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実家終い⑤(パワーチャージ)

「実家終い」って書いているのに、母のことばかり書いていてごめんなさい。(いつ実家終うんだよ)(ひええ、ごめんなさい)
でも、「実家終い」に至るまでの大事な出来事なので、もう少し、書かせて下さい。

最後に到着した姉が母の面会を終えた時にはもう日が暮れていて、夕食どきになっていた。
この時点で決まっていたことは、明日、母の面会には朝イチの9時に行くこと、その後、母は人工呼吸器を付ける手術を受けるということだった。

私はみんなの集合を待ったり泣いたりで疲れ切っていたけど、このままバラバラに帰って、ご飯食べてお風呂入って寝られる気がしなかった。
だから、「ねー!みんなでご飯食べて帰ろ!焼肉がいい!」と言い張った。(末っ子発動)
そして素早く病院近くの焼肉屋さんを探し、「この後すぐ行きたいです」「子どもいるんで出来れば隅っこの席お願いします…!」とちゃっかり予約までした。
こういう時、「食欲もないまま布団に入り、気がついたら寝ていた」っていう方が普通なのかな。
でも、明日の朝また起きて、母の面会に行くまでには元気な顔を見せる準備が必要だと思った。それにこれから何が起こるかわからない。もしかしたら長丁場になるかもしれないし、もっとショックなことが起こるかもしれないのだ。ここで不幸そうな顔をしているわけにはいかない。

久々に会って少し大きくなった甥&姪と手を繋いで焼肉屋さんに向かう。(言っておくがスーパーかわいい)「え、何歳になったの?」「いまねー、3歳」なんて話してたら、顔が勝手にニマニマして、涙の苦い味はどこかにいった。
店に着いて小上がり席に座った時には、「ねーねーどれにする?」「絶対牛タン食べるよね?」「わー、ビビンバどうしよっかな!」なんてはしゃげるくらいには元気が出てきていた。
父と2人昼食を食べた薄暗い食堂とは違って、焼肉屋さんの照明はあたたかいオレンジ色で、無邪気な甥姪、兄や姉夫婦も揃っているのを見ると、なんだか心強くなってきたのだ。

とにかく!美味しいもの食べて元気出そう!と、みんなでしこたま食べた。絶対頼むみんなの定番牛タンも、欲張って頼んだ石焼ビビンバも、全部全部おいしかったのだ。(そのせいで私はこの後お腹壊すんですけどね…)

コロナになる前は、毎年夏にはみんなで実家に集まって、庭で焼肉をしたり、花火をしたりしていた。母のことで頭がいっぱいで忘れていたが、コロナによる自粛で、こうやって家族が揃うのは2年ぶりだった。
久しぶりにみんなで集まって焼肉を食べている、ということがうれしくて、ちょっと満たされた気持ちになったのである。こんな感じなら、なんかお母さんも大丈夫なんじゃない?と思うほどに。

普段ならスマホを忘れたことにも気づかない父がおもむろにスマホを出し、写真を撮って「お母さんを元気づけようと焼肉に来ています」と家族LINEに送った。「元気出たよ、うれしいね」と母。お母さん、私たちけっこう元気でしょ?安心してね。って多分みんな思ってて、なんか楽しそうに写真に映った。母にも、なんか大丈夫なんじゃない?っていうこの感じが届けば良いと思った。

まだ起こっていないことを嘆いたって仕方ない。まだ母には「人工呼吸器をつける」という手段があるのだ。

その日は兄だけが自宅に帰り、私たちは病院近くのホテルに泊まることになった。

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