なぜ人は起業体験イベントにハマるのか、そして地域で行う意義(後編)
はじめに
さて、前編から少し時間が空いてしまいましたが、これ以上空くと自分自身もお話しした内容を忘れてしまいそうなので、今回は「なぜ人は起業体験イベントにハマるのか、そして地域で行う意義」の後編をお届けします。
前編では登壇の経緯や話題に上がっている起業体験イベントStartup Weekend(SW)についても説明しているので、まだお読みいただいていない方はそちらからお読みください。
起業体験イベントを地域で行う意義
こちらのタイトルをつけるにあたって、意義については解説するとして、地域で行われているかという確認から。
以下がSWの説明を行う際に用いている地図です。
これを見ると、全国津々浦々で行われていることが一目瞭然かと思います。そして、この図は1年以上前から使用しているので、現在はピンが立っていない地域でも開催が増えています。
NPO法人Startup WeekendのWebサイトには「開催地域」というページがあり、そちらには設立順に都市名が記載されています。
ただ、同ページ内で一番設立順が新しい彦根も初開催が2023/2で、そこからの情報はアップデートされていないため、恐らく現在では100近くの地域で開催されているはずです。NPO法人の理事たちもボランティアで活動しているため、情報の最新化が課題でもありますね(そして全何地域で行われているかは情報としての優先順位も低いですし)。
どうしても気になる方は、2023/2の彦根以降に開催されてレポートが上がっている地域数を数えて加算してみてください(笑)
それはさておき、地域で行う意義について考えていきましょう。
その①~自ら動く人が増える
前編でも記載した通り、SWの目的は自らの頭で考え行動する、いわゆる「アントレプレナー」を応援するコミュニティを形成することにあります。
その最たる体現者が、オーガナイザーと呼ばれる、地域内で活動する主催者です。オーガナイザーになるためには一度SWに参加する必要があります。
自らが得た体験をさらに地域で広めるために行動を取り続け、スポンサーはもちろん、コーチやジャッジを探し、そして参加者も自らの手で集めていく事になります。
地域の未来を自らの手で切り開きたいと考える人たちが、主体的に(ボランティアで)活動を進めていく。このような経験をした方々は、SWに留まらず、地域内で必要な活動を次々に実施していく様になるに違いありません。
もちろん、参加者からそのままが起業して自ら動くようになるかもしれませんが、それは強制されて行うものでもありませんし、少なくともSWが開催されている地域では、主体的に取り組んでいる人がいる、という証左にもなり、だからこそSWを地域毎で開催する意義があるのです。
余談になりますが、イベントとしてのSWのKPIは参加者数ではなく、オーガナイザーである、と言われるのもこれが一つの所以です。
各地でファシリテーターをしていると、オーガナイザー自身が「〇〇人集めなきゃ」と意気込んでいるケースも多々あります。ただ、イベントとしてのSWは2チーム、最低6人いれば成立します。もちろん集客に心血を注ぎ、たくさん集めることに挑戦するのも良いと思いますが、個人的にはもっと部活動的なノリでライトに開催出来ても良いと思いますし、そのためには各地域でファシリテーターの資格を得る人が出て来ても良いのでは、と考えてはいます。その分、自ら動く人たちが増えていきますので。
その②~自由に開催できる(≠野放図)
起業イベントなら、各地で行政・自治体が開催しているし、別にSWを開催しなくても良いのでは?と指摘をいただくこともあります。実際のところ、行政・自治体が地域のスポンサーとなってSWを開催している事例もあります。
しかしながら、SWを地域で行う意義は、行政に頼らずとも実施できることにあると思います。
各地域で開催される起業イベントには、当然のことながら税金が費やされます。そしてその税金の使途としては、結果が求められます。何人が参加したのか、何人が起業したのか、見学者はどれくらい集まったのか。これらの数値はSWにとっては正直本質的ではありません。
繰り返しになりますが、SWの目的は、地域毎にアントレプレナーを応援するコミュニティを形成することです。この目的のもと、いわばスポンサー自身もコミュニティの一員であり、コミュニティの一員がコミュニティ自体に対して数値で成果を求めること自体、ナンセンスなのです。
コミュニティの一員であるならば、一員として「自分で成果を出す」ことを求められます。だからこそスポンサーにもイベントへの参加チケットが渡されるわけです。
SWオーガナイザーが提供するのはあくまでも場であって、その場を活用してどう価値を作り上げるかは、関わるメンバーそれぞれが負うものです。
実際、スポンサーとして参加し、新規事業担当者を送り込まれて、その成果を持ち帰って自社の事業に活かす。あるいはSWの場で出会った人(企業)とコラボで企画を進める。そういった動きをされている方々は数多くいます。(この考え方は中々行政には理解されにくいですが…)
コーチジャッジとて同様で、SWではコーチ・ジャッジにも体験の場を提供している、というスタンスです。偉い人を呼べばよい、というものでもなく、”コーチやジャッジという役割を担える人”を地域内で発掘して育てる、というのもSWの効果の1つです。だからこそ、SWではコーチ・ジャッジもボランティアで関わっていただくのです。
「自地域にはコーチ・ジャッジがいないから遠方から呼ぼう」という考え方が既に誤謬であり、地域内でそのような役割を担える人を拵える、いわばロールプレイングゲーム(イベント)なのです。(※ロール=役割)
地域の中でコミュニティを形成し、コミュニティの中で一定のルールのもとに役割(ロール)を演じ(担い)ながらイベントを開催する。それを何度も実施することが、地域でエコシステムを形成していくことに繋がります。
SWイベント内では「ルールがないのがルール」と言われながらも、イベント開催に向けては様々なルールが定められているのは、このような考え方をオーガナイザー自身が実践するためとも言えようかと思います。
その③~全国からの参加者/協力者がいる
正直なところ、これまでに挙げた意義は、SWでなくても同様の考え方を持った取り組みでも同じだと考えています。
中でもSWを地域で行う位置がどこにあるかと言えば、やはりSW自体が既に全国、いや全世界で行われているから、という点にあります。
例えば、前編でも出てきた彼は、北海道在住にもかかわらず、九州での開催も含め、日本全国を飛び回り参加しています。
そんな彼は各地域で仲間を創り、他地域での開催時に引き連れてくる特技を持っています。これが実現できるのもSWならではです。
私がSW北九州vol.2で参加した際のリーダーは、渡米中にSWを知り直近で帰国する際に開催されている地域だったから北九州に参加したそうです。
他にも全国でスポンサーを行いながらジャッジ/コーチを務めていただける連続起業家、そしてまた同様にスポンサーを担いながらも自らも参加者として飛び込み3日間でビジネスモデルを形にして翌月曜日からその事業を始める敏腕経営者も。
奇抜な例を出してしまいましたが、そのような形でなかったとしても、近隣地域でイベント参加し、自らの主活動地域に持ち帰り新たなコミュニティを立ち上げる方は後を絶ちません。SWはその様にして拡がっています。
その様な方々に対し、SWではNPOやファシリテーターによる応援が得られます。ファシリテーターは過去複数回、他地域でオーガナイザーのリーダーを行ったことがある人で、コミュニティ運営の熟練者です。NPO理事のほとんどはファシリテーターであり、更に全国からの情報を元により良い運営のためのノウハウを集積し、ファシリテーターを通じて各地域に還元したり、通年スポンサーからの資金をもとに初開催地域への補助を行ったりしています。このようなサポートが得られるのはSWならではないでしょうか。
いわば、SWとはアントレプレナーコミュニティ形成のためのプラットフォームとなっており、SWにアクセスすれば、そのプラットフォームに蓄えられているリソースを活用できるようになるわけです。
地域であればあるほど、自地域単独ではリソースが限られているのも事実です。だからこそ、他でもないSWを開催する意義があるのです。
おわりに
前編と後編に渡り、SWの意義を語ってきましたが、正直なところ今回挙げた意義は一側面でしかなく、語りつくせないほど色々あります。
ただまぁ、こういうのはいくら文字で読んでも百聞は一見に如かず。少しでも気になった方はぜひ、お近くで開催されているSWに飛び込んでみてくださいな。
SWの探し方は、イベント告知サイト「Doorkeeper」で「Startup Weekend」と検索いただくのが一番手っ取り早いです。
直近で私が参加する(ファシリテーター、あるいは最終日見学者として)イベントは以下の通りですので、ご一緒いただける方はご一報くださいませ。
では本日はこれくらいで。
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