労働基準法・労働契約

労働条件の明示次項は、本試験の頻出項目!絶対的明示事項と相対的明示事項を区別する。解雇予告の原則と例外も重要。

・労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。(労働契約法)※書面等は成立の要件ではない。

・労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする(強行的効力)。この場合において、無効となった部分は、労働基準法で定める基準による(直律的効力)。

・使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。(派遣労働者については、派遣元の使用者が労働条件について明示しなければならない。)

絶対的明示事項
①労働契約の期間に関する事項
②有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(労働契約法18条1項に規定する通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)
※期間の定めのある労働契約(有期労働契約)であって、当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の場合に限る。
③就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)
④始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
⑤退職(解雇の事由を含む)に関する事項

相対的明示事項
①退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
②臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与その他これに準ずるもの並びに最低賃金額に関する事項
③労働者に負担させるべき食費、作業用品等に関する事項
④安全及び衛生に関する事項
⑤職業訓練に関する事項
⑥災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦表彰及び制裁に関する事項
⑧休職に関する事項

・契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の場合に明示する事項
①無期転換申込みに関する事項
②無期転換申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件(無期転換後の労働条件)のうち、絶対的明示事項及び相対的明示事項

・使用者は、労働契約の締結に際し、労働条件を明示する場合においては、賃金及び労働条件に関する事項その他の所定事項については、労働者に対する当該事項が明らかとなる書面の交付により明示しなければならない。口頭ではなく書面の交付を要するものは以下の2つ。
①絶対的明示事項、ただし、昇給に関する事項を除く。
②契約期間内に無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結の際に明示される無期転換申込みに関する事項と、無期転換申込みに係る期間の定めのない労働契約の絶対的明示事項、ただし昇給に関する事項を除く。

・労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除(即時解除)することができる。この場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者、必要な旅費(帰郷旅費)を負担しなければならない。

・労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもの(建設工事などの有期的事業は完了までの期間の労働契約の締結が可能)のほかは、3年(専門的知識等であって高度のものを有する労働者との間に締結される労働契約および満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約は5年)を超える期間について締結してはならない。

・都道府県労働局長の許可を受けた使用者が行う認定職業訓練の受講生との契約期間は、職業能力開発促進法施行規則に定める訓練期間の範囲内で定めることができる。

・使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
※現実に生じた損害の賠償請求は禁止されていない。

・前借金相殺(ぜんしゃくきんそうさい)の禁止
使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺してはならない。
※使用者が生活必需品の購入等のための生活資金を貸付け、その後この貸付金を賃金から分割控除する場合においても、総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合は、適用されない(労働契約に付随していれば違反)。

・使用者は、労働契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。

・使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合には、法定の措置をとらなければならない。(社内貯金、通帳保管どちらも、使用者は労使協定(当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定)を締結し、行政官庁(所轄労働基準監督署長)に届けてること、貯蓄金管理規定を定めこれを労働者に周知させるため作業場に備える等の措置をとる、労働者が貯蓄金の返還請求をしたときは、遅滞なく返還する必要がある。

・社内預金の場合は、さらに次の措置をとらなければならない。
労使協定に以下の定め
①預金者の範囲
②預金者一人あたりの預金額の限度
③預金の利率及び利子の計算方法
④預金の受け入れ及び払い戻しの手続き
⑤預金の保全の方法
上記①~⑤の事項及びそれらの具体的取扱いを貯蓄金管理規定に規定。
毎年3月31日以前1年間における預金の管理状況を4月30日までに、所轄労働基準監督署長に報告。
年5厘以上の利率による利子をつけること。

・通帳保管の場合には、共通の措置のほか、貯蓄金管理規定に、所定の事項(預金先の金融機関名、預金の種類、通帳の保管方法及び預金の出入れの取次の方法等)を定めておく必要がある。

・貯蓄の自由及び返還請求の自由が保障されている限り、貯蓄金額を賃金の一定率としても違法ではない。

・労働者が、貯蓄金の返還を請求したにもかかわらず、使用者がこれを返還しない場合において、当該貯蓄金の管理を継続することが労働者の利益を著しく害すると認められるときは、行政官庁(所轄労働基準監督署長)は、使用者に対し、その必要な限度の範囲内で、当該貯蓄金の管理を中止すべきことを命ずることができる。この場合、使用者は、遅滞なく、その管理に係る貯蓄金を労働者に返還しなければならない。

・解雇とは、使用者の一方的な意思表示による労働契約の解除をいう。

・使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が法65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
ただし、契約期間満了により当然に労働関係が終了する場合は、解雇ではないため契約が引き続き更新されたと認められる事実がない限り、労働者を辞めさせても労働基準法19条違反ではない。

・使用者が法81条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合(このケースの解雇については行政官庁すなわち労働基準監督署長の認定を受けなければならない)は、法19条の解雇制限の規定は適用しない。
※派遣労働者について、事業の継続が不可能であるかどうかの判断は、派遣元の事業につき行われる。労働者の責に帰すべき事由があっても、解雇制限は解除されない。

・業務上の傷病による療養のために休業している労働者が療養開始後3年を経過しても傷病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1,200日分の打切保障を行えば、解雇制限が解除される。所轄労働基準監督署長の認定を受ける必要もない。(最高裁H27.6.8)

・使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
解雇の予告においては、解雇日について「〇年〇月〇日の終了をもって解雇する」等と特定する必要がある。予告期間の30日間は暦日で計算、その間に休業日や休日があっても、延長しない。
解雇予告手当は、解雇の申渡しと同時に、通貨で直接支払わなければならない。

・法20条違反の解雇は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇の通知後30日の期間の経過後から又は解雇の通知後予告手当の支払いのあったときから解雇の効力が生ずる(S35.3.11細谷服装事件)

・労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

・労働者が、法20条1項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。証明書には、労働者の請求しない事項を記入してはならない。

・使用者は、あらかじめ第三者と諮り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は退職時等の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

・使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者(退職の場合は労働者本人、死亡の場合は労働者の遺産相続人であって、一般債権者は含まれない。)の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。これらの賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、7日以内支払い、又は返還しなければならない。退職手当については、たとえ請求があってから7日を超える場合でも、あらかじめ就業規則等で定められた支払時期に支払えば足りる。

・厚生労働大臣は、期間の定めのある労働契約の締結時及び当該労働契約の期間の満了時において労働者と使用者との間に紛争が生ずることを未然に防止するため、使用者が講ずべき労働契約の期間の満了に係る通知に関する事項その他必要な事項についての基準を定めることができる。

【有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準】
①使用者は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない。
②使用者は、有期労働契約(当該契約を3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。
③②の場合について、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
④②の有期労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。
⑤使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に限る)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。
⑥使用者は、労働者に対して前記②の事項を明示する場合においては、当該事項に関する定めをするに当たって(均衡考慮の原則を規定する)労働契約法3条2項の規定の趣旨を踏まえて就業の実態に応じて均衡を考慮した事項について、当該労働者に説明するよう努めなければならない。

・行政官庁は、この基準に関し、期間の定めのある労働契約を締結する使用者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

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