシーからは外れるけれど高速道路、許田からはR329で大浦湾に出てR331で東村、県道70で東海岸を北上し、奥からは辺戸を経由してR58を南下するヤンバル反時計回りルート。

日帰りヤンバルの走行ルート

もう一度見てみたい絶景の一つが国頭村の「タナガーグムイ」なのだが、調べたら事故多発のせいで立ち入り禁止になってしまったようだ。
ここは山の中の駐車場に車を止めて赤土の崖をロープ伝いに降りていくと清流が滝を形成して流れ込む大きな池がある。四方は崖と深い森に囲まれていて、隔離されたロストワールド感たっぷりな場所でガイドブックにもほとんど載っていないので観光客もごく数人くらいしかいない㊙スポットだったのだが残念だ。
前回訪れたのは真冬だったのだが米兵と思しきヤンキーが元気に池に飛び込んだりしていた。そんなことをしてるから崖から滑り落ちるだけではなく水難事故も多発したんだろうけど、立ち入り禁止措置は環境保護の点からは歓迎すべきなのかも知れない。

こんな崖を登り降りしなきゃ着けない(2008年)
タナガーグムイ(2008年)
事故が多いみたい(2008年)

となると、もう一つのもう一度見てみたい絶景ポイント辺戸岬近くの「安須森御嶽-あすむぃうたき-」に向けてまっしぐら寄り道もせずノンストップで走り続けた。

琉球神話では神が降り立った場所で、沖縄の島々を創る時に一番初めに造った聖地であり沖縄各地に点在する聖地の中でも最高位に属する聖地だという。
だから観光の場ではなく信仰の場なのだが、無信心で不埒な内地観光客の目で見ればヤンバル一どころか本島一の絶景ポイントなのだ。

隆起サンゴの山全体が聖地なので、そこかしこに小さな祠がある。いやがうえにも凛とした静粛な気持ちになって歩きづらい岩山をロープを頼りに30分ほど登ると最後の難関、ほぼ直角の絶壁が現れる。鎖を頼りに登り切ると尾根道に出て、汗まみれの体を清めてくれるような風に洗われる。尾根を少し登ると小さな祠が設置されている頂上に出る。

神聖な場所なんだよと念を押される
このあたりは登り始め
尾根下の難所
頂上の碑
北側 辺戸岬方面
東海岸 南方面
西海岸 南 本部半島方面
神様の頭上で汗を乾かす不埒者

眼下には細く突き出る辺戸岬、振り返れば深いヤンバルの森が広がり、大きく張り出す本部半島、遠くには海を隔てて与論島や伊是名島、伊平屋島まで見渡せる。苦労して登ってきた分、すぐに降りるのはもったいなく、汗で濡れたTシャツを脱いで干しながら1時間以上もここで風に吹かれていることになる。
ここに来るのは3回目だが、初めての時に頂上の祠で祈っていたおばぁに会って信仰の力に驚いたのだが、前回も今回も誰とも会わず過ごすことができた。

祠の横には「ここは聖地です。頂上は神様の頭頂部にあたります。ゴミは捨てずに持ち帰りましょう。」のような看板が立っている。
神様の額に汗まみれのTシャツを干し、神様の頭の上で裸になって風に吹かれている俺を神様は許してくれてるのかな?登るたびに思うことだ。
もちろんゴミ(吸い殻と空のペットボトルくらいだけど)は持ち帰るし、自然と「来たときよりも美しく」の気持ちになるんだけど、実際にここではゴミ一つ見たことがない。この景色に身を晒せばみんなが善人になって降りていくんだろうと思う。

斜め下に目を向けると岩山を整備して作られた有料のテーマパーク「大石林山」が見える。行ったことはないけど、きっとここの方が数万倍素晴らしい風景だと思う。

山を降りるのは登りよりも注意が必要だ。グラグラ不安定な足元、ロープに注意してないと正規の道から外れるし、歩きやすいところばかり選んで降りても迷子になる。
無事降りきって車まで戻った時には、充実感と共に達成感も感じてしまうのだ。
これで今日のヤンバルでの最重要ミッションは終了した。
後はあちこち寄り道しながら那覇に戻るだけだ。

最初の寄り道はR58を少し戻って奥集落へ。
15年前にお世話になった民宿、海山木は変わらず営業してるようだ。まだ夜が明けきらぬ薄暗い朝、深夜まで呑み続けた酒で熟睡している宿泊客全室のドアを叩いて「港にミジュンの群れが入ってきたから獲りに行くよー」と叩き起こされたっけ。「コッコッコッ」と森に響く音がヤンバルクイナの鳴き声だと教えてくれたっけ。懐かしいエピソードをいっぱい思い出す。
あの陽気な酔いどれオヤジに再会したいけど、先を急ぐので奥漁港の穏やかな海の前でタバコを一本吸ってUターン。

次の寄り道は辺戸の共同商店。国頭村産の泡盛「マルタ」を買うこと。
たぶん道の駅や那覇でも買えそうだけど蔵元に近い現地で買ったほうが旨そうな気がする。マルタのピリッと尖った呑み口もクセになる。
昨夜で赤霧島は呑み尽くした。今晩からメインの酒は泡盛になる。

国頭村の泡盛 マルタ

辺戸岬はスルーして急坂を登ってヤンバルクイナ展望台。妙にリアルな足元が忘れられないのだ。
茅打ちバンタにもちょっと立ち寄って断崖の海を覗き込む。

ヤンバルクイナ展望台
やけにリアルな足元
茅打ちバンタ
いつも吹き上げる風が強くて茅を投げても落ちないで戻ってきてしまうらしい。

最北の辺戸エリアを後にしてR58を昼飯どころを探しながら南下する。
安易に道の駅という手もあるが、それじゃ芸が無い。
オクマビーチの入り口を通過して500mくらい走った道沿いに「国頭港食堂」という小ぎれいな店を発見、入口の看板が気にいったので入ってみた。

メニューを見るとちょっとお高い感じはしたけど、食べてる人のテーブルを見るとけっこうなボリューム、これで美味けりゃ問題はない。いつもよりちょっと奮発して「刺身三点盛と地魚のフライセット」1300円をオーダーした。

料理が運ばれてくる間にいろいろ書かれてる宣伝文を読むと、調理担当者は全員が海人経験者。水揚げされてすぐが美味しい魚、熟成させた方が美味しくなる魚など、その魚が一番美味しくなる食べ方で提供しているので、仕入れ状況によってメニューの内容も少しずつ変わるらしい。これは期待できそうかも。
結果は大当たり。味・量ともに大満足。ヤンバルにはなかなか来れないと思うけど、もう一度行きたい店が増えてしまった。

おしゃれな看板
刺身三点盛と地魚のフライセット

西海岸の海沿いを走るR58は走ってるだけで絶景で、欲を言えば日没シーンも見てみたいけど、残念なことに時間がない。
有名所の古宇利大橋はスルーするとしても、10年前に感動した羽地内海の夕日シーンは見てみたい。パイナップル畑の真ん中の集荷場の屋上の嵐山展望台...うーん、やっぱり時間的にキツイ。

嵐山展望台からの羽地内海(2008年)

出発前のミッションはクリアできたけど日帰りヤンバルは悔いが残るなー。次回があるとしたら中部の勝連城、玉城、中城、知念城などに回ってからヤンバル2泊くらいはしないと満足は無いのかも。全部一回は行ってるとこだけど10年以上経た目で見ると違った感想が沸いてくる気がする。

そう言えば15年前のヤンバルで「流弾に注意!米軍実弾射撃訓練中」の看板を運転中に見つけて「どう注意すればいいんだよ」とひとりツッコミをしたことがあった。
まだあるのか確認したかったけど、どこにあったのかも忘れている。保存してある写真の流れから推測するとヤンバル横断道路のダムの近くだったみたいだけど、今回は内陸部にぜんぜん入れなかったのも悔いの一つだ。

・・・って言われても(2008年)

結局は許田から高速に乗って伊芸SA でトイレとアイスクリーム休憩をして西原ICまで寄り道なしで来てしまった。
西原からは名物の那覇渋滞に巻き込まれてちょっと焦ったけれど、17時40分にレンタカーを無事返却。

なかなか充実した1日だった。明日はまたノープランな日だけど、マルタを呑みながら明日のことは考えよう。那覇連泊3日め終了。


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