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開発ストーリー#7 不確実性を小さくするためのリアル・コンセプトテスト

壁を傷つけずに、好きな高さに美しい空中棚を取り付けられる「AIR SHELF(エアシェルフ)」。 このnoteでは、AIR SHELFができるまでのブランドストーリーを具体的に発信していきます。 2024年2月29日の発売に向けて、美しい空中棚がどうやってできたのか?を楽しみながらお待ちいただければ幸いです。


みなさん、こんにちは。
AIR SHELFのブランドマネージャーを担当している大川です。

前回までは、コンセプトを磨き上げるために行なったユーザーヒアリングについてご共有させていただきました。主には、プロジェクト初期に行い、テストは画像と文面で行ったものになります。
今回は、コンセプトをさらに磨き上げるために行った、展示会方式でのヒアリングについてご紹介します。実物を用いてのテストになります。

なぜ、コンセプトテストを行うのか?

そもそもコンセプトテストは、新たなカテゴリの製品の不確実性を下げ、魅力を上げていき、担当者の自信をつけていくことなどが目的です。

前回ご紹介したユーザーヒアリングは、コロナ禍だったこともあり、全てオンライン上で行いました。しかし、いくら画面上でユーザーにコンセプトやプロダクトイメージをお見せしても、実際のプロダクトを見た時に感動していただけるかは分かりません。

平安伸銅工業としてもこのプロジェクトに少なからず投資を行っているので、いざ販売してみて誰にも喜んでもらえなかった、となると非常に悲しいです。なので、大きな投資をする前に私たちが作ろうとしているプロダクトを、ユーザーが実際に喜んでくれる確証が欲しかったのです。

リアル・コンセプトテスト

実物でコンセプトテストを行う方法はさまざまあり、実店舗を持っている食品スーパーなどであれば、一部店舗でテスト販売してみて検証することもできます。食品のように、プロトタイプ(=試作)を作るのにそれほど投資の必要がない業態であれば、このような方法も採用できます。
一方、AIR SHELFのようなプロダクトは、プロトタイプ一つの作成にもそれなりに費用がかかります。なかなか売り場全体を再現することなどは難しいのが現状です。

そこで、今回はクローズドな展示会方式で、ユーザーとして想定した方々に来ていただき、実際にプロトタイプを触っていただいて、感想をフィードバックいただきました。

この方法はビジネスデザイナーの濱口秀司さんが論文で提唱されていたβ100の方法を参考にさせていただきました。(厳密に提唱されている手法を実施したわけではないので、あくまで参考にしたという点をご了承ください)

具体的な方法ですが、、プロダクトの完全なプロトタイプを作り、必要であれば模擬店舗を作ってパッケージプロトタイプを置き、実際に販売されている競合製品も並べることで実際の売り場を再現。そこに100~200人のユーザー候補をお呼びしてフィードバックを得るというものです。

実際には、100人ほどをお呼びすること、競合品も含めた模擬店舗をつくることはしませんでしたが、展示会という形で30名ほどをお呼びして、ご購入の判断をしていただくことにしました。

実際の会場の雰囲気を少しだけお伝えします。(一部プロダクトが映りますが、試作品段階のものであることをご留意ください。)

東京・表参道にあるマンションの一室をお借りして製品のプロトタイプを展示

会場は東京表参道でマンションの一室をお借りしました。より、実際のお部屋環境に近い方が、ユーザーさんも判断しやすいだろうと思ったためです。

実際に製品を見ていただき、インタビューを行っている風景

良いと思っていただけるか、ではなく、欲しいと思っていただけるか

3日間かけて運営メンバーが、お越しいただいた方お一人お一人に対応し、商品について説明しながらヒアリングを行いました。
アンケート片手に、説明を行いながらユーザーの反応を細かくメモしていきます。最後に、アンケートの記入もお願いし、製品についてのフィードバックと、AIR SHELFの特徴として有望と考えている提案要素の優先順位づけ、その方のインテリア家具を購入する際の行動などについてお聞きしていきました。

普通の試作展示会とは違い、綿密にアンケート設計し、ご訪問いただいた方にプロダクトの価格を提示した上で購入判断もしていただきました。
アンケートには、連絡先の記入と、「購入をご判断された方には、販売した際にはご案内させていただきます」と付記しました。

もしかすると、「そこまで判断を迫るのか」と思われた方もいるかもしれませんが、ユーザーに「良いと思いますか?」といった購入意向をお聞きするよりも、実際の購入判断を(擬似的に)していただいた方が、ご購入意向を正確に測れると考えたのです。

実際にお配りしたアンケート用紙の一部。販売価格等は当時の想定

ユーザー候補と実際に話すことの大事さ

今回購入判断をいただいたのは、実際に製品化された際に発売しようとしていた製品のセットになります。幸いなことに、設定していたマイルストーンよりも良い結果が得られて安堵しました。

何より良かったのが、製品に対する具体的なフィードバックをいただけたことです。例えば、製品を連結する留め具の外観に関するご指摘や、設置時の操作性に関する違和感など、たくさんのクリティカルな改善点をユーザー候補の方に教えていただきました。
中には改善点をご指摘いただきながらも、1時間以上にわたって製品のポテンシャルについて熱く語ってくださる方もいました。

たくさんのユーザーのフィードバックに触れながら良い反応をいただけたこともあり、プロジェクトメンバーはとても自信を持つことができました。
「本当に喜んでくれるかな?」とちょっと不安だった気持ちから、「AIR SHELFは絶対にたくさんの方に喜んでいただける!」と自信を持って言えるまでになっていました。
このような取り組みは、簡単に行えるものではないかもしれませんが、メンバーがプロジェクト推進に自信を持つためにも、とても良い機会になりました。

個人的には、この会期を通じて、プロジェクトメンバーがAIR SHELFへの愛着を深めていく様子が手に取るように感じられたことが嬉しかったです。
後にたくさんの壁にぶつかるのですが、自信を持って「大丈夫!」と推進できたのは、この時の経験が大きかったと思っています。

今回のご紹介は以上となります。

このあと、プロダクト構造の詳細を詰めていくことになりますが、次回からは、ブランドのコアな要素である、ブランドのミッション・ビジョンをどのように策定したのかについてご紹介させていただきます。


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