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オフィス移転マニュアル〜経理Ver.〜

2020年も残り少なくなってきました。今年は新型コロナウイルスの感染拡大、オリンピック・パラリンピック延期、レジ袋有料化など様々なできごとやトレンドがありました。今年のトレンドの一つとして、「オフィス移転の増加」もありました。

有名なニュースだと、人材大手のパソナグループ本社機能の淡路島への移転、三菱東京UFJ銀行の本社オフィス移転なんかがありましたね。リモートワークが普及したことによって、同じようにオフィス移転を検討されている企業の方も増えているのでしょう。

これに関連して、オフィス移転をする際に経理担当者がやるべきことをまとめました。実際の経験を踏まえていますので、お役立てください!

旧オフィスの有形固定資産の除却処理

まずは、移転前ーつまり現在のオフィスの固定資産の除却処理を済ませましょう。応接セットなどの家具や、内装工事で設置した間仕切りなど資産計上しているものが対象です。仕訳は、取得価額と減価償却累計額を逆仕訳して、簿価を固定資産除却損するのみですが、下記の点には気をつけましょう!

旧オフィスの有形固定資産の除却処理

廃棄するものには「廃」のマークを貼るなどして、もう事業の運営に使っていいないということがひと目で分かるようにしておくと良いでしょう。
また、その写真と併せて稟議や決済をとり、ワークフローや上長印などの仕訳のエビデンスになるようなものもとっておくことも忘れずに。

一括償却資産の除却

一括償却資産は、税務上は除却しても損金にならず、通常の減価償却分だけの損金計上になります。しかし、会計上は除却損が計上されますので、税務と会計で不一致が生じます。

また、使用している会計システムによっては、固定資産台帳で一括償却資産が除却できない場合があります。実際の操作は各システムにより異なりますので、ご確認ください。

新オフィスの資産計上

移転が完了したら、移転についての請求書の仕訳を切ります。手元に見積書(請求書と金額が同じもの)とオフィスレイアウトを準備し、建設仮勘定でためていたものと併せてまとめて処理をしましょう!

固定資産は、基本的に役務の用を足す最小単位で仕訳を切ります。例えば、テーブルセットであれば、机と椅子にばらして考えます。

そのうえで20万円の判定(一括償却資産採用の場合は10万円)を行い、固定資産・費用の仕訳を切るのですが、その際には下記の点に注意をしましょう。

按分処理について
見積書の項目を見ると、明らかに単体で処理できないものがあります。そういうものは現物に配賦するのですが、配賦する際には次の二点に注意してください。

① 特定の固定資産に紐づくものは、その範囲内で配賦する。

例えば家具A・B・C・D設置費用だったら、全体に配賦せず、家具A・B・C・Dのみに配賦すべきです。

② 全体に係る費用は、全体に配賦します。
一般管理費、設計費用などが該当します。

賃貸物件の内部造作について

賃貸物件を改装するなどして、内部造作が発生する場合、耐用年数を見積ることがポイントです。例えば賃貸物件で天井を抜いた場合や、床の張替えなどです。

また、「平成28年10月改定版問答式法人税事例選集(P397)」に「合理的な見積もりが難しい場合は、耐用年数18年で設定できる」との記載がありますので、年数の見積りのお悩みの方はご参考になさってください!

なお、原則的には勘定科目は建物だそうですが、同じ定額法なので建物付属設備でも問題ないとのことです。

資産除去債務


原状回復費用が発生する場合は、資産除去債務も計上します。計上に必要なものは以下の通りです。

① 原状回復費見積もり:内装工事業者に依頼して出していただきましょう。
② 割引レート:財務省の国債金利から取ります。

計算方法
詳しい計算方法は調べていただくと複数のサイトに記載がありますので、ご参考までに原則法の計算方法をご紹介します。

① 原状回復費見積もり額を国債金利で割り引きます。これが発生時の資産除去債務です。
例:見積金額10百万円、耐用年数15年で金利3%であれば、ROUND(10/(1+0.03)15,0)=6

②:毎期末に利息費用と、減価償却費を計算して計上する 。

耐用年数の注意点

以前、実際に資産除去債務を考えずに15年で計上しようとしたところ、監査法人から以下のような指摘をいただきました。

「過去の実績から、引っ越しを3〜4年周期で行っているのに、15年で計上する根拠は何か」 

これに対しては、15年で計上するのかの根拠を作成するとともに、今後は移転せずに増床で対応することを事業計画に織り込む事によって対応しました。

仮に計上を3年くらいにすると、他の固定資産も税務ではなく、見積の対応することが必要になるので、それを避けるために対応しました。

これはレアケースかもしれませんが、ご参考まで。

償却資産税の対象
資産除去債務は償却資産税の対象にはなりませんので、間違って申告対象に入れないようにしましょう。

 旧オフィスの処理

旧オフィスの敷金等の精算が発生していると思うので、こちらも忘れずに処理します。資産除去債務を積んでいたら取り崩すこともお忘れなく。

以上、オフィス移転の際にやるべきことや注意点についてご紹介しました。

なお、本記事はAIトラベルCOOの藤本(@FjmtRysk)の経験を基にしています。

バックオフィスとフロント業務の両軸の経験に基づいて、情報発信中です。よろしければフォローしてください!

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