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学生アプリコンテストを通じて感じたこと

今年、チャレキャラのメンターとしてイベントおよび最終コンテストへ出席し感じたことを記録しておこうと思います。

チャレキャラとは

チャレキャラとは、上記公式サイトにも説明がありますが、九州の学生のための育成型アプリコンテストです。
九州内の学生のみが参加可能で(チームメンバーとしてなら他地域からも一部参加可能な模様)、エントリー後半年間の定例イベントやオンラインでのメンタリング(質問への回答や方向付けのアドバイス等)を受けながらアプリを制作し、コンテスト形式で最終発表を行うものです。

運営は地域企業や関連する団体の方々によるボランティアで行われていながら、スポンサーも付き、そうした中からコンテスト最優秀賞のチームには30万円が贈呈されます。他にも企業賞で5万円、優秀賞で10万円と、学生にとっては(社会人にとっても)かなりの大金が贈呈されることもあり、毎年多くの学生が参加し、今年の最終コンテスト会場に集まったのは39チーム130名位。

コンセプトは「アプリを使う側から作る側へ」。デジタルネイティブな学生たちは普段から様々なアプリを使いこなしながら生活していますが、アプリ自体を自ら開発する、という経験はなかなか得られません。
「自らが欲しい、あったら良いな」と思うアプリを、自らの手で創り上げる。そんな経験が得られる場です。

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メンターとして参加したきっかけ

このチャレキャラ、聞けば6年前から福岡市で開催されてきた、とのことですが、その中で北九州の学生も多く参加していることから、運営サイドへも「北九州で開催されないか」といった声も寄せられていたそうです。
その声に応えたのが運営サイドとつながって共感した高橋さん。

彼とは仕事やコミュニティとしても様々な形で関わっていたこともあり、「北九州でも開催したいんだけど、メンターやってくれませんか」という無茶ぶり(そもそもその時点でチャレキャラって何かも知らない)に「半年毎回のイベントへの参加は難しいと思いますがそれでも良ければ」と答えたことがきっかけです。

私自身もCode for KitakyushuやStartupWeekend北九州の運営側におり、そのノウハウも提供できたら、という良い人っぽい理由もありましたが、そちらへの参加者集めという魂胆もあったりしました(笑)

こうやって書くと何やら腹黒い感じも隠し切れないのですが、私自身の行動理念「北九州が上向くために出来ることはとりあえずやってみる」にも合致していた、というのが原動力ではあります。

メンターとしてのコアイベント参加

実際に私がメンターとしてコアイベント(1か月に1回開催される、実際に集まってのイベント)に参加したのは、初回7/20と第3回9/7の、計2回のみ。他の日程は家庭や他の事情と被っており参加できませんでした。

コアイベントは福岡市内と北九州市内で開催され、私が参加したのは北九州会場であるCOMPASS小倉。北九州市が設置した創業支援のためのコワーキングスペースです。

実際に会場へ行ってみると、埋め尽くさんばかりの学生たち。30~50人はいたでしょうか。これには驚きました。というのも、普段私もITコミュニティイベントを主催したり参加したりしている中で、これだけの学生が集まることはほとんどありません。チャネルというのは大事なのだな、とつくづく思いました。そして動機づけも。

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メンターの役割は、学生の話を聞いて、それぞれが抱えている課題や方向性に対して助言を行うこと。答えを言うわけではない、というのが非常に重要なポイントでした。

例えば、チーム内でそれぞれのメンバーがチャレキャラに参加した背景だったり、想い、そして掛けられるリソース(時間や労力)がどれくらいなのか、といった事はチーム内でもあまり話されることがありません。
そうすると、開発が進んできた中で「自分はこんなに頑張っているのにアイツは何でやってないんだ」という不満が出てきて、チームが壊れてしまうことも過去にあったそうです。
コンテストは有志として参加しているので、皆が抱えている事情はそれぞれです。その中で、努力の絶対量ではかったとしたら、極論言えば全く学校にも行かずにコンテストにだけ時間と労力を費やしたものが偉い、という話になってしまいます。これではとても歪(いびつ)です。
そうではなく、皆の力をそれぞれの事情に合わせて応分しながら一つの目標に取り組んでいく。これは、社会人でもとても重要な事です。実際の開発プロジェクトでも、専任の方もいれば、掛け持ちの方もいます。それらの方々をどう調整してチームとして最終的な成果に結びつけるか、それがマネジメントの重要な役割だったりもします。

この他にも、アプリの制作アイデアに対して、それを思いついた背景の深掘りや、実施するにあたっての課題の洗い出し(新たな目線に気づいてもらう)、制作したアプリが使われるかという問いかけなども役割でした。
私自身はエンジニアを離れて10年近く経っているので、技術的な質問には全く答えられないのですが、そういった「何を作るか」という点でのサポートはさせていただけたのかな、と思います。

コンテストの受賞者たち

そうしたメンタリングの結果として、とうとう昨日(2019/1/21)、最終コンテストが開催されました。

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冒頭にも書いたとおり、今年は130名近く、39チームが最終コンテストまで参加したということで、運営サイドも頭を悩ませたそうです。
結果として、全チームが壇上に立ちプレゼンし評価する、というオーソドックスな手法は断念し、第1部としてチームブースを設け審査委員が手分けして1次審査を行い、第2部として1次審査を通過した10チームが壇上でプレゼンする、という手法がとられました。(この形式は今年初めてとのこと)

メンターたちもブースを回り、各々気になったチームの最終結果を聞き、さらにそこでも今後の展開についての助言を行ったりしましたが、さすがに2時間あっても39チームは回り切れませんでした。
ブースを回る中で、初期にメンタリングしたチームが私自身が発した言葉について考え続け、チームなりの解答を実際のアプリに作りこんでいる姿を見た時には、本当に胸に迫るものがありました。
そういうチームの中には、残念ながら2次選考まで進めなかったチームもありましたが、それでも、自分たちで考え抜いた経験は、とても尊いものだと思います。

そして、2次選考のプレゼンが行われ、結果発表。
私が印象に残ったいくつかのチームを写真付きで紹介したいと思います。
(企業賞は1次選考通過できなかったチームからも選出されたので、私自身がデモを聞けていないチームもあるのでそこは割愛します)

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福岡ルビセン賞とチャレキャラ優秀賞を受賞したのはチーム「はみがきたぬき」。自らが保有する衣類をスマホカメラで撮影し、AIを用いて形式(トップス・ボトムス)およびジャンル(カジュアル・ビジネス)などを判別し、その組み合わせを提案してくれるアプリ。
普段の着回しだけではなく、既存衣類の新たな組み合わせ発見や、場に合わせたコーディネートが出来る、というのは、あると本当にありがたいし、更なる展開として外部ECサイトとの連携も提案出来ていくのではないでしょうか。

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学び研growth賞はチーム「ブロドラ」。九工大のプログラミング研究会チームとのこと。専用部室を持たない彼らが共用の部室使用状況を把握でき、間違って入室してしまうという気まずさを回避するために指紋認証での入退室を行うとともに、研究会自体への参加モチベーションとするため、参加回数によって指紋認証時の効果音を7段階にするなど、発想そのものも面白かったのですが、ラズパイと接続できるモジュールを使って簡易な構成で指紋認証が実装できるということに驚きました。さすが九工大。

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chaintope賞はチーム「Bitpickers」。chaintope社自体がブロックチェーンベンチャー企業ということで、ブロックチェーンを活用したアプリを使ったチームに企業賞というのは納得でした。Bitcoinを用いた現在から未来への支援送り、というコンセプトが面白い、と思ったのと、加えていうならユーザビリティも加味したサービスとして提供できるとさらに面白くなりそう、と感じました。

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西部ガス情報システム賞はチーム「Gaze製作委員会」。手が不自由な方でも、目線を動かすことでWebブラウジングが出来る、というアプリでした。
ノートPCのカメラから目線を検出するというオープンソースライブラリがあること自体が驚きでしたが、それを活用して、簡潔な構成で社会的な意義のあるアプリとして制作した動機や姿勢は、とても高く評価できると感じました。

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優秀賞の2つ目は、チーム「beacommunity」。一人チームなのにbe a communityというのがなかなかシュールなチーム名ですが、ここはその背景から素晴らしかったです。
きっかけは彼が電車の中で遭遇した光景で、ぱっと見健常者に見えても、実はそうではない方が優先席に座っていることもあり、それを知らないがゆえに場の空気がピリついていた、という、人と人との関係性の補助をテクノロジーを活用して実現する、というコンセプトがとてもよかったと思います。

そして最優秀賞。

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最優秀賞は、推せる歩数計アプリを作った北九州市立大学の女子5人組のチーム「カルピス」。
まず、自らたちの課題であるダイエットという点を、推しへの愛という手段で解決するという思考、更にそこで単にプラス面だけで後押しするだけではなく、放置すると推しが太るというマイナス面も上手く設計されてました。
実装面でも、iPhoneのヘルスケア機能との連携や、swiftを用いたネイティブ実装は素晴らしかった。
聞けば、メインでプログラミングを行ったのは一人で、他のメンバーは、その子が必要といったもの、例えば立ち絵だったり動画、資料などを作成して揃えていったとのこと。これは、チームだからこそ出来たことで、ゲームを作る専門会社でもその工程管理や担当ごとの調整は往々にしてトラブルになるのに、それを学生たちが成し遂げた、というのはもはや偉業と言っても過言ではないと思いました。

ここで紹介できなかったチームたちも、それぞれ本当に素晴らしい作品を作っていたと思うし、制作を通じて得られたものは大きかったのではないかと思います。審査委員の方も言われていましたが、来年以降も引き続き(卒業しない限り)参加してほしいと感じました。

チャレキャラの意義とは

最後に余談ですが、今年メンターとして参加した中で感じた、チャレキャラの意義について少しだけ書こうと思います。

運営側が事あるたびに繰り返していた「育成型」であるという点、これは非常に大きいと思います。
プログラミングを書くこと自体の楽しさに気付く、という事も一つ大きな意味がありますが、一方で、世の中の流れに目を向けると、ソフトウェアをサービスとしてクラウド利用できる所謂SaaSや、開発生産性をあげる様々なライブラリの登場により、徐々にプログラミングを書くこと自体の必要性は減っていくと予想されています。
中には、そういったSaaSやライブラリ自体の開発を行うような本当の意味でのIT専門家は、一定層、依然として必要とされると思いますが、今現在プログラマ、と言われてイメージするような「仕様書通りにプログラムを書く人」は、今後その需要は激減していくと思われます。

このチャレキャラは、「仕様書通りにプログラムを書く人」を育てるのではなく、「自らや社会が必要としているものを作る人」を育てる効果があると感じました。そしてこれは、仮にプログラマとしての進路を選ばなかったとしても、今後の社会で間違いなく必要とされる能力です。
そういった人材を育てながらも、特定の企業への囲い込みをしないコミュニティであることそのものが、非常に価値のあるものだと感じました。

ひとつ前に書いた記事の末尾にもありますが、諸々の活動には、それを自分の利得に繋げようとする方が多いのも事実。私も冒頭に書いたとおり、自分たちの活動参加者集めに繋げられないかとの思惑もありました。自己弁護するわけではないですが、利得に繋げたい、と思うこと自体は自然な事です。
ただ、その理念に共鳴して協力するのか、単なる上っ面だけで利得を持っていこうとするのか、それは大きな違いだと思います。
そういう意味では、今回のスポンサーの皆様も、当然人材確保という利得は得ようと思いながらも、理念への共鳴は非常にお持ちの方々であったと感じ、そういった方々を集めて来るに至ったこれまでの活動に深く敬意を表します。

運営サイドも、参加者サイドも手探りで始めていきながら、その活動の輪が広がっているチャレキャラ。運営サイドからの参加者への一方的な貢献ではなく、参加者サイドとしても運営への協力などが行われている様は、世知辛い世の中で、とても有難いものと感じました。

あらためて、皆様お疲れ様でした!

いただいたサポートは、地域の課題をITの力で解決するITコミュニティ「Code for Kitakysuhu」の活動や、北九州市内のテイクアウト情報を提供するサービス「北九州テイクアウトマップ」の運営に充てさせていただきます。