ただ、安易に理系選択を北風のように勧めても。

一応、理系文系のどちらに行けばいいかと生徒から聞かれたら、恐らく、理系と、もし、理科教師という立場であるなら、答えるだろう。まあ、理科教師という立場でないから、どっちでもいいぞと答えるし、実際、こればかりは、いわゆる運命というところもあるので、結局はどっちも使うかもしれない。安易に、どっちかしか使わないなんて、私は言えない。

理科をやるにせよ、科目の選択も難しい。本当のところを言えば、全部やってみろというところだけど、全部は時間的に難しい。

そして、あきらかに誘導をかけるのが難しい科目がある。

それは物理である。

物理は敷居が高すぎる。

それは、なぜかというと、一つ目は、計算でゴリゴリやるということに対すること、二つ目は、「物理ができること=物理学科へ行く」という奇妙な等式があること。

こういったことをやっているから、物理に魅力を感じなくなるのではないのか?という疑問がまずある。

実際、物理学科は、はっきり言って、心証が悪い。

計算を黙々とやっている「ネクラの集まる学科」というイメージが付きまとっている。

そして、割の合わないところに、わざわざ、行きたがる「オタク」(これは、最近、良く聞くポジティブな意味は"一切なく"、社会不適合者という意味合いが含む極めてネガティブな意味合いだが)というイメージがあそこにはある。

実際、かつて、W大の知人から聴いたのだが、そこは、理工学部の応用物理学科と復古してまだ日が浅い、理学部の物理学科があって、だいたい、同じ内容の講義を聴いていたらしい。

それで、研究室配属の時に、いくつか研究室があったのだが、「素粒子系」、「固体物理系」といった感じに分類ができる研究室があったらしい。

それで、この時に、興味深いのは、成績が優秀な奴ほど、割の悪い研究室に行ったということだった。特に、まったく就職が困難な「素粒子系」の研究室に行ったというのが結構いたらしい。

正直、「自己責任」で、そういったところに行くのであれば、こちらとしても、文句はないのだけど、「実害」があったので、疑問視をせざるを得ないという状況だった。

どうも、研究の際に、3年ほど、非正規の研究者として研究する機会が与えられ、その後は、教員なり、なんなりなるということがあったのらしいが、どうも、そのポストを得られなかった博士課程の学生が自殺を図ったらしい。

正直、優秀な人物だったらしいが、どうも、そういった妙な魔力に憑りつかれたとしか言いようがない状況だったらしい。

こういったことが、かつてのW大であったという。

それを見て、その知人は、「なんで、あんなに実力があった人が、そういったある種の洗脳に憑りつかれたんだろ?」という感想だったらしい。

多分、一生に一度、その特定の期間でも、そこで研究できることが至上の価値になっているんだろうなと私は考察をしたけど。

恐らく、こういうことだ。そもそも、常勤というか、正規のポストというものは端から考えていない。そのため、その特定の非常勤のしかも、極めて短い期間の契約のところでも得たいと。

それで、最悪、将来、棒を振るかもしれないが、それでもかまわないと。

そういうことで、そのポストに就くこと自体がある種の目的化していたのかもしれない。後、そこで、研究すること自体が目的化しているのかもしれない。

でも、実害が出た以上、本当にそれでいいのだろうか?という疑問が私は湧く。

そして、そういった学部以外にも、物理を使う機会はある。

例えば、物理工学科もあるし、応用物理学科もあるし、数理工学科という手もあるし、それこそ、電磁気学が主になるけど、電気電子工学科、後、力学や熱力学が主になるけど、機械工学科といった感じにいろいろな学部が実はある。

後、意外な話だけど、生物学の一部では、神経の電気信号を記述する際に、抵抗器とコンデンサーを用いた回路(RC回路)モデルを用いたりする。なお、コイル(L)は今のところない。自家発電(R-18)の記述でもさすがにコイルは使ったのは見たことないし。

そういった感じで、物理は、物理学科のような特定の学部に縛られるようなものではなく、様々なところへの「パスポート」だということを宣伝することが、物理に興味をもらってもらうことに繋がるのではないか?と個人的には思う。

もちろん、物理を取ったからといって、理系に来いとは絶対言わない。というのも知人からちょっと、こんな話を聴いたから。

文系で法曹界に行った知人(物理未履修)から力学を教えてくれと言われたことがあるし。どうも、最近、車の接触事故といった交通事故に関する解析を外注するケースがあるらしく、外注した際に、加害者に有利になるような判決に誘導するような結果を出すケースがあるとかで、自分らも力学が分かっていなければ、そういったでたらめなことを弁護人から言われても対応できんから、学ぶ必要があるということで、そこのボスが輪講を始めて、私の知人は頭を悩ませたとか・・・。

こういうケースは「稀」だとは思うが、企業に入ってから物理が資格を取るうえで必要になるということもあるだろう。

そういうことで、文系に行っても後から「物理」が必要になったりする。

後、物理学科から来た教員からすると、工学部の学部に行くことは「都落ち感」があるようなので、そういった高慢な姿勢をまずは改めたらどうだ?とも思っている。

そういった物理学科が全てといったようなことが物理を「特定の人々のもの」だと、そういう意識を植え付けているだけだと。

無論、理系は物理以外にも化学、生物、地学はあるが、結局、なぜ、文系の方に行きたがるのか?

恐らく、オタクの集団だと、思われているのが原因なのと、数学を使ったり、敷居が高いと思われているからだろう。

だから、まずは、日常生活や仕事で使うということを周知させるのがまず先ではないかと思う。

後、理科教員のエゴを捨てることか・・・。

そして、理科のリテラシーとか言って、嘘を吹き込むとか、そういう連中も一度は、行動を総括せよ。

結局、北風と太陽の北風のように、強引に理系を勧めても生徒はついては、こないのだから。

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