第68回税理士試験〔法人税法〕理論問2解説

前回の問1解説に続き、今回は問2を解説致します。
それではまず、問題文から見てみましょう。

問題文の太字部分が今回の問われている内容(論点)になります。

 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除制度について、
(1)制度の適用対象となる中小法人等の意義について簡潔に答えなさい。
(2)平成30年4月1日以後に開始する事業年度において適用される制度の概要について中小法人等とそれ以外の法人に分けて簡潔に答えなさい。
 (注)特定株主等によって支配された欠損等法人の欠損金の繰越しの不適用制度については、触れる必要はない。
(3)制度の適用要件を簡潔に答えなさい。

続いて、出題ポイント(国税庁HP「出題のポイント」参照)を見てみます。

~国税庁HPより抜粋~

 論点は、法人税法第57条の規定の正しい理解である。青色欠損金の繰越控除制度は、中小法人等とそれ以外の法人で繰越控除できる限度額が異なるため、制度の適用に当たっては、中小法人等の範囲が正しく理解できていることがポイントとなる。
 また、この制度の概要や適用要件に関しては、①青色欠損金の繰越期間が10年とされていること、②中小法人等以外の法人は、青色欠損金の損金算入について当該事業年度の所得金額の50%相当額が限度とされていることなど、これまでの改正事項を踏まえた現在の制度が正しく理解できているかがポイントとなる。

恐らく問題の元ネタは、こちらの国税庁タックスアンサーからの出題であると思います。

~国税庁タックスアンサーより抜粋~
No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除
〔平成30年4月1日現在法令等〕
 確定申告書を提出する法人の各事業年度開始の日前9年(注1)以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額は、その各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入されます。
平成28年度の税制改正により、平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年とされています。
1 繰越控除をする法人等
 欠損金の繰越控除をする法人は、欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人です。
 欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出していれば、その後の事業年度について提出した確定申告書が白色申告書であっても、この繰越控除の規定が適用されます。
 ただし、他の者による特定支配関係(注2)を有することとなった欠損金額等を有する法人(欠損等法人)が、その特定支配関係を有することとなった日(以下「特定支配日」といいます。)から5年以内に、旧事業(特定支配日の直前において営む事業)の全てを廃止するとともに、その旧事業の事業規模のおおむね5倍を超える資金の借入れ等を行うことなどの一定の事由に該当するときは、その該当する日の属する事業年度(以下「適用事業年度」といいます。)以後の各事業年度においては、その適用事業年度前の各事業年度に生じた欠損金額については、この繰越控除の規定は適用されません(注3)。
2 繰越控除される欠損金額
 繰越控除される欠損金額は、各事業年度開始の日前9年(注1)以内に開始した事業年度において生じた欠損金額です。ただし、この欠損金額からは、この繰越控除の規定の適用を受けようとする事業年度前の各事業年度の所得金額の計算上損金の額に算入された欠損金額及び「欠損金の繰戻しによる還付」の規定により還付を受けるべき金額の計算の基礎となった欠損金額は除かれます。また、損金の額に算入される欠損金額は、欠損金の繰越控除の規定を適用せず、かつ、法人税法第59条第2項(会社更生等による債務免除等があった場合の欠損金の損金算入)(同項第3号に掲げる場合に該当する場合を除きます。)、同条第3項及び第62条の5第5項(現物分配による資産の譲渡)の規定を適用しないものとして計算した場合におけるその事業年度の所得金額を限度とします。
 例えば、繰越欠損金の額が150万円で、その事業年度の繰越欠損金控除前の所得金額が100万円の場合には、150万円のうち100万円が損金の額に算入され、その事業年度の所得金額は0となります。
 なお、中小法人等(注4)以外の法人の各事業年度(更生手続開始の決定等の一定の事実が生じた法人や新設法人の一定の事業年度を除きます(注5)。)における上記の控除限度額は、繰越控除をする事業年度のその繰越控除前の所得の金額に対してそれぞれ次の率を乗じた金額とされています。
(1) 平成24年4月1日から平成27年3月31日開始事業年度・・・100分の80
(2) 平成27年4月1日から平成28年3月31日開始事業年度・・・100分の65
(3) 平成28年4月1日から平成29年3月31日開始事業年度・・・100分の60
(4) 平成29年4月1日から平成30年3月31日開始事業年度・・・100分の55
(5) 平成30年4月1日から開始事業年度・・・100分の50
3 損金算入の順序
繰越欠損金がその事業年度開始の日前10年(注1)以内に開始した事業年度のうち2以上の事業年度において生じている場合には、最も古い事業年度において生じたものから順次損金算入をします。
(注1) 平成30年4月1日以後に開始する各事業年度において生じた欠損金額については10年です。
(注2) 特定支配関係とは、他の者がその法人の発行済株式又は出資の総数又は総額の50%を超える数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係その他一定の関係をいいます。
(注3) 平成18年4月1日以後に特定支配関係を有することとなった場合の欠損金額について適用されます。
(注4) 中小法人等とは、①普通法人(投資法人、特定目的会社及び受託法人を除きます。)のうち、資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(100%子法人等を除きます。)又は資本若しくは出資を有しないもの、②公益法人等、③協同組合等、④人格のない社団等をいいます。
 この100%子法人等とは、①資本金の額若しくは出資金の額が5億円以上の法人又は相互会社等(以下これらを併せて「大法人」といいます。)による完全支配関係(一の者が法人の発行済株式等の全部を直接又は間接に保有する関係をいいます。)がある普通法人、②完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている普通法人をいいます。

(注5) 更生手続開始の決定等の一定の事実が生じた法人や新設法人の一定の事業年度とは、次表の左欄に掲げる法人の中欄に掲げる事業年度(次表の右欄に掲げる事業年度を除きます。)とされています。

それでは、解答方法を確認しましょう。

 問題文と照らし合わせて考えて頂けるとお分かりの通り、今回はこのタックスアンサーから全て解答可能となっております。上記タックスアンサーの太字部分が解答骨子となる部分ですので、太字部分を中心に解答できているかが焦点になると考えます。

総 論

 近年毎年のように出題予想の上位に君臨し、毎年のように裏切られてきた欠損金が万を辞しての出題となりましたが、王道の青色欠損金の出題に若干拍子抜け・・・それでも各論点とも出題の仕方はさすが本試験・・といった感想でしょうか。

(1)については、中小法人等の意義でしたが、いかがでしたでしょうか。模範解答ではありませんが、合格答案として考えるのであれば資本金の額1億円以下の法人で大法人による完全支配関係があるものを除く旨が回答できていれば問題ないと考えます。
(2)については、平成30年4月1日以後開始事業年度に適用される規定を中小法人等とそれ以外に区分して記載するとのことですので、特に繰越期間が10年に延長されている部分及び繰越限度がこの規定等の適用前の所得金額に50%を乗ずるかそうでないかを区分して解答することになります。このことを最低限触れているうえで、制度概要を簡潔に述べるとありますので、結果的には理論テキストのベタ書きでも問題はないと考えます。
(3)については理論テキスト通り、”欠損金額が生じた事業年度において青色申告書である確定申告書を提出し、かつ、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出している法人”が適用要件となります。

総評としては、(1)についてはボーダーライン及び確実ラインともに資本金1億円以下かつ大法人による完全支配関係がないことが述べられていること。(3)についても同じくボーダーライン及び確実ラインともにテキストベースの解答ができていることが求められるかと思います。

(3)については、個人的には理論テキストのベタ書きが模範解答ではなく、特に平成30年4月1日以後適用の規定を中小法人等とそれ以外に区分することが意識されている解答が望ましいように思います。解答用紙もちょうどタックスアンサーが記載できるくらいのサイズですよね。ただし、簡潔に述べられているものが結果的に理論テキストとなりますので、ベタ書きでも合格答案になるものと考えられます。

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