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第三章後編『奪還作戦』
「おい坊主。いや、黒雹龍さんや。諦めてその身諸共俺たちに寄越しな。大人しく捕まってくれりゃあ痛い思いはしなくて済むぞ?」
俺は今、史上最大のピンチに見舞われていた。
ざっと10人程度の全身鎧に包まれた大男達が俺を囲んでジリジリと迫ってきながらリーダー格と思しき男が話しかけてくる。見てわかる。勝てないやつやん。
「い、いや、あのー…この子達にも人権、いや龍権があるのではないかと思うんですが…」
「何訳わかんねえことぶつくさ言ってんだ!とっとと捕まりやがれ!」
「ひいっ!?」
俺が言い終わる前にリーダー格が叫ぶと同時に男たちが一斉に襲いかかってくる。
俺的には宥めようとして言った言葉だったけど逆に刺激しちゃったみたい。なんでだろうな?人権という名の法律をかざせば行けるって思ったけどあ、そういやここ異世界だったわ。HAHAHA。
あー世界がゆっくりに見える。これが走馬灯か。なんでこんなことになっちまったんだろうな。
俺はぼんやりとこんなことになった原因の出来事をを思い出す。
*
「俺、魔王なの?」
『そうだと言っておるだろう』
「いや、でもなんで俺が魔王なんてそんなこと急に言われても困るんですけど…」
俺は目の前の龍の王様に気を取られて背後から近づいてくる脅威に気が付かなかった。
「これ読んで」
すっと頭に手を添えられたような感触を感じた直後、頭に激痛が走った。
「いぎぎぎぎぎ!?がいっ、がぐぐ!?」
まるで頭の中に手を突っ込んでかき混ぜられてるかのような気持ちの悪さとガンガンとハンマーでタコ殴りにされてるような激痛に吐き気がする。
「うぐぎぃ、も、もゔ、やめで!!」
『だいぶ苦しそうだぞ?大丈夫なのか?』
ここで龍の王様が俺に助け船を出して…!
「気にしないで」
『そうか。なら大丈夫であるな』
「だざんのがい!!いぎぎ ぃ!?」
出すと思ったら出さんのかい!?こんな時に漫才やらなくていいから!?助けて!?
「あとはこれを…こう」
「ぎゃっ」
そこで俺の意識は本日何度目とも知れない闇の中に沈んでいった。
*
「起きて」
「っ!?だから!もっと優しぐぅ?」
「静かに」
また蹴り飛ばして起こそうとしてきたソフィアに今度こそちゃんと謝罪を貰おうとソフィアに文句を言おうとしたら手で頬を挟むように掴まれた。
「いひなひはひふうんはぐごっ!?」
「静かに」
俺がなんのことかと説明を求めようとするやいなやさらに掴む力を強めてきやがった。本当にこいつには躊躇っていう概念が存在しないらしい。
本当に困ったものだけど痛みがどうしても勝つから逆らえない…てかいつまで掴んでんだよ!?顎砕けるって!
涙目になりながら必死に首を縦に振ってソフィアに静かにすることを伝えるとようやく離して貰えた。冗談抜きで顎粉砕骨折するかと思ったわ。
顎をさすりながらジト目でソフィアを睨んでみるもソフィアは特に気にした素振りは見せずに耳元に囁いてきた。
「私はここに向かっている魔王の部隊を殲滅する。あなたは魔導書に記したとおりに動いて」
「ハイハイ。わかりまし」
「静かに」
ソフィアはそう言ってふっと姿を消した。
「……」
後で魔法で寝かして逆さ吊りにしてやると心に決め、俺は魔導書とやらに書いてあった通りに動きだした。
*
俺は木の影に隠れて小さな小屋の周りに誰もいなことを確認して小屋の扉の前に移動した。
扉に耳をつけて中の様子を確認する。
「だから、それは違うって」
「いんや?俺はこれに掛けるけどな」
二人の男の声がするけど、いびきが聞こえるからもう一人くらいいそうだな。よし。
俺は深く息を吸って吐く。そして頭の中で魔法を構築する。
《睡眠魔法:発動:睡魔の吐息》
俺は扉の隙間に手をかざした。
すると、ふしゅーという音とともに小屋の中に煙が侵入していく。
俺はその煙を吸わないように服で、ふ、服でって!ワイシャツのままだから全然口元抑えられねえ!?
俺は慌ててポケットからハンカチを取り出して口元を抑える。
危ねー。何となくハンカチポケットに突っ込んでてよかった…。
そんな事をしている間に小屋の中からドサドサっと何かが倒れる音がした。部屋の中で煙を吸った奴らが倒れたのだ。
俺はもう一度耳を扉に当てて中の様子を確認する。物音は一切なく静寂が小屋の中を包み込んでいる。よし。全員寝てるな。
俺は扉の鍵穴に二本の棒を突っ込んでガチャガチャと弄る。
よし、これはこうしてここを…。
しばらく弄っているとガチャという音と共に扉が開いた。
よしよし空いたな。ピッキングなんて初めてやったけど上手くいって良かった。これも魔導書のおかげか。
俺はそうっと扉を押して中に入る。
中はごちゃごちゃとしていてらとてつもなく酒臭い。いや、酒だけじゃないな。男子更衣室並みの汗臭さも凄まじい。
いやいや、そんなことはどうでもいいからちゃっちゃと終わらせてソフィアを逆さ吊りにしに行こう。
俺は迷わずに部屋の奥にある暖炉に向かう。そして暖炉の中を覗き込んで、右側にある一つだけボコッと外れているレンガを引っ張って外した。
すると、そこには小さな空間があり、怪しげなレバーが取り付けられていた。俺はそのレバーを慎重に下ろす。
俺がレバーを下ろしきるのと同時にガコッという音と共に、暖炉の右側の床が下りて地下への入り口が出現した。
おお…これが秘密の道か。なんだか秘密を暴いてやったって感じの爽快感がするわ。
俺は少しドキドキしながら地下へと潜り込んだ。
「うわっ、なにこれくっさ!おいおい…こんな事なら魔導書にも書いておけよな。鼻栓は持っていけって」
地下は空気の入れ替えが悪いのか、空気が重たくて息がしづらい。おまけに小屋の中以上に臭いがキツかった。
はあ、この中を進んでいくと考えるとやる気出ねえよ。こんな時はうれしいことを考えよう。
いやーやっぱり魔導書についてだよね。
さっきから言ってるこの魔導書ってのはどうやら黒雹龍の住処に行く際にソフィアが俺を気絶させることにも使ったあの紙のことらしい。
魔導書って言うぐらいなんだからもっとズッシリした辞典みたいなものかと思ってたけど、魔導書は物体に魔法で記録する技術だから辞典みたいにする必要はないらしい。ま、物体に記録するって言っても色々と条件が必要みたいだけどね。
あれには俺をこの世界に連れてきた理由やこの世界のことなんか色々と記されていた。
一度はその情報量に卒倒した俺がなんで魔導書を読めてるのかって言うと黒雹龍の住処でソフィアが俺の脳みその処理能力をアホみたいに増やしたからなんだそうな。
これも魔導書に書いてあったけど多分後付けだろうな。事後報告が多すぎるんだよあいつは…いや、待てよ?事後報告すらされなかったことの方が多くね?てか初じゃね?
…そんなことは考えないでおこう。そんなことよりも、だ。
なんとこの魔導書、魔法の使い方まで書いあるんですよ!そして俺はどうやらソフィアが処理能力を大幅に広げてくれたおかげで無詠唱魔術が使えるらしい。やったね!
俺の今扱える魔法は2種類に分けられる。
一つ目は、その名も睡眠魔法。これは俺が魔王になった際に習得したものらしい。効果はさっき小屋でやったような睡眠作用のある煙を出して相手を眠らせるもの。正直言うと超絶微妙だけど便利だから良しとしよう。
二つ目の魔法は…。
と、そこで俺は後ろの方から足音がすることに気づき、ばっと振り返った。
「おい!てめえここで何してんだ!」
「っ…!」
後ろの方からがっしりとした体格のいい男が二人、こちらに向かって走ってくる。
その手には短剣が握られていた。
初めて体験する本当の命の危機に足がすくみそうになるけど何とか踏ん張る。
大丈夫だ。俺には魔法がある。ちょうど魔法の効果を試したいところだったし、やるか。
深く息を吸って吐く。そして頭の中で魔法を構築する。
《氷魔法:発動:『氷の鉄槌』》
頭の中で魔法が構築されるのと同時に俺の目の前に俺の頭と同じぐらいの氷の拳が現れた。そしてブォンと凄まじい勢いで男立ちに向かって射出された。
「な、お前っ!?ぎゃあっ!!」
「ぐはぁ!?」
男たちは俺が魔法を使ったことに動揺して反応が遅れたのか、避けることも出来ずにみぞおちに氷の拳がくい込んだ。
氷の拳はそれでも勢いを止めることなく後ろの男もろとも後方の壁に吹き飛ばした。
俺は一目散にその場から逃げ出した。
「はぁ、はぁ、こんだけ走れば怪我負ってたら追いかけては来れないだろ…」
念の為後ろをふりかえっても予想通り男たちはおってきてはいなかった。
『助けて!誰か!』
その時、どこからともなく声が聞こえた。頭に直接声が響いてるような奇妙な感覚。前に一度、夢の中で体感したけどあの時と声が違う。じゃあこの声は…。
俺は魔導書に書いてあるルートを辿って目的地まで再び走り出した。
しばらく走ると大きな部屋の前にたどり着いた。この部屋にだけ何故か扉が着いている。
それほど厳重にしておかなければ行けないものがあるのだろう。ま、今の俺にとって扉なんてあってないようなものだけどね。
おれはササッとピッキングで扉を開け…ようとして気がついた。中に人の気配がある。
今回の俺の指示されたターゲットは二匹の双子の黒雹龍の子供だ。人間は含まれていない。そしてここに人間がいるという情報も魔導書には記されていない。もしかしたらあとからここに囚われた人かもしれないしさっき俺が派手にやっちゃったから見張りが着けられているのかもしれない。
どちらにせよ後でソフィアに仕返しできるネタができたな。今までの俺にやってきた暴力理不尽な要求の数々…土下座で謝らせてやるからな!
そうとくればさっさとチビドラ二匹連れて帰るとするか。
俺は扉の隙間に手をかざして魔法を発動させる。
《睡眠魔法:発動:睡魔の吐息》
ふしゅーっと中に煙が充満していく。
「うおっ!?な、なんだこりゃあ!?うっ、か、体に力がはらにゃい…」
…おじさんのにゃん口調は聞きたくなかったな。
ま、そんなことは気にしなければどうってことは無い。俺は意気揚々と扉の鍵を外して中に入った。
中は大量の箱が山積みになっていて、その中には食べ物や武器など色んなものが詰められていた。
「ンゴォ…ンゴォ…へへへ、お嬢ちゃぁん?待ってくれよぅ…」
そして案の定床に大男が大の字になって寝ていた。盛大にいびきをかいてなんかごにょごにょ寝言を言っている。
俺は男を無視して部屋の奥に向かった。
部屋の奥に行くと鉄格子の牢屋みたいなのが三つあり、真ん中の牢屋にだけ何かが閉じ込められていた。
俺は慎重にその牢屋に近づいて中の様子を伺う。
牢屋の中には子猫くらいの大きさの龍が二匹寄り添いあって眠っていた。どうやら霧を吸ってしまったらしい。スヤスヤと寝ている姿はとても可愛らしい。
俺は二匹を起こさないように牢屋の鍵をあけてそっと抱き上げた。シャツごしにも伝わるひんやりとした感触。夏の暑っつい日に枕にしたら快適そうだなーとか考えたりしてない。
ここまであまりにも上手くいってたもんだから余計な事考える余裕が出てきた。
とその時、二匹の龍のうち一匹が目を覚ましてしまった。眠たげな顔を持ち上げて龍は俺を認識すると驚いたように羽をばたつかせて逃れようとする。
「あ、ちょ、ちょっと!?落ち着いて、大丈夫だから!俺は味方、うわぁ!?」
暴れる龍を落ち着かせようと声をかけているともう一匹の龍が俺の腕の中から落ちてしまった。慌てて掴もうとするも時すでに遅し。スヤスヤと眠っていた龍は床に顔からダイブしてしまった。
「キュイキュイィ!!」
「あ、ちょ、ご、ごめんよ!お願いだから泣かないで!」
相当痛かったのか床に落ちた龍はキュイキュイと大きな声で鳴き出してしまった。
まずい。ないとは思うけど、すぐそばで寝てる大男も起きちゃう可能性がある。早く鳴きやんでくれ!!
俺は魔導書に書いてあった技能を読んだおかげで色々できるようになってても、元の身体能力は全く変わってないんだよ!スーパーヒーロー見たく飛ぶことも出来ないから逃げるのに時間がかかってしまう。
俺は半ば無理やり龍を抱き上げて部屋から出__。
「おいおい、どこに行くつもりだ、坊や?」
…ようとして背後からの声にビクッと肩を揺らしながら振り向いた。
そこには先程寝かしたはずの大男が立っていた。
睡眠魔法は魔王の魔法なだけあって上位の魔物ですら半日は起きずに眠り続けるって魔導書に書いてあったはずなのになんで…!?
焦りが顔に出てたのか男が不敵に笑う。
「ふはははっ。黒雹龍が睡眠魔法を扱えるとは驚いたが、上手くいったようだな」
「隊長!」
「お?おう、来たかお前ら。よし、んじゃとっとと終わらせて帰るとするか」
あまりにも丁度よすぎるタイミングで全身鎧に包んだ人間が数人やってきた。
ここまで来れば俺でもわかる。これは罠だったのだ。
どこから俺達の情報が漏れてたのかは分からないが、どうやら待ち伏せをされてまんまとその罠にハマってしまったようだ。
「おい坊主。いや、黒雹龍さんや。諦めてその身諸共俺たちに寄越しな。大人しく捕まってくれりゃあ痛い思いはしなくて済むぞ?」
「い、いや、あのー…俺とこの子達にも人権、いや龍権があるのではないかと思うんですが…」
「何訳わかんねえことぶつくさ言ってんだ!とっとと捕まりやがれ!」
「ひいっ!?」
隊長の合図で鎧に包まれた戦士たちが多種多様な武器を手に一斉に襲いかかってくる。
ちょっと怖くて声が出ちゃったけど焦る必要は無い。俺には魔法がある。すっと神経を集中させて1秒にも満たない間に思考を整理し、魔法を構築する。
《氷魔法:発動:|『氷の守護壁』《アイスプロテクト》
俺を中心にして半径1.5メートルほどの氷の壁が俺たちを包み込んで戦士たちの攻撃から守っ__。
「うおりゃ!!」
「うおい!?あぶねぇ!?」
…ってくれることはなく、戦士の攻撃であっさりと崩れさり氷の壁を破って俺たちに刃が迫る。
俺は慌てて魔法を解除して横に避けた。
「いぎぃっ!!」
だが、龍を二匹抱えていたことで俺の身体能力的にも上手く動くことが出来ず、足に攻撃を受けてしまった。呻き声をあげながらドサッと床に倒れてしまった。幸いと言ってもいいのか、双子の龍は俺の腕の中にいたから大丈夫だった。だけど…。
俺は双子の龍を床に置いて力を振り絞って床に座り込み、そして双子の龍達を背に守るようにして大男たちを睨みつける。足の状態を確認したいところではあるけれど、見たところでできることは無い。
ずんっと音を立てて目の前に隊長格の男が立ち塞がる。
「ふはははっ!哀れなものだな黒雹龍さんよ。なんで自分たち自慢の氷魔法が効力をなさなかったのか、不思議に思ってるんじゃねえのか?」
男は不敵に笑いながら俺の顔を覗き込んでくる。
確かにそうだ。睡眠魔法然り、氷魔法然り、二つとも『魔王の加護』というものが付与されていて通常の魔法では防ぐ手段がない。そのはずなのにこの男たちは防いでみせた。一体どうやって…?
俺が思案していると男は懐から赤黒いまるで血のような色をした宝石を取りだした。
「冥土の土産に教えてやるよ。これは魔王の欠片。八罪魔王の一人、『暴食』の二つ名を持つ魔王ガリュール様が俺たちに分け与えてくれたのさ。これのおかげでお前たちが使う魔法を無効化していたわけだ」
…そういうわけか。この世界の魔法は同じくらいの強さの魔法同士がぶつかり合うとその威力が相殺される。これはこの世界に存在する魔法に言えることで『魔王の加護』も例外じゃない。
でも、『魔王の加護』が消えるだけで魔法は普通に発動されるはずじゃあ…。
そんなことを考えてる時だった。
後ろで控えていた男達の体が消えた。
声を出す暇もなく男たちの体は消え、首だけがぐしゃっと床に落ちていく。
「なっ、何が起こっ__」
それに気づいた隊長格の男が武器を構えようとするも、時すでに遅し。音もなく男の体は消え去り首だけとなって床に落ちた。
「何をしてるの」
あまりの急展開についていけずに呆然としていると、部屋に一人の少女が入ってきた。
「そ、ソフィア…これは、一体…ぐぅっ!?」
俺が今の出来事をソフィアに聞こうとすると、ソフィアはおもむろに足をあげて先程切りつけられて怪我をした足を思いっきり踏みつけてきた。
冷静になりすぎて足の痛みを感じていなかったのにソフィアが踏みつけたせいで一気に痛みがぶり返し、俺は呻き声をあげ、あまりの痛さに、気を失った。
*
稲妻の迸る豪雨の中、猪人族の戦士長は馬を一心不乱に走らせていた。
「化け物め…化け物め…化け物め…」
呪文のように同じ言葉を繰り返しながら先程の惨劇を思い出す。
見えない攻撃に次々と部下たちの体が消えて首だけが地面に落ちていく阿鼻叫喚の地獄絵図。そしてそれを平然と行う小さな少女の姿をした化け物の姿も …。
とその時。視界の悪い中前方に人の影が立っていた。戦士長はそれに気がついたが、恐怖のあまり避けようという考えが浮かばない。
そしてあっという間に人影に近づいていき…。
「おい」
「っ!?!?」
人影が見えなくなった瞬間、横から気配もなく声が聞こえ戦士長は驚きのあまり落馬してしまった。
「ぐっ、ううっ…き、貴様は…」
戦士長の前にはガリガリの男が立っていた。そしてその男に戦士長は見覚えがあった。だが、その男は戦士長が今一番であってはいけない者だった。
「ひっ!!お、おまえ、ぐっ!?」
戦士長がその男の名前を呼ぼうとすると男はがっと戦士長の首を掴んで軽々と持ち上げる。
「お前、自分が今どんな立場に立たされてるのか分かってるのか?猪人族の恥晒しがよぉ」
「ま、待ってくれ!違うんだ!私は…っ!?」
戦士長は必死に弁明しようと口を開いたその時、背後からずんっという地響きを鳴らしながら何かが近づいてくることに気がついた。
戦士長は先程よりも恐怖に顔を歪ませながら、何とか後ろを見た。そこには大口を開けてこちらに迫ってくる最恐の魔王の顔が__。
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