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豆電球のおはなし

豆電球は、私が小説をネットに上げはじめた初期から、私の大切なモチーフであり、テーマだ。理科の実験で使った豆電球を、私はいまでも宝物として保管している。

豆電球は小さな希望に似ていると思う。もちろんそれ一つでは夜道は歩けない。でも、小さなオレンジ色の暖かな光は確かに、暗闇の中ではひとつの星のように、眩く、心強く光るのだ。控えめで無力に見えても、私にとって豆電球は小さな希望であり、同時に優しさの象徴でもある。非力で、それ一つじゃ役に立たないかもしれないけれど、そっと寄り添ってくれる小さな光だ。

私の愛読書のひとつである『いなくなれ、群青』(河野裕 著、新潮社)に、こんな一節がある。

「まっくらやみの中にいるような気分になることがある。豆電球がひとつあれば救われるのに、私はそれを持っていないの。(中略)」

『いなくなれ、群青』河野裕、新潮社 

この表現が、私はこの作品の中でいっとう好きだ。まっくらやみを救う一つの豆電球。

そんな光に、私もなりたいと思う。誰かの悲しい夜、辛い夜、苦しい夜を、小さく照らせる優しい光を届けたい。たとえ小さくても、それで誰かの暗闇を照らせるのなら、それだけで私の作品には意味があったと思えるから。

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