見出し画像

アトツギのアトツギによるアトツギのためのイベント『アトツギWeekend』を開催しました

去る2022年9月23日から25日にかけて、アトツギのアトツギによるアトツギのためのイベント『アトツギWeekend』を開催しました。
イベントの内容などは、一般社団法人ベンチャー型事業承継が運営する承継予定者(アトツギ)向けのウェブマガジン『継ギトピ』ならびに北九州のローカルWebメディア『キタキュースタイル』に掲載されていますので、そちらをご覧くださいませ。

本イベントには企画原案者ならびにファシリテーターとして関わりましたので、その視点から想いについて書きたいと思います。

自らの立ち位置・やりたいこと

まず、私は今、本業としてDX推進に携わる傍ら、ITコミュニティの運営や起業家コミュニティ(StartupWeekend北九州)の形成を行っており、ここ最近はアトツギに関する行政支援に個人的に関わることが増えています。

その中で良く「色々やってますね」と言われますが、個人的には北九州、ひいては日本の明日のための取り組みという共通の方向性で、コミュニティ形成、新規事業促進、そしてその仕組みという同じようなレイヤーに取り組んでいるだけ、という気持ちでいます。

たまたま取り扱うテーマがDX、IT、アントレプレナー、アトツギに向いているだけで、特化しているつもりもありません。
そしてそれらを通じて実現したいのは「到達可能性の確立」、そして「主体者の増加」です。
後者のほうが分かりやすいので先にそちらを説明すると、簡単にいえば「他責せず自ら動く人を増やしていきたい」ということです。
「一億総中流」と言われて久しいですが、この潮流が生み出したのが「失われた30年」であり、そして来る「一億総下流」の素地だと捉えています。
これを打破するには、少しずつでも「自ら動く人」を増やしていくしかない。

一方で、「全員が自ら動く」ようになるとは考えていません。2:8の法則を持ち出すまでもなく、自ら動くことが全ての人にとって幸せとは限りません。
ぶっちゃけ、私だって自ら動かなくてもいいなら動きたくない。本質的には怠惰ですから。日がな一日、本を読み、キャンプをして、美味いものを食べていたい。
とはいえ、日々見聞きする中で、「自ら動きたくても環境や状況がそれを許してくれない」あるいは「身の回りへの不満はあり、動こうとしてもその方法が分からない」「動いても周りから阻害され排斥される」という人たちが多くいます。
そういう方々が、自ら望む環境や人脈、関係性、コミュニティなどに到達できる可能性、それを「到達可能性」と呼び、これを地域内で確保していきたいと思っています。

あくまで「可能性」なので、必ずしも望むものが手に入るとは限らない、それでもその第一歩を踏み出せる気持ちになれること、そんな場が地域にあるとよいな、と思います。
それに対して私の能力・資源として出来ることがあるならば、やったほうが良いと思うわけです。

「義を見てせざるは勇無きなり」。この言葉は大学時代を過ごした会津で学びました。
怠惰と誹られることは、実際その通りなので構いませんが、しかし怯懦では居たくない。
そのために、為せることがあるならば為していこうと考えています。

コミュニティで目指す共助

そして、今回のアトツギ文脈でいえば、私自身には家業も何もない根無し草ですが、だからこそ出来ることもあります。

その一つが場づくりです。

アトツギ自身が場づくりを行うと、どうしても、それは「家業に我田引水するため」と捉えかねないリスクもあり、特定方向の人脈しか集まりにくいという現実がありますが、「何者でもなく協力してもメリットもデメリットもない」からこそ関わることができるケースもあると思っています。

同じような立ち位置として行政がありますが、行政が行うのはあくまで「公助」です。
そこには「お上」の意識がどうしても(双方に)発生してしまい、それはいずれ「他責」や「依存」に繋がります。
もちろん「公助」が必要な部分は間違いなくあります。

その一方で、個人や会社における「自助」に対してそれを支えるのが「公助」だけ、というのは歪ですし、踏み込めない部分も出てくるし、望まれたからと言ってすべてに同じだけのリソースを投下できるような体力もない。
公助の役割はあくまで「分配」や、個々では賄えないセーフティネットの維持などですから。

私が作りたいのは、その間の「共助」です。
そこに関わるも関わらないも自由、そして関わったからといってえこひいきされるわけでもなく、さりとて必要に応じて助け合えるような環境。
それがあることで、一歩を踏み出せる人が増えるとよい、と考えています。

アトツギWeekendで目指すコミュニティ

正直なところ、それを志向すると全然儲からないし、結局は自分の事業として大きくする、ということでもなくなるので、家業を持っていながら同じようなことをするのは難しいでしょうし。
でもまぁ、私のような根無し草が取り組む意義はあるのかな、と思って進めていきたいと思います。

StartupWeekendとアトツギWeekendの共通点・違い

さて、このような想いで取り組んでいるアトツギWeekendですが、その企画を0から考え付いたわけではありません。
前述の通り、私はStartupweekend北九州の運営(オーガナイザー)として2017年からこれまで8回のイベント運営に携わってきました。名前からも分かる通り、アトツギWeekendは大いにStartupweekendを参考にしています。
基本的な骨格はパクっているといっても過言ではありません(笑)
(NPO法人Startup Weekendの理事には随時相談しながら進めているのでご安心を)
StartupWeekendについての概要は、以前北九州でStartupWeekendを開催した際に書いたレポートに記載してますのでそちらをどうぞ。

いずれも金曜の夜から日曜の夜の54時間で、アイデアを形にするプロセスを学び実践する場であること。3名以上のチームを形成し、共同でビジネスアイデアに取り組むこと。二日目の午後にはコーチングが行われること。三日目の夕方に最終発表が行われ、表彰が行われること。
これらはStartupWeekendとアトツギWeekend共通です。

一方で、参加者の属性の差から内部のプログラムと、イベント終了後の到達点に違いを設けています。
参加者の違いとしては以下の通りです。
StartupWeekend:起業に興味がある老若男女
アトツギWeekend:事業承継予定(非承継済)で34歳以下のアトツギ

StartupWeekend側は、起業に興味があるので、共通点としては「挑戦してみたい何か」を持っていることです。言い換えると「自分で選択した、あるいはしたい何か」があります。(正確にはそれもなく雰囲気で興味をお持ちの方はいますが、それはさておき)
一方のアトツギWeekend側は、「家業を持って産まれた方々」であり、「選択せざるを得ない」もしくは「選択の余地なく家業の後継となっている」方々であり、「何かをしなきゃいけない」与えられた条件であることです。
この違いは非常に大きいです。

StartupWeekendでは金曜の夜に自分のアイデアをピッチし、それをベースにチームを形成しますが、それは参加者が(一部にでも)アイデアを持っているからこそです。
アトツギWeekendではそうはいかないので、金曜の夜はネットワーキングと、お互いを深く知る事にフォーカスしています。チームの決め方はどのような形でも良いと思います(今回は、アイスブレイクを兼ねた誕生日順にしました)。この時点ではチームで取り組むビジネスアイデアは存在しません。

ではアイデアはどのように生むのか。それは2日目のAMで行われる「新規事業開発講座」を通じて半ば強制的に生み出されます。レポートにもありましたが、この時間はかなりハードです。(やる側もやらせる側も💦)

そして、その生煮えの状態でコーチングに入ります。
そうすると、実際のイベント内でも発生しましたが「そもそも本当にやりたい事業なんだっけ?」というツッコミも入ります。(これは家業にも通じると考えています)

こうして再び「取り組むべきアイデア」の探索を経て、「誰の、どんな課題を、どの様に解決するのか」というプロセスを高速で深掘りしていく時間が訪れます。これが二日目の夜から三日目の午前中です。
チーム制にしているのには、ここで「誰の」というのを固定化せずにチーム内で「本当に取り組みたい課題を持つ(あるいは把握している)人」が中心となり、リードしていくのを誘発するためです。さらに、チームメンバーは、自然とそれぞれが持つリソース(家業の経営資源やアトツギの個人的なノウハウ)を元に課題解決に向けた考案を深めていく形になります。
現実社会でも、単独で何かを成し遂げられるものでもありません。そこにはパートナーがいて、コラボレーションしながら事業を進めていくわけですから、そこも含めてプロセスとして実践します。

感覚的にはアトツギWeekendはStartupWeekendの半周遅れ位の54時間を過ごすイメージです。デザインプロセスに重ね合わせると下記のような図です。(もちろん、本当のデザインプロセスとは深度が異なりますが)

元図は https://goodpatch.com/blog/design-process-workshop-icckyoto2020  から引用 

いずれにせよ、54時間を駆け抜ける中でアイデアを形にするプロセスを学び、実践することに違いはありません。
半周遅れとは表現したものの、個人的な感覚としては、普段から事業について考えを巡らせることが多いアトツギが参加することで、進行自体のスピードはものすごく速いと感じています。
StartupWeekendとアトツギWeeekend、いずれも肝はコーチングが終わった後の24時間ですね。改めてStartupweekendプログラムの妙を感じた次第です。

StartupWeekendとアトツギWeekendとの掛け合わせ

このようにして実施したアトツギWeekendですが、個人的には、それぞれ単独で終わるイベントではもったいないと感じています。
私の好きなメッセージとして次のものがあります。

一般社団法人ベンチャー型事業承継のWebサイトから引用(現在では未掲載?)

このメッセージは、当を得ているとしみじみ思います。
起業家もかっこいいけど、アトツギもかっこいいんですよ。ほんと。
そういうエモーショナルな話だけでなく、モチベーションやリソースの観点でも良い補完関係になると考えています。

StartupWeekendでは地域に起業家のコミュニティを形成していき、一方のアトツギWeekendでは地域にアトツギのコミュニティを形成していく。これらが混ざり合うことで、単なる3日間のイベントではなく、実際の事業として実現していく際に相互に出来ることがあるのでは、と思うわけです。

すなわち、起業家はアトツギがアイデアを実現する際の外部人材パートナーとして。アトツギは起業家が取り組みたい課題を深掘りする際のフィールドや家業リソースの提供者として。

なので、StartupWeekendを実施している地域はアトツギWeekendも開催したほうが良いですし、既に両方実施している北九州では、その一歩先を実現したいですね。これを読んだアトツギの方々、ぜひStartup Weekendにもご参加を!
ちなみに直近では、Startup Weekend関門が開催されますし、来年の2/24-26には第9回StartupWeekend北九州の開催も控えています(唐突な宣伝w)。

終わりに

つらつらと書いていたら、もうすぐ五千字におよぶ長文になってしまいましたが、実際の運営や当日のプログラムについては語りつくせぬことが多くあります。
ご自身の地域でもアトツギWeekend(あるいはStartupWeekend)を開催したい、という方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡をお待ちしております。
ご連絡は、下記FacebookもしくはTwitterからお願いします。

ということで、5千字になりましたのでこれで筆をおきます。長文にお付き合いいただきありがとうございます。

いただいたサポートは、地域の課題をITの力で解決するITコミュニティ「Code for Kitakysuhu」の活動や、北九州市内のテイクアウト情報を提供するサービス「北九州テイクアウトマップ」の運営に充てさせていただきます。