健康保険の被保険者、保険料

会社など法人の理事や代表社員など、法人の代表者または業務執行者は、労災保険の適用労働者や雇用保険の被保険者となることはないが、健康保険や厚生年金保険の被保険者となることはある。

労災保険や雇用保険の給付事由である業務災害や失業は、使用従属関係や雇用関係が前提としてなくてはならないが、健康保険の給付事由である業務災害以外の疾病や負傷、死亡または出産、厚生年金保険の給付事由である老齢や障害、死亡に至る原因には、使用従属関係や雇用関係は必ずしも必要ない。そのため、健康保険や厚生年金保険では、法人の代表者であっても、その法人から労働の対償として報酬を受けている場合は、その法人に使用される者として被保険者となる。健康保険で被保険者・被扶養者となれない者は、原則として、国民健康保険に加入する。これを、国民皆保険という。

健康保険では、個々の被保険者ごとに、事業主から受ける報酬の額および賞与の額を元にして、月単位で保険料を算定し、これを事業主と被保険者が折半で負担して、事業主が自分の負担する分と被保険者の負担する分を併せて納付する。一般に、被保険負担分は給与がから天引きされる。子育て支援を目的として、育児休業等期間中や産前産後休業期間中の保険料減免制度が設けられている。(厚生年金保険も)

標準報酬月額を原則として1年間固定し、これを基礎に被保険者の保険料が計算される。標準報酬月額の決定は、入社して被保険者の資格を取得したときに行われる資格取得時決定と、その後毎年一回定期的に見直しを行う定時決定がある。定時決定前に報酬額が大幅に(2等級以上)変動したときは、その時点で随時改定が行われることがある。育児のため勤務時間を短縮することなどで1等級以上下がったときも、その時点で、産業産後休業終了時改定、育児休業等終了時改定が行われることがある。賞与(ボーナスなど3箇月を超える期間ごとに受けるもの)も『標準賞与額』として保険料算定の対象となる。

健康保険が行う保険給付は、被保険者にかんするものと被扶養者に関するものと大きく2つに分けられる。現物で行う現物給付と、現金で行う現金給付にも分けられる。

被保険者が健康保険を取り扱っている保健医療機関等に行って被保険者証等を提示して診療を受けたときは、一部負担金を払えば残りの費用は健康保険制度が賄う。これが療養の給付。昭和59年に1割を自己負担とする一部負担金が導入される前は、10割給付で自己負担を伴わなかった。この一部負担金が平成9年に2割、平成15年に3割になり現在に至る。ただし、70歳以上の被保険者については、一定の場合を除いて2割負担(現役世代並みの一定以上の所得があれば3割負担)

被保険者に対する療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費は、被扶養者については家族療養費という1つの保険給付として扱われる。家族療養費の額はもともと療養に要した費用の5割だったが、昭和48年に7割、つまり自己負担は3割とされ現在に至る。被扶養者が小学校に入る前と70歳以上であるときは8割給付。ただし、被扶養者が70歳以上でも、その被保険者が70歳以上の現役並み所得者である場合は、7割給付。

被保険者が原則として一月間い受けた保険診療で支払った一部負担金などの自己負担額が一定額を超えた場合には、被保険者の請求などにより、その超えた分を払い戻すという扱いをしている。これが高額療養費という制度。高額療養費の対象は、医療に係る保険診療の自己負担額であって、食事療養標準負担額や、生活療養標準負担額、評価療養や選定療養、患者申出療養は対象とならない。

傷病手当金は、療養のため労務に服することができないときに、第4日目から(継続した3日の待機経過後)支給される。最初の3日の待機は虚病防止の観点から設けられた。支給額は1日単位で、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月のその被保険者の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する額。支給期間は、支給を始めた日から通算して1年6月間。傷病手当金は、生活保障を目的とするので、報酬を受けることができる期間は、原則として支給されない。

被保険者が業務災害以外で死亡した場合は、その被保険者により生計を維持していた者で埋葬を行うものに対して、埋葬料5万円が支給される。また、被扶養者が死亡したときは、被保険者に対して家族埋葬料5万円が支給される。

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