孤独の宇宙に満たされると、人類皆家族に感じるというバグ
世の中には共同体感覚というものがある。いやない。そのルビはない。ガンダムUCでちょっとだけ賞味期限が延びたからってそれはない。まあまあ、知らない人もそんな哀しいことを言わず。ロボットはいいぞ。歴史の遺物をまなざすように。さあさあ、時間観光をガイドされていってね。ながくないよ。ファストトラベルだよ。
【悲報】宇宙、さみしいところだった
そもそもニュータイプというのはざっくり言うと「宇宙でロボットに乗っててソーシャルディスタンスがひろがりすぎた結果、人の顔も姿も見えずさみしすぎるあまり、すご~い遠くから人の気持ちが分かるようになっちゃった人類」のことである。
つまり宇宙メンヘラである。
対するは地球アスペである。
そして愛し合う二人が戦争する。これがガンダムだ。
ニュータイプは思わせぶりな言動が多いとされる。「その傲慢は人を家畜にすることだ! 人間を道具にして! それは人間が人間に一番やってはいけないことなんだ!」とか「修正してやる!」とかそういうことを言いがち。
その傲慢とはどこか? 人間を道具にしたのは誰か? 修正するとはどのように? SVOCの順序を守れよ。おまえ、おれのことすき……なのか? きらい……なのか? と詰めるのは酷な話だ。
だって、そんな、会話の順序と言われましても困りますわ。物語のお約束なのですわ。自分の気持ちさえわかるのがむずかしいというのがドラマチックの源なのですわ。うちゅうなのですわ。
そうだよな。ひとりぼっちはさみしいもんな。
察するにあまりある、察しすぎてキモさがあまる。哀しき戦士。
孤独な宇宙は、宇宙の蟲毒
あまり人をバカにするものではない。メンヘラだってすきでメンヘラしているわけではないし、アスペはすきでアスペをしているわけではない。健常者もすきで健常者をしているわけではない。だって何が健常なのか定義がわからないから(アスペしぐさ)。いやいや、超演算ですきな人格を再現できる天賦の才を持つ例外もいると考えられるじゃないかって?
アスペだからさ(ニュータイプしぐさ)。
宇宙に人類が出ると、さみしすぎて感情的に繊細になる。これは立派な適応だ。逆に地球に人類が密集しているのが見えると、ウザすぎて論理的に厳密になる。寒ければ、暖まらないと死ぬ。熱ければ、冷まさないと死ぬ。ちょうどいい気候では空気的に健常になる。だいたい適者生存である。
泣いた。わたしはメンヘラでアスペで雑な人だァ!
さみしいからァ! さみしくなくなりたいィ!
というわけで宇宙に人類が住むのも、孤独に人類が住むのも似たようなものなので、孤独に適応すると新人類になってもしょうがない。我々に生じた「さみしいィ!」という毒が煮詰まって、仕上がってしまう。1000時間煮込んだカレーはうまい、そういうことである。
わけがわからないよ。いや、わかんないからやるんだよ。
保守的な共同体
ひろすぎる宇宙で孤独を感じないよう、離れた人の気持ちがなぜかわかる。共感可能な射程範囲がありえないほどにひろがる。ここで生きるしかないフィールドに適応し、感覚がひろがるということ。
共同体感覚とはつまり「おれたち仲間でしょ」と思う感覚のことであり、あまりにも仲間がいなさすぎる=孤独であると、社会性動物である人間は孤独を解消すべく共同体感覚を拡張せざるを得ない。さみしさ拡張現実能力。メンヘラAR。それが共同体感覚かもしれない。
ところが実際、この共同体というヤツそのものは、最近ブッ壊されすぎてヤバくね? と思っている人がちょこちょこいるのである。なにせ共同体というものは昔からあるものだから、ほんとうは保守的と言える話なのに。
そして男はカスだの、女はバカだの、子供はぜいたく品だの。ちちはうそつき、はははこわい、こどもはエスパーだの。なんやかんやいがみあって共同体形成したくない圧がだいたいの先進国でかかっているとも言われている。おお、神よ。多様性あふれる地球では、すべては画一性のある、いがみ愛へ収束するというのか!
一方コロナ禍において正義の自由にWOKEした人々はあまりのさみしさに暖かなオフトゥンが恋しくなり、眠くなってきてしまっているという残念なおしらせ。そこへ「寝たらダメだ! 雪山で寝るということはしぬことなんだ!!」と叫ぶ人々もかしましく。なにがどう「ただしい」んだか謎すぎる地球は、今年もお祭り騒ぎでWas-shoiだ。
つまり孤独の宇宙に進出して共同体をブッ壊す! をやってしまったから。つい力が……。あまって。人類は衰退しました。保守的な共同体感覚に覚醒しちゃったのもやむなし。ますます現実と非現実の区別がむずかしくなっている。こんなの、宇宙からわるい電波が来るから……!
ここまでだいたいガンダム。
宇宙はなにもないのに地球に映って、素敵だね
その点わたしってスゲェ安上がりだよな。配偶者も子供もおらんけど、最期までチョコたっぷりだもん。遠くでつながってるだけなのに、おなかいっぱいになってすまんな。みんな……いつも見えないところでなんかしてくれていて……ありがとう……。
妄想と勘違いと非現実への共感覚で頭が満たされていてすまんな。生きていない人間が人間に見えちゃうから人間が生きてなくてもいいかも──なんて、宇宙は不平等だな。普段からバグるあそびをしていたら、ナチュラルにバグるコーディネイトができちゃってたってワケ。
わたしの魔力は万能です。
でも逆に言うと、顔が見える距離に近づいたら通常以上にウザく感じてしまうってこと。だから覚醒していないわたしたちは幸せに嫌われていて、覚醒すると家族より他人が大事なわたしたちになる。そうさ、ここは拡張されたパーソナルスペース。わたしは孤独の宇宙に満たされた。不可侵条約を締結せよ。これじゃ、バグってる以上の何者でもない。真実は残酷だ。あんまりだよ。こんなのってないよ。
Nobody knows. 心を失った人々の、君の知らない物語。
重力の井戸の底で、水平線の彼方に人を見る。上下に映る宇宙のせいでよくわからない。風が寄せた言葉に気を取られ、星のならびに意味を想像する。けれど水平線だからまっすぐ水平のはず。しかし地球は丸いから見下している。けれど地球は自転するので見上げていたりもする。じゃあ宇宙はどっちが上でどっちが下なんだ!? おしえろ地球!!
この人類、メンドクサイ。重ね合わせ状態ってやつだよ。まっすぐに見下して見上げているのは同時に成立するんだよ。あれだよ神の視座ってやつだよ。カッコいいじゃん。地球も笑うしかないね。かわいさのあまり笑うよね。素敵だね。手を取り合って生きれなくてもね。そっか、
人類はわたしの、最高の共同体だったんだね……
われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……