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『平行植物 / レオ・レオーニ著 ; 宮本淳訳』のレビュー

概要

 生物三大奇書の一角として知られる『平行植物』。この本は小説でもないしエッセイ集でもサイエンス・フィクションでもない。それは、幻想そのもの。存在しない植物群を通じて説得力のある、詩的な意味で測ることができる堅固さというものを与えようとした幻想そのもの。

内容は、

[第1章]平行植物とは何か  1
[第2章]起源をめぐって  33
[第3章]形態について  55
[第4章]タダノトッキ科(Tirillus)  91
[第5章]森の角砂糖バサミ(The woodland tweezers)  117
[第6章]カラツボ(Tubolara)  123
[第7章]グンバイジュ(Camporana)  127
[第8章]キマグレダケ(Protorbis)  137
[第9章]アリジゴク(Labirintiana)  153
[第10章]マネモネ(Artisia)  161
[第11章]メデタシ(The germinants)  181
[第12章]キチガイウワバミ(The stranglers)  191
[第13章]ツキノヒカリバナ(Giraluna)  195
[第14章]夢見の杖(Solea)  293
[第15章]ユビナリソウ(Sigurya)  271
エピローグ 「タウマスの贈りもの」  287
平行植物奇譚年譜  297
あとがき  306

 遠くから見ても近くに寄っても同じ大きさに見える〈フシギネ〉、まるで囲碁の名対局のように戦略的に生える〈森の角砂糖バサミ〉、迷路状の葉脈で昆虫を迷わせる〈アリジゴク〉、外部の者が近づくと輪郭が溶解してかき消えてしまう〈ツキノヒカリバナ〉。

一番好きな部分

 表紙のイラストにもなっているメデタシについて

 歴史を予見し、未来を暗示するかのように外見上の活力に満ちたメデタシは、生命あるものの最後の(あるいは最初の)神秘にねらいを定めるミサイルのように、太陽に攻撃的に向き合っている。しかし、その不活性な無実体性、時間外における不動性、あるいは空間における幻影的な存在などの性質のために、それらは生物圏内の生長と発達から完全に除外されているのだ。それらは幻想のなかの実在であり、形と意味は一個の実体化したフィクションとして、われわれの〝知覚の光〟とそれら自身の〝存在の闇〟とのちょうど中間に位置している。

『平行植物 / レオ・レオーニ著 ; 宮本淳訳』
メデタシ p.187

 平行植物は、現実では、というかわれわれの知る物理法則では受け入れ難いが、他の物理法則なら別におかしくないと思わされる。むしろ、われわれの世界にいる植物も大概とんでもない進化をしているのである。ここらへんは他の生物三大奇書の『鼻行類』と似たものを感じる。

評価

分かりやすさ   5/10
おもしろさ    9/10
手軽さ      6/10
有益さ      7/10
表紙のデザイン  9/10

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