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彼の願い事とは一体…!?


人の願い事を見るって、後ろめたい。
でも見たい———



それは6月某日、とある平日の午前10時過ぎ。みどりの窓口から出てきたわたしは、7月に予定している旅行のチケットを無事手にすることができ、意気揚々と歩いていた。

そこに、わたしと同じくらい、いやそれ以上に迷いのない軽やかな足取りで歩くスーツ姿の長身サラリーマンを発見。

向こうからこちらに歩いてくる。彼が向かう先は、駅が用意したであろう七夕の願い事を書くブース。長机に色鮮やかな短冊とペンが置かれていて、その隣には七夕笹が設置してある。

あ、あの人願い事書くんだ。

サインペンを手に取り、迷わずに何かを書き、赤い短冊を笹の上部に吊り下げた。そしてまた颯爽と歩きだした彼。

二百メートルほど離れたところで、最後に後ろを振り返り、自分の短冊を吊り下げた笹を確認する姿がなんとも清々しく、ほんの1分にも満たない出来事だったのだけれど、わたしはその彼に釘付けになってしまったのだ。

そして、冒頭の迷いが・・・。

人の願いを盗み見るなんて、趣味が悪い。
後ろめたいけれど。あのサラリーマンが何を書いたのか・・・き、気になる・・・!

うしろめたさと好奇心がせめぎ合い、結局七夕ブースへ吸い込まれるように、わたしは向かっていった。

短冊にはさまざまな願いが書いてある。

・彼氏といつまでも仲良くいられますように
・運命の人と出会えますように
・そろそろ彼氏がほしいです
・美味しいラーメンをたくさん食べたい
・お金持ちになりたい などなど


そんな中、彼が短冊をつけた場所に目を向ける。その赤い短冊に書いてあったのは・・・


「心を燃やせ!健康第一」


あ、あつい!!!
内容も字体も含めて伝わってくる
熱血オーラ漂う短冊!!しかも赤色!!!

思わずニヤリと笑ってしまった。

あの男性は、仕事前の自分を鼓舞するために赤い短冊を選び、この言葉を書いたのだろうか。そして最後に振り返り、よっし!!と気合を入れて取引先に向かったのだろうか。

普段から熱い人柄なのか、人知れず心を燃やしているタイプなのか、はたまたウケ狙いで書いたのか、真意はわからない。

けれど、この短冊はたくさんの願いの中でも、ひときわエネルギーを放っていた。そして、わたしはその短冊に笑顔と元気をもらったのであった。



昨日、7月7日は七夕。

ここ1週間ほど、気力がなく体調も良くなくて元気がなかったわたし。ふと、あの赤い短冊を思い出した。

「願いを叶えるためには情熱が必要!そして何より健康が1番!」そんなメッセージを、あらためて受け取って、ちょっと元気に。

自分のために願った願い事が、全然知らない誰かを元気付けたと知ったら、あの男性は喜ぶでしょうか。それとも、そこまでを見越してあの短冊を書いたのでしょうか。

かくいうわたしは、あの情熱的な短冊を見た後に、個人的な願い事をしたためるのは恐れ多くなりまして。何も書かずにその場を後にしたのでした。

わたしは優柔不断なので、1ミリの迷いも感じさせないで願い事を書いていった彼の姿がとても印象に残っていて。カッコいいなあ、なんだか素敵だなあなんて思ったのでした。


先月、学校行事の振替休日で平日休みがあり、その日の出来事です。

日常生活では絶対出会わないからこそ、こんな人もいるんだな〜面白いな〜って一方的にすごい記憶に残っていて。

物語に出てくる登場人物みたいだな〜って思ったので、そういえばと思って「記憶」を「記録」に残しておくことにしました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました😊🎋

おしまい。

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