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酒プロデュースを振り返る

【経緯】

2021年の年始まりだったと思う。

Twitterで仲の良い酒好きフォロワーさんとツイートでやり取りしている時に言われた。

「どっかの蔵でタンク借りてさ、薬剤師メンバーでオリジナルのお酒造ろうよ」

初めは彼女の冗談だと思った。コロナで自粛自粛で身動きとれないこのご時世にそんなこと不可能でしょ。

酒蔵さんに迷惑だってかかるし、そもそも顧客にタンク貸し出して酒を造らせてくれる酒蔵なんて、ない。
聞いたこともなかった。

リプライを見ていたら別の酒好きなフォロワーさんからコメントがきていた。

「私、心当たりある蔵があります。確認してきますよ」

え?嘘でしょ?

私は逆に酒蔵の負担になるのではないかと、これが本当になるのであれば事案に反対だった。

「1回、このメンバーで集まって話してみない?」

言い出しっぺの彼女が反応あったアカウントに声をかけ、オンラインで集まることになった。
メンバーは5人。

自分のストレートな意見を出すものの「逆にこれって酒蔵さんの売上になるから良いんじゃないの?」と意見を出されて「それは確かに」と思った自分がいた。

基本やれる自信がないことには手をつけたくない。
私も今思えば頭の片隅で「予防線」を張ったというか恐れた感情的な部分があったのかもしれない。

色々と意見を出して話し合っていくうちに、このメンバーで酒プロデュースをやってみたいなって気持ちになっていった。

酒蔵の募集内容はザックリこうだ。

720ml瓶約100本分造れるのタンクでオリジナル酒を酒蔵さんに委託して造ることができる。
使用する米、精米率、酵母はこちらで指定が可能。
ラベルもオリジナルデザインでお願いが出来る。
委託の金額はそのスペックによる。

薬剤師で文字を書く技術がある人、薬剤師で絵を描く技術がある人を集め、酒の中身はこちらで決めて上手く配分し1年かけて運営する。

初めてのことでやるってなった時はドキドキしたし、逆に不安もあって私はせっかくお酒で仲良くなった人達とプロジェクトで揉めて仲違いにはなりたくなかった。それもオンラインでの話し合いでストレートに伝えた。

そして、5人で最初にルールを決めた。

「プロジェクトに関する意見は遠慮なく言う、溜め込んで不満にしない」


このルール、酒プロジェクト2年目が終わった今でも本当に決めておいて良かったと思っている。
感情的な部分を別にして意見を言い合える仲になれたのは、このルールのお陰。

お酒の中身をプロデュースする担当は主に私と夫になった。それだけ知識があれば大丈夫だよ、と周りには言われたけれどそんな自分は許せなかった。
せっかく商品をプロデュースして提供するんだから適当なことなんてしたくない。

私が現在持っている資格…日本酒ナビゲーター、日本酒検定1級、唎酒師。
一旦ある程度まで登り詰めたのはそういう理由。日本酒業界の方々にも色々教えて頂き感謝しかない。

あの時。フォロワーさんに声をかけてもらわなかったら、オンラインで話すことがなかったら多分このプロジェクトは施行されてないでしょうし、私自身ここまでやってこれなかったと思う。

この酒プロデュースプロジェクトに参加してくださった薬剤師の皆さま、本部メンバーの方々。
一緒にやりとげてくださってありがとうございます。


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そして2023年、1タンク→2タンクと今年は委託する数を増やします。


中身はまだ明確に決めていないけれども、2つとも新しいコンセプトのみでやるか、片方は昨年のお酒ももう一回造るかで検討している最中。

そのうちTwitterでアンケートをとるので反応を頂けると助かります。

2021年、2022年とやってきたこのプロジェクトのお酒を振り返り。

【2021年:567vs春夏秋冬】

567vs 春夏秋冬 GEMbymotoにて

【スペック】9号酵母:夢山水70%精米

新型コロナウイルスで色んなことがめちゃくちゃになった年だったと思います。
1年の殆どは緊急事態宣言。

私達、薬剤師も抗原検査キットの販売や感染した患者さんへの対応、薬の欠品などあらゆることに振り回されました。

「コロナと戦った1年間」でもあり、プライベートも「コロナに狂わされた1年間」でした。

この1年間を春夏秋冬で表しました。
写真は左のラベルから春、夏、秋、冬と並んでいます。全部のラベル絵に「月」の絵が入ってるのは月:lunatic「狂った」という意味を込めて薬剤師の絵師さんに描いて頂いております。

米は愛知県のもので酒蔵さんが推している「夢山水」を使用。初回だったので万人受けする味を狙いたかったんです。ただ純米酒という区分でどこまでの味と香りを出してくれるのか気になって精米70%の設定でお願いしました。

悩んだのが、酵母。

スタンダードな7号にしようと思っていたのですが、色んなお酒を見てきて世に9号のお酒って結構出回っていて「そういえば私、9号酵母のことよく知らない」ってなったんですよね。9号酵母のことを知る為に酵母発祥の地、熊本まで飛びました。

味の安定感があるけれど、造ってる蔵で出ている香りと味が全然違う印象があったので外れのない宝くじを引くような感覚で酵母は9号に決定しました。

味は生は青リンゴ系、火入れはグレープフルーツのような爽やか。お燗にすると旨味がのったココナッツのような香りが出るのが特徴です。


【2022年:逸鳳華】

読み方は「いっぽうか」EUREKA!にて

【スペック】バラ酵母プリンセスミチコ:夢山水70%

運営本部の隊長がダジャレで次のお酒「一包化をもじって逸鳳華なんてどう?」っていうのがそのまま採用されました(単純)
そして、たまたまだったのですが、調剤報酬から一包化加算という文字が消えるという年に当たりました。
一包化とは薬局で使われる専門用語で用法時点で薬をまとめることを言います。

朝飲む薬が5種類あったとしてそれをその都度シートからプチプチして取り出すのってしんどかったりするんですよね。
それを朝分でまとめてパックして飲みやすくしてくれるサービスです。

テーマを花鳥風月と決めていたのでイメージにもぴったりだったのでコンセプトはあっさり決まり。

2021年のお酒との垂直飲みを狙いたかったので条件を酵母のみの変更としたのですが、この酵母決めがまた新たな壁になりました。

お酒の名前に「華」が入っていたのでキラキラしたイメージにしたく花酵母を使いたかったのですが、使える花酵母の少なさ。

酵母にもお互いの命をかけた生き残りバトルの世界があるらしく。
この酵母は発酵力が弱くて失敗の経緯を辿るケースが多いとか、あの酵母は蔵付き酵母を死滅させてしまうから蔵への持ち込みがNGとか色々あるみたいなんですよね。

胡蝶蘭とか月下美人の酵母も候補に入れていたのですが、そういった事情があって諦めました。

蔵でプリンセスミチコというバラ酵母を使用していたのは知っていたのですが、なんせ飲んだことがなくどんな感じなのかと思っていた矢先。

日本酒関連でお世話になってた知り合いから同じ酵母を使用して醸した愛媛県のお酒「石鎚」を提供して頂く機会がありました。

プリンセスミチコで醸した石鎚

飲んでみたら凄く香りも味もキラキラしていて、「あ、これにする」って私の本能がそう思いました。

石鎚は飲んだことがあるのですが、私の知ってるバランスがよくて旨味がのっている石鎚ではなく旨味も残しつつキラキラした感じが凄く良かったんですよね。

去年と同じ条件で造ったら楽しそうと思って酵母はプリンセスミチコに決定。

花鳥風月の他に被せたテーマは儲けなかったのですが、「風」のテーマでラベル絵を描いてくださっていた絵師さんが夕方の絵を描いてくださっていたのを見て、花鳥風月に掛け合わせて背景テーマとして一包化の用法を重ねたら面白いだろうなと思い付きました。

花:朝
鳥:昼
風:夕
月:夜

上記のテーマで絵師さんに再度お願いして、今回は飲み比べで生酒も出すことにしていたので文字師さんに文字のフォントを変えて頂きました(各アーティストさんにはここまでワガママ聞いて頂き本当に感謝です)

味は予想通り、生はフレッシュさと軽さを兼ね揃えたジューシーなフルーツ。火入れは食中酒に向きそうな上品な味でかつ香りは生より抑えめという感じです。

生…めっちゃ評判良かったですね。

【2023年は】

新しいテーマは決まっており、先ほど書いたように逸鳳華の要望しだいでタンクを分けるか分けないでやるか決めかねているところです。生と火入れ両方やります。

ファンタジーと薬学を融合した世界をお酒に反映出来たらいいなと思っております。

今後も応援よろしくお願いします。


薬クラオリジナル酒広報担当:sainokuni

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