見出し画像

#71 初めて音楽で泣いた日

音楽を聴いて涙を初めて流した日を記憶しているのは、小学4年生の頃だと思います。それまでにも聴いて泣いたかもしれないのだけれど、その日のことは、今でもよく覚えています。

”ラジカセ”がやってきた日

何故覚えているかというと、我が家にラジカセ(ラジオ カセット レコーダ)が初めてやって来た日だったからです。こう書くと、ラジカセをお行儀よく家族みんなで聴いて、名曲に心洗われて感動のあまり涙がこぼれたお話を期待されるかもしれませんが、少し(かなり?)違います。それまでテレビとラジオはあったのですが、まだ録音ができるカセットテープレコーダは、我が家にはなかったあの日、重たい電子機器(機械の”機”)であるラジカセを父親が買って帰ってきて、ポンと置いてどこかへ出かけていきました。使っていいとは言われていないのですが、好奇心旺盛な子供の前に、そんな新品の電化製品を置いてきぼりにするなど、、、。後は、ご想像のとおりです。小学生だった私は、取扱説明書なんてちゃんと読むことはなく、箱から新品のニオイがまだプンプンしているラジカセを取り出して目をキラキラしていました。やはりカセットテープも一緒に買ってあったので、さっそく中に入れてみました。

「コンドルが飛んでいく」

そのラジカセのつまみは、日本語表示が全くなく、ON/OFF/REC/FW/RV/AM/FMなどの英字の略字表記しかなく、意味が全く分かりませんでした。何となくいろいろスイッチを押していたら、”ザァー”というラジオの雑音が聞こえ始め、適当にチューニングの大きな輪っか(つまみ)を回していたら、サイモン&ガーファンクルの「コンドルが飛んでいく」が聴こえてきました。それまでよくテレビで聞いていたアニメの音楽や日本のヒット曲とは、まったく違う音楽で頭に稲妻が落ちた感じです。(実際に落ちたことはありませんが。)とにかく、シビレマシタ。おぅー、こんなすばらしいおんがくがあるのかーぁ。南米の民族楽器の澄んだ音色と、二人の絶妙な高音ハーモニーに震えました。すると、生れてはじめて、涙が流れてきました。不思議な感覚でした。もしかしたら、生れてはじめてラジカセで音楽を自分でチューニングして(選曲して)、今までに見たことない世界への入り口を目の当たりにしたからかもしれません。

”どうにも止まらない”

喜んで、いろいろなボタンを押していたら、テープが突然動き始めました。おーぅ、どうしよう!!焦りました。親に内緒でこっそり取り出して、音楽だけ聴いてみよとしたのに、録音が始まってしまいました。慌ててボタンを押したら、早送り(FD)や巻き戻し(RV)の動作が始まり、キュルキュルとテープが右往左往しています。こちらも右往左往して、もう一つ、感動とは違う涙が出てきました。あー、テープも涙も、”どうにも止まらない。”(※)

(※)当時、山本リンダさんの「狙い撃ち」というヒット曲を小学生は、ドウニモトマラナイとなりきって歌っていました。

、、、、、お後がよろしいようで。