読了記録04「グロテスク」桐野夏生

 グロテスクを読んだ。なんか、すごかった。そこかしこに出てくる人も世界もなにもかもが確かにグロテスクだった。読んだ後の解放感というか達成感がかなり大きい。それなりに読んでいて消耗する作品だったと思う。別に女子高出身ではないし、知っている限り身近に近い境遇を持っている人間もいない。それでも読んでいて疲れる作品だった。

 全編を通して語っているのが「私」というのもあるのかと思う。話が進むほどに言葉の信頼性が失われていく。下巻に入るころには全てが胡散臭く、妹すら本当に存在するかどうかすら怪しい、なんて考えながら読んでいた。最初の善良な被害者らしさはどんどんと鳴りを潜め、最終的には嫉妬に狂った哀れな被害者気取りに堕す。

 サイコホラーじみているが抉るような表現がすごかった。金字塔と書かれるだけはある。

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