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夢遊病

他人の顔が覗いても死にたいと思うその独善に僕は憧れた
承認欲求とかそんなつまらない感情で君は生きないでくれ
芸術を人生のバカンスにしている人たちとは話したくない
常に酩酊状態だと揶揄されたが僕はぼくでまともなんだ
ひとつずつ失くしていく大切なものもそうでないものも
ベランダに足掛ける後ろ姿のなんと美しいことだろう
夕焼けのなかで叫ぶ名前は誰のものだったかもう思い出せない
塞ぎ込むように見せかけて茫然と開け放たれた心の隙間
今までここにあったもの
もうここにないもの
雨に追いやられて立ち竦んだ二十二歳の濡れた瞳
歩道橋で夏を待つ
「ペンギンに空飛べって言うのと同じこと」
殴りつけられることの気持ちよさは殴りつける気持ちよさと同等か?
自他境界が揺らいで遍く記憶とランデブーする帰する
星になりたいよ僕はきみを照らす星になりたい
あの日つくった瘡蓋掻きむしってまた止めどなく血を流してしまう
忘れないように生きてることちゃんと思い出して人間になって
僕たち互いの寿命引き延ばしていつか宇宙旅行しようね
間違いだとわかってても君に電話する夜があればよかったかな
「知ってる? ペンギンはパートナーを決めたらそのひとと一生を添い遂げるんだよ」
最後までできなくてごめんね僕さいきんおかしくってさ
きみの口に含んだおまじない少しだけ僕に分けて欲しい 「    」
誰に何と言われようとこれしかできないからこれでしか生きれないから
皮膚はあたたかいのに舌は冷たくて女のひとの怖さをおもい出した僕は震えた
連れ去ってもろとも全部夜の闇を剥ぎ取るように
風邪の日に母がつくってくれた水枕の音
知らない女のひとが空けた錠剤の包装の数
僕はどうしてもまだ君が忘れられない
また愛してもいいですか

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