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赤、停止信号

鬱を拗らせてる今、何もやる気が出ない。
いつもどこか体調が悪くてグラグラする。

「気持ち悪い」と言う回数が多くなった。体内の変化も、自分も、他人も、世の中の理も気持ち悪い。

右耳のヘッドホンから「無印よ、お前に価値はあるのか?」って歌詞が流れる。私に向かって歌っている訳ではないのに、その言葉の羅列に深く傷つく。価値なんてないよ。ヒロくんは価値の意味を、誰に教えて貰えたの。


学校に行くため、家に帰るため。吐きそうで、今にも泣き出しそうな嗚咽を必死に飲み込みながら歩いている。

大好きだったバイトは、昨日まで笑顔を振りまいていたのに、当日になって突然行けなくなった末に退職した。

辞めると決めた時、上司の人に慰められながらボロボロと泣いた。泣くことしか出来なかった。
子供の頃から大好きだったのに、そこで働くのが夢だったのに、結局頑張りきれなかった。体が急に動かなくなってしまった。

心は働きたいと叫んでいるのに、体が上手く動かない。外に出るのが怖い、人の目を見るのが怖い。好きなことすら長く続かない、価値なんてやっぱりない。


頭にモヤがかかっているようだ。水を飲むように同じ曲を繰り返し聞き、今後の人生どうしようと漠然とした不安を持て余している。

美味しいとか、楽しいとか、美しいとか、嬉しいとか。そういうキラキラした人生を彩る大事な感覚が日々薄れて麻痺していくようだ。実際、「美味しい」が分からなくなってきた。活動するために胃に食べ物を流し込んでいる。

それでも今日はマツキヨで冷えたキレートレモンとむぎ茶を買った。それは美味しかった。



最近は悪夢ばかり見てしまう。

バイトを1つ辞めたことで、1日10数時間働いていた日々から開放された。体力が有り余っているせいか、全く寝付けなくなった。それても日中運動する気には到底なれない。

眠る時間が遅くなって、起きる時間も遅くなり、寝ても寝ても疲れが取れないのに嫌な夢ばかり見る。


9月18日、今日は久しぶりに泣き叫んで起きた。夢の内容もハッキリと覚えている。バイト先で後輩のミスをフォローしたら、いつの間にか自分のせいになっていて、誰も手伝ってくれず、膨大な量をこなしながら、周りの人に自分の悪口を延々と言われる夢だった。

夢と現実が混同したような感覚だった。段々息が浅くなってきて過呼吸になって、あれ、やばい、声出ない、どうしよう、誰か助けて、

喉が絞まるような感覚がして目が覚めた。先に起きていた恋人が「どうしたの?大丈夫?」と背中をさすってくれた。よく分からなかった。怖かった。自分の声を取り戻すように嗚咽を吐きながら泣いた。時刻は午前8時半頃で、私は6時間ぐらいしか寝てないことに気づいた。

夢の内容を恋人に教えたら「明らかに不安が夢に出てきてるね、今はゆっくり休んでいいんだよ」とそっと抱きしめてくれた。

将来、不安だ。不安しかない。私はこれからどうやって生きていくんだろう、お金がないのに腹は減る、欲も湧く、でも労働は嫌、外が怖い。

呼吸が落ち着いたら、疲れてまた眠ってしまった。寝るだけでこんなに体力を使うなんて何の為の睡眠だろう。
でもその後も別の悪夢を見て飛び起きた。街を歩いていたら、周りのビルが次々に爆発する夢だった。落ちてくる赤い破片と人の波をすり抜けながら、夢の中の私は轟音と悲鳴を浴びて走り続けていた。

目が覚めると、今度は息切れと動悸が激しくてベッドの上で必死に恋人を呼んだ。まだ家の中にいてくれたことに安心してまた泣いた。時刻は午前11時過ぎ。なにしてんだろ、最初に起きた時刻から2時間と少し。夢のせいでちっとも眠れた気がしない。


今日は18時から都内でのバイト。台風だからか、東西線がお亡くなりになっていたので電車を遠回りして5分遅刻。店長に白い目で見られる。電話入れたのに、台風の中頑張って来たのに、はぁ。

脳死状態で手と口をマニュアル通りに動かす。これが麻痺してしまったら、私はいよいよ社会復帰が出来なくなる。これはリハビリだ。私が人様の前で活気のある声と、可愛い笑顔で仕事を遂行出来るようになる為のリハビリだ。


バイト先で廃棄になる寸前の食材を何個か買った。廃棄量が多い私の店舗は、消費期限の切れるものを閉店間際に下げていく。私はそれが大嫌いだ。おにぎりやお弁当などをビニール袋にギュウギュウに詰めていく作業は、1年以上働いてる今でも鬱になる。

だからせめてもの償いのように何個か買ってあげたりする。ほんの少しでも救われる食材が多い方がいい。だって食べてもらう為に作られたのだから。偽善だけれど、多少は心が軽くなる。


23時30分。閉店作業を終えて丸ノ内線のホームに佇む。東西線は私が脳死状態の合間に復旧作業を終えたようだ。電車を待ちながら、さっき買ったおにぎりを食べる。行儀が悪いとは分かっているが、家に帰ってから椅子に座って食べるのが苦痛だ。家に帰った途端、何もしたくなくなる。意欲も、食欲も、睡眠欲も消えてしまう。

最終アナウンスが流れて電車がホームに入ってくる。私は丸ノ内線の車両が好きだ。赤くて可愛い。パッと目を引く魅力的な色。いつもドキドキする、椎名ちゃんみたいで。

せっかくだから丸ノ内線サディスティックを聴きながら帰る。今日は寝れるかな。血がドクドク流れている。私の中にも赤が通っている。


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