観了記録12「トラペジウム」

 前から気になっていたトラを見てきた。アイドルに憧れた、というよりも憑かれたような少女の話だった。

 どうしてもアイドルになりたいがために住んでいる地域の東西南北から美少女を集めて、という絵を描く。そしてうまいことメディアに載って、というサクセスストーリーを思い描き、多少の紆余や曲折はありつつも実際にうまく運ぶ姿は時折狂気を滲ませていたものの、素直に凄いと思いながら見ていた。
 事前のPVとかではアイドルを目指す物語だと読めたのでそこに対する谷があるのかと思ったら、何のことは無い。特に大きな問題もないままあっさりとアイドルになってしまう。いや、正確にはアイドルになるルートに乗った、かもしれないが。
正直、あなたの高校には「南」が入っているから南ちゃんって呼んでいい?とか言い始めた時には本当に怖いという感情しかなかった。

 だがアイドルとしてやっていくのなら、なるまでよりもなった後のほうが時間は長いだろう。それもあってアイドルになれた後のことまで入っていたのかもしれない。
「西」がもうアイドルをやりたくないと大暴れしたときの眼とそれを見つめる「東」の眼は一番いい顔をしていた。あれだけで観る価値がある。

 広告の時点ではアイドルを目指すひたむきな女の子ということにしか触れていないし、前半の順調っぷりから後半の妙なリアルさを持った失敗や崩壊は温度差があって評価がぶれるのも納得ではある。
個人的にはあれだけの崩壊をしておきながら数か月後にあなたに会えたのは良かったことだよと笑顔で語っている「西」はよくわからなかった。トラウマの元凶になりかねないと思うのだが・・・。

 パンフレットに書いてある「夢に取り憑かれた少女」という言葉が「東」の作中の乱心と錯乱の全ての説明になる。映画を見終えた後は想像と違う味がした気分だったが取り憑かれた、という言葉で腑に落ちた。

 原作の高山という氏も乃木坂も全く知らないが、夢に取り憑かれたのは作者だったのか、それとも近くにいたのだろうか。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?