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『羽 : 進化が生みだした自然の奇跡 / ソーア・ハンソン著 ; 黒沢令子訳』のレビュー

概要

 羽は昔から装飾品や矢羽根に用いられ、現代では空気力学にも使われている。羽の起源に対する見解の歴史、装飾用の羽の歴史、羽の機能のメカニズムも。なにより表紙のデザインが素晴らしい。これから羽を見かけるたびに、この本に書かれていることを思い出すだろう。

内容は、

はじめに  7
序章 自然の奇跡  13
進化  23
綿羽  101
飛翔  135
装飾  179
機能  239
終章 自然の驚異に感謝  291
謝辞  301
付録A 羽の図説  306
付録B 羽と保全  316
訳者あとがき  318

 羽は隠蔽機能、目立たせる機能、音を出す機能、色素を使わない発色、貯水、撥水、断熱というふうに、形態や機能の多様性において羽に敵うものはない。

一番好きな部分

 その写真は、角を曲がると正面に見える壁に懸かっていた。縦が一・二メートル、横が一・八メートルほどあり、カメラに向かって真っ直ぐに飛んでくるツノメドリを捉えた鮮やかな写真だった。そのツノメドリもちょうど角を曲がったかのように体をわずかに傾け、翼と鮮やかなオレンジ色をしたピエロのような足を広げていた。ピントがぴったり合っているので、尾羽の黒い羽軸やチャコールグレイの羽弁から、嘴に挟まれた銀色に輝く三匹の小魚から滴る水滴に至るまで、すべてが鮮明に写し出されていた。
 私はその場に数分間立ち止まって、角を曲がった人がその巨大なツノメドリと目が合う様子を見ていた。母娘、若い日本人のカップル、大学生くらいの女性グループが通った。どの人も私と同じような反応を示した。思わず息を呑むと、次にもっとよく見ようと体を乗り出し、目を細めてしげしげと見た。驚きが好奇心を掻き立て、探求が感動を呼ぶ。人はこうして虜になるのだ。

『羽 : 進化が生みだした自然の奇跡 / ソーア・ハンソン著 ; 黒沢令子訳』
終章 自然の驚異に感謝 p.300

 初めてこの描写を見たとき、今まで言語化できず探し求めていたものがここにあったのか!と心を打たれ、以来何十回もこの文章を読み返している。今まで見た文章で一番好きだといってもいい。「驚きが好奇心を掻き立て、探求が感動を呼ぶ。人はこうして虜になるのだ。」と。もう一回見てみよう。「人は/こうして/虜に/なるのだ。」と。

評価

分かりやすさ   9/10
おもしろさ    10/10
手軽さ      7/10
有益さ      8/10
表紙のデザイン  10/10

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