自宅で子どもを預かる「連れ帰り保育」ー特定の親子への規格外の保育
この本は、夜間保育を利用する親子と、それを支える人たちの姿が描かれたものです。
夜間保育園が認可されるまでの過程や、ベビーホテルの状況、そこを利用する親たちの事情などについて詳しく知ることができます。
読んでいて一番印象的だったのは、夜間保育園の理事長夫婦が、家庭内の養育に問題がある子どもたちを週末自宅に連れ帰って面倒をみる「連れ帰り保育」をしているというエピソードでした。
特定の子どもを理事長が自宅に連れ帰って面倒を見ることに対して、周囲からは当然「理事長は子どもをえこひいきしている」という批判が上がったけれど、理事長の考えは違います。
「福祉の平等」について、「家庭の事情はさまざまです。家でしっかり抱っこしてもらって愛情をかけてもらえる子もいれば、お母さんお父さんのいろんな状況が影響して少ししか抱っこしてもらえない子もいる。おうちで抱っこが足りない子と十分に抱っこされている子に同じようにするのが平等ではない。おうちで抱っこが足りない子はたっぷり抱っこして、おうちで十分に抱っこされている子は、足りていない子の抱っこより短くても良いという考えです。」と話しています。
もちろん本来は、家庭での養育に問題がある子に対して、理事長や他の誰かが個人的に何かをするのではなくて、自治体の保育課や児相などに情報共有をして介入してもらうことになっています。
ただそうすると、場合によっては子どもたちは里親さんや施設に預けられることになり、親子が離れ離れになってしまう。それを避けるために理事長は連れ帰り保育をています。
連れ帰り保育以外にも、本来なら児相の介入が必要そうな親子に対して、この園では規格外の保育が展開されます。
生活が困窮して食べるものがなくなり、子どもの送迎も困難な状態になったシングルマザーの家庭へ、保育士が子どもをお迎えに行き園に連れてきて、必要な食事を与え、その子の生活を守ったというエピソードです。
そうした特定の親子への特別な支援について、それが正しいか正しくないかは別として、救われる親子は確かにいるだろうなと思わされた一冊でした。
最後に、夜間保育の現状について少し。
40年前、ベビーホテルに初めてカメラが入り、その劣悪さが暴かれたことをきっかけにして、劣悪な環境から子どもを取り返すために「認可夜間保育園」が制度化されました。
ただ、認可の夜間保育園は40年余り経っても数が増えず、ベビーホテルの数は増え続け1255施設にものぼります。
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