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2022年真夏の大冒険⑭石垣島白保 民宿マエザトで思い出にふける

白保浜から戻ってきて民宿に上がる前に1Fの食堂で昼食。
マエザト食堂はごく普通の大衆食堂、食べログの口コミでは八重山そばも評判になっているみたいだが、じつは普通の定食がかなり旨い。
野菜炒め定食を食べる。ここは空港から市街地へ向かう道路際なので観光途中の人や地元の働くおじさんなどで昼時はいつも賑わっている。八重山そばも食べてみたいんだけど白保海岸を見てきた後に八重山そばを注文ってのがイカニモな感じで恥ずかしいのだ。

腹を満たした後は隣のマエザト商店(隣と言っても中で繋がっている)で買い物。マエザト商店は何でも売っている。刺身、酒、タバコ、お菓子、アイス、弁当、電池や線香まで白保のスーパーマーケットだ。出口には会計のおばぁ。それにしても元気そうだ。おばぁはいくつになったんだろう?20年前と殆ど変わっていない。
白百合1本と発泡酒を半ダース、刺身を買って2Fの民宿に上る。

驚いた、民宿にWiFiが入っている。パスワードを聞きに下に降りて「すごいじゃない」と言うと「そーなのよ。お客さんの要望が強くってねー」とのこと。
ベランダのテーブルにノートPCと刺身を並べて昼酒開始。
空を見上げると青一色の空。雲ひとつどころか人工物が何も入らない全面真っ青な空は逆に現実味がなくてブルースクリーンの作り物のようだ。
ブダイだと思うけど刺身が猛烈に旨い。もう1パック追加購入。

八重山晴れな空
昼呑みセッティング完了
ブダイってこんなに美味かったけ?

そういえば昼下がりの民宿ってこんな感じだったけと懐かしむ。
夜に仲良く騒いでいたゲストも帰る人や観光に出かける人がみんな出て行ってヘルパーのネーネーも昼休憩。一瞬静かになるエアポケットのような空間だ。
もう少し時間が経つとヘルパーが今日来るゲスト用のシーツを持ってバタバタし始め、スノーケルツアーを終えた人たちがシャワーに急ぎ、新しいゲストが顔を出し、連泊中のゲストも三々五々帰ってきてにぎやかになる。

前にも似たような日があったっけ。
誰もいない民宿で一人昼呑みをしていると、今夜泊まるという若者がやって来て「八重山を巡ってるんすよ。TVつけてもいいですか?」と言って持参したビデオを再生し始めた。なんとDr.コトー。「コトーは与那国でしょ」「そうなんすけど予習っすよ」と言ってコトーに没頭。
背後から隠し撮った写真が残っていた。あの若者は今何をしてるんだろう?
でも今日はひとりぼっちか、ちょっとだけ寂しい感じだ。

コトーに夢中(2004年)

気がつけば発泡酒5缶を呑み干して残るは1缶だけ。
シャワーを浴びて、ついでに着ていたTシャツとパンツとタオルを手洗い。さすがに裸族ではいられないので洗濯済みに着替えて、夕陽に染まりだしたベランダに干す。
ひらひら揺れるパンツを見ながら昼の部〆の1缶。かなりいい気持ちになってきたので部屋に入って昼寝。窓を全開にしただけだったのでかなり暑い。締め切ってエアコン全開でちょっとだけ眠った。

軽く眠って起きたら薄暗くなりかけていた。ヤバッ、食堂が閉まる前に食べておかなきゃ。空腹感はないけど素泊まりだから食べておこうと食堂に降りた。
今まで食べたことがなかったそばを食べよう。でも八重山で八重山そばを注文するのは、なんとなく気恥ずかしい。海人Tシャツで石垣を闊歩してる感じかな。
野菜そばにした。
旨い。そして思ってた以上のボリューム。これは大当たり。
夜食用のじゅーしーおにぎり2個と一緒に民宿に戻った。

マエザト食堂の野菜そば

インスタントコーヒーを呑みながらテレビをザッピング。
本島本部のゴリラチョップでダイビング中のゲストが亡くなったそうだ。
あんなところで事故るかねーと思ったけど、亡くなった方は前々から予約していた団体ツアーの一員で、朝から「今日はちょっと気分が優れない」と言っていたそうだ。
先々まで予定を決めてしまうと、たとえ体調が悪かろうとイベントを消化することが第一の目標になってしまう。直前のキャンセルだとキャンセル料も発生するプレッシャーもあったのかも知れない。金銭的にはちょっと高くなるかも知れないけど、「体調もいいし、ちょっと潜ってみようかな」みたいなダイビングショップへ直前飛び込みスタイルの方が安全性は高い。
でも、年齢の壁でそれができなくなったのは悲しいことだ。

ダイビングと言えば、始める切っ掛けになったのがこのマエザトでのゆんたくだった。
「今日撮ってきたVTR見てもいいですか?」と言ってゲストがTVで再生を始めた。でっかいマンタがふわふわ浮遊する様を見せられた。
ダイビングになんの興味も持ってなかった私、「え、これ今日のことなの?」「そうですよ。川平です。体験ダイビングでも見れるんじゃないかな?」その場でショップに電話して翌日の体験ダイビングを予約した。

そして翌日、海を目を前にして体験ではマンタポイントには連れていけないことを言われた。かなり落胆したけどダイビングを一度経験するのも悪くないくらいの気持ちでガイドとマンツーマンでエントリー。正直言って「ふーん、こんなもんか」くらいの印象だったけど、「耳抜きはぜんぜん問題ありませんね。2本目はみんなと一緒にマンタを見に行きましょう」
いやー、凄かった。頭の真上を四畳半が通過して行く。こりゃあ、たまらんわ。

川平マンタスクランブル

ダイバーになることを決め、次に来たときの講習を依頼したら「石垣島は高いから講習は那覇で受けてカードを持って石垣に遊びに来た方がいいよ」と商売っ気のない答えだった。
その教えの通りその後、那覇の激安ショップで講習を受けてダイバーになり、やがては与那国でのドリフトダイビングにハマっていくとは、なにがきっかけでどう転んでいくのか人生は面白い。
あの夜のゆんたくがなかったらダイビングには出会わない人生だったかも知れない。

白百合で民宿ひとり呑み夜の部開演。
数多い泡盛の中で石垣島産の白百合はクセの強さではナンバーワンだと思う。一般的な評価としては「土の匂いがする泡盛」と言われているが、土の匂いってのがどんな匂いなのかがわからないので、なんとも言えない。自分的には「他の泡盛とは違う変な泡盛」としか言えない。
飲みやすい泡盛からはいちばん離れているかも知れないし、美味いと思ったことも一度もない。我慢しながら呑んでいる感じなのだが、ハマる人にはピタッとハマる泡盛で、千鳥ノブが「クセが強いんじゃー!」と大声を上げるのがイコール白百合だと思う。
そんなクセが強い白百合も土産で持って帰って家で呑むとぜんぜんハマらない。石垣で呑んでこその泡盛なのだ。こんな不味い酒をグデグデになるまで呑んでしまうのはなぜなんだろう。不思議な酒だ。

土の匂いがすると言われる「白百合」

と、思い出ばかりにふけっていたら、主人のヒデニーが八重泉の一升瓶を抱えて上ってきた。
「やー、久しぶりさー、変わっとらんねー」「いやー、年とったさー」で始まって、ここで知り合った人たちの現在の情報、山ほどの愚痴、古き良き時代だった頃の民宿風景などを語り合った。

コロナ禍での民宿は大変らしい。
コロナ禍前からヘルパー不足は深刻だったけど、泊まりに来る人もスノーケルツアーに参加する人も減り、民宿は素泊まりツアーは休止するしか無いいらしい。
当時小学校低学年だった子どもたちは那覇に住み、はなちゃんとおばぁの3人だけになったと嘆いていた。子供が島を出ていく時は、もう帰って来ないんだろうなと思いとあきらめで送り出したが、実際寂しいもんだよー。

グダグダになって二人ゆんたくは終了。
なんとか意識のあるうちにベッドにたどり着けた。天気も良さそうだし明日の白保の日の出はきれいだろうなー、でも起きられないだろうなー。
今でも時々夢に見る白保浜のドラマチックな日の出を載せておく。こんな景色をもう一度見たいもんだ。
石垣の夜が終わった。

白保浜(2017年)

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