満月

【はじめに】

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Theater Company Aizennyaさんの作品一覧

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月齢コンピレーション

満月

愛楽ゆか

○内田　アキ（うちた　あき）　　　　　　シンガーソングライター

◑千葉　湊（ちば　みなと）　　　　　　　医学部

●結木　心（ゆうき　しん）　　　　　　　幽霊

　　　　　　　　昼間、駅前。
　　　　　　　　歌のセットがされている。
　　　　　　　　アキ、そのセットの前で歌う準備をしている。
　　　　　　　　湊、アキの前に座り、アキをよく見ながら歌を聴いている。
　　　　　　　　心、その近くにいるが、全く注目せずにただ立っている。
　　　　　　　　アキ、お客がいることに気をよくしている。

アキ　　聴いてください。「満員電車」

　　　　　　　　アキ、メロディーがあるのかないのか、話すように、吐き出すように歌っていく。

アキ　　「あー、朝も昼も夜も満員ー。満員電車なんて嫌になっちゃうわー。空いてる時間なんてないー、ないないー。満員じゃない時間に電車に乗ればいいってあなたは笑うけどその時間電車に乗る必要ないのよー。ああーこんなに人がいるのに、ああーみんなどっかへ行っちゃうのに、考えてること同じなのねー。もっともっと時間ずらそうって人増えないかなー。私はずらす気はないからー。勝手なんて言わないでー。みんな勝手に満員電車に乗り込んで、押されて、文句言っているんでしょー？　私だって文句言っちゃう、溜息出ちゃうー。けど満員電車に乗り込むわー。あなたに逢いたい、逢いたいからー」

　　　　　　　　アキ、自信満々に一礼する。
　　　　　　　　湊、パラパラと拍手をする。
　　　　　　　　アキ、拍手にさらに気をよくする。

アキ　　聴いてください。「深夜のコンビニ」

　　　　　　　　アキ、先ほどと同じような調子で歌い始める。

アキ　　「あぁー、深夜のコンビニって不思議ー。コンビニコンビニコンビニコンビニーコンビニ三昧。あぁなんかまた行きたくなっちゃったー。ちょっと割高でもなんか買っちゃうー。私はまぶしいひかりに吸い込まれてー。お財布の中身はレジに吸い込まれるー。あぁ今月始まったばっかりなのにー。不思議な不思議なコンビニコンビニコンビニコンビニー。お弁当はこんなにあったかいのに、チンしてすぐにあったまるのに、お財布はいっつもサムサム寒いー。ついでに私の心も寒いー。ねぇあなたー。そんなに簡単に、そんなにつまらなそうにー。お弁当あっためるくらいならー。私の心をあっためたほうが、きっとおもしいわよー。なんて言う間もなく、お弁当だけあったかいー。コンビニコンビニコンビニコンビニー。今夜もきっとコンビニー」

　　　　　　　　湊、パラパラと拍手をする。
　　　　　　　　アキ、嬉しそうに湊を見つめる。

アキ　　今日はシンガーソングライター、内田アキの歌を聴いてくれてありがとう！
湊　　　あ、はぁ
アキ　　とっても嬉しい！　もしよかったら、リクエストなんかやっちゃおうかなって思ってるんだけど、何かある？
湊　　　リクエスト？
アキ　　そう、リクエスト！　シンガーソングライターたるもの、既存の曲から即興での曲作りまで、幅広くできないとダメでしょ？
湊　　　はぁ
アキ　　あなた