なぜ人は鼻クソを食べるのか
小学生のとき、ゆみちゃんという女の子がいた。
ゆみちゃんは地味で目立たない子だったが、学年では有名人だった。
なぜなら、「鼻クソを食べる」という噂がたっていたからだ。
私はゆみちゃんとは別のクラスだったので、実際に鼻クソを食べてる瞬間を見たことはなかった。
だから、本当にそんなことしてるのか半信半疑だった。
しかし、今ならゆみちゃんは本当に鼻クソを食べていたのだと、自信を持って言える。
大人になってから、鼻に突っ込んだ指をそのまま口に入れる人を何人も見てきたからである。
私が今まで見てきた鼻クソ食べるマンは、性別とか年齢に関係なくいた。
場所は決まって電車の中だった。誰にも見られていないだろうという、慢心からそのような行動をとるのだろう。彼ら彼女らは平然と人前で鼻クソを食べるのだった。
そもそもなぜ、人は美味しくもない鼻クソを食べるのだろうか。
長年私の中で疑問だったのだが、最近ようやく自分の中で解決された。
それもまた、電車の中でのことだ。
5歳くらいの女の子が、座席に座って人差し指を鼻の中に入れてかきまわしていた。
本来なら、それを見た母親が「そんな汚いことしちゃダメでしょ」と注意を促すはずだろう。
しかし母親は、女の子が鼻をほじるのをやめたあと、何も言わずハンカチでその子の指を拭き取ったのだった。
この時私は思った。鼻クソを食べる人は、親からきちんとした教育を受けてこなかった人だ、と。
子供の頃なら誰しも、無意識的に鼻をほじるはずだ。なぜならむずがゆいからである。そしてそれを口に含むという行為は、おそらく食欲からきたのだろう。幼少期はおもちゃでもなんでも口に入れたがる。
鼻クソ食べるマンは、誰にも注意されてこなかったがゆえに、小さい頃からしていた一連の流れが、大人になった今でも直せずにいるのである。
私はその女の子と母親を見ていて、晴れ晴れとした思いだった。
小学生の頃からずっと記憶の片隅に残っていたゆみちゃんの謎が解けたのだ。
もし私に子供ができた暁には、鼻クソを平然と食べないような大人に育てたいと思う。
ゆみちゃんのように影で噂がたたないためにも。
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