見出し画像

人を騙すのは意外と難しい?

認知バイアスによって判断を間違うなど、人は騙されやすいというのが定説のように思います。 ところが、今回本屋さんで見つけたのは『人は簡単に騙されない』と言うタイトルの本でした。 

この本のベースにある考え方は「だまされやすいと進化上不利なのだから、だまされにくい仕組みを人は持っているはずだ」と言うものです。 このだまされにくい仕組みのことを本の中では「開かれた警戒システム」と呼んでいます。 言葉以外にも資格などの五感を使って様々な情報を取り入れる開かれていながらも、フィルターによって入ってくる情報に常に警戒しているそんなシステムです。

ここではそのフィルターがどのようなものなのか、そして騙されるのはどのような時かについて図解したいと思います。

人に備わる情報フィルター

人が進化によって獲得した情報に対するフィルターは、「情報源」と「自分自身の信念」そして「情報源と自分の関係性」の3つに注目して情報をチェックします。 こうしたフィルターが働くことで人はだまされにくくなるのです。

画像1

・情報源の専門性

1つ目のフィルターは、情報を発信している人がその情報の内容に対して専門性を持っているかを評価します。 つまり「〇〇と言うことを誰が言っているか」を重要視するということです。

この時、専門性はその人の過去の実績を見て判断します。 例えば、過去にその人にパソコンのトラブルを解決してもらったことがあれば、その人が発するパソコンの関係の情報を強く信頼するでしょう。

主張の中身よりも主張する人の属性を見て主張批判する事は、「人身攻撃」と呼ばれる論理的な誤りとして知られます。 ところが、このような人の性質が情報に対するフィルターとして働き騙されることから人を守ることもあります。

・動機は共通しているか

2つ目のフィルターは情報源が聞き手と同じ時を持った上で情報発信しているかを評価します。 そして、同じ動機を持っている情報源からの情報をより信用します。

通信販売で何か商品を買う時、 商品の説明文よりも、口コミを重視して商品を買うかどうか選ぶことが多くあります。 商品の説明文は商品を売る側が書いており商品の購入側とは動機が異なります。一方、口コミを書いている人は、今から購入しようとしている私たちと同じ目線を持っている人です。 このような場合、動機を共有している口コミの方を信頼しやすくなります。

・信念に一致するか

3つ目のフィルターは自分が信じていること、つまり信念に一致した情報であるかを評価します。 そして信念に一致しない情報は信頼しないようになります。

いわゆる「確証バイアス」と呼ばれる現象があります。これは自分にとって都合の良い情報ばかりを集めてしまう傾向を指します。このようなバイアスは別の見方をすると自分の外の情報から守っているフィルターと取ることもできるのですね。

どういう時に騙されやすいか

私たちの心の働きとして、外からの情報に対するフィルターがあることがわかりました。それでも人は騙されることが多いように感じます。では実際どのような時に騙されているのか考えてみましょう。

実は騙されたとしても自分の行動を変えない、つまり、「自分の不利に働かないような時に騙されることが多いのではないか」というのが本書の主張になります。ちょっと雑な言い方をすると、「騙されて損をするような性質は進化の過程で生き残れないはず」ということが根底にあります。

画像2

誤った情報を信じても行動が変わらない例して、「信念が変わらない場合」と「信念が変わったところでそれが行動につながらない場合」の2つが挙げられます。それぞれについて見ていきましょう。

・信念を正当化

私たちは情報に対するフィルターとして、信念に一致するかをチェックするフィルターがあると紹介しました。もしも誤った情報が自分の信念に一致するのであれば、その情報はフィルターを通過することになります。このように自分の信念を正当化するような情報には騙されやすいことになります。

この場合、たとえ誤った情報を信じたとしても、自分の信念が変化しないので、結局、自分の行動も変わらないと言うことになります。

・自分に直結しない

私たちはあらゆる物事に対して何かしらの信念を持っています。当然、信念の中には、それが変化したところで私たちになんら影響を与えないものもあります。そのような信念については上で述べたようなフィルターが働かず、誤った情報を受け入れやすくなると述べられています。この場合も、誤った情報を信じても行動は変わりません。

まとめ

人は進化の過程で情報に対するフィルターを獲得し騙されにくい性質を持っていると考えられます。確証バイアスのような認知バイアスも、このフィルターとしての役割を持っているのは興味深いですね。興味を持たれましたらぜひ本書のほうもご一読下さい。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?