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ごめんなさい

恋人に八つ当たりしてしまいました。


本当に心から大好きで大事な存在なのに、もう傷つけないと誓ったのに、なんでこんなことしてんだろう。

恋人に会えなくてバイトばかりしていたこの一ヶ月程、noteを書くことすら嫌で、職場の人以外とは誰とも会わずに、画面の中で踊るアイドルをぼんやりとした目で眺めていました。

毎日が辛くて生きていることが悲しくて、noteの下書きに誰にも見せられないような陰湿で暗い文章を書き溜めていました。


サムネの写真は彼からホワイトデーのお返しに貰った、私が大好きなプリンと推してるキャラのぬいを一緒に撮ったもの。

「会いたかった」と私をきつく抱きしめる腕の中で、これ以上の幸福なんてどこにもないと本気で信じていた。

2泊して寝て食べて遊んで絡まって。互いの体の境界がなくなるくらい頬を寄せ合って笑っていました。
「ずっとこうだったらいいのにね」
吐息がかかる距離で彼が言う。嬉しくて私はまた夢見てしまう。

そうだったらいいのに。


家に帰りたくないと泣き喚いて、最終的には八つ当たりして酷いこともしました。
子供じみた理由だと笑ってください。
でも私にとっては深刻で辛い現実です。


理由は長くなるのでここでは書きませんが、必死の思いで救急車を呼んでも助からない命がある現実が、どこか自分のようだと思いました。

「きっといつか救われるから、今は我慢する時だよ」
何も知らない大人たちが、のんびりとした口調で私を慰めてきます。


でも、それじゃ意味がないのです。

待ってる間に心臓が止まってしまう。助かる可能性は時間が経つ度にどんどん低くなる。私にとってはそれほど緊急なことで、迅速に対応して貰わないと困ることです。

私は骨の髄まで卑屈な人間なので、この先の未来で今より現実が少し良くなって生きやすくなったとしても、今時点の状況を一生恨むと思います。

本当に困った時ほど、誰も助けてくれない。

学校を途中で辞めた時も、就職して鬱になりかけた時も、今も、頼れる人すらいなかった。

ちゃんと助けてくれたのは、この苗字の由来になった「はんぞうくん」だけ。


結局、人は誰といたってひとりなんです。
血を分けようが、愛し合っていようが、他人ということは変わらないのですから。

この仮説を否定出来たら、きっと人に恵まれた幸せ者だと勝手に解釈してるんですけど、そういうくだらない抵抗もやめた方がいいのでしょうね。

それでも恋人にこんなにも愛されていて幸せだっていうことは自覚してます。

でも幸せだけじゃ、とても食べていけないですよね。
お金があれば。家と仕事と恋人がいてくれれば、私は心から幸せになれるはずです。

他の誰かがいなくなっても構わない。恋人さえ隣にいてくれれば、明日死んでも構わない。いつまで経っても私を邪魔者扱いする両親なんか、私の人生に必要ない。


恋人との関係を夜の仕事でお世話になったお客さんに相談した時、彼に言われた事が凄く頭に残っています。

「なぁ、お前らそんなに想い合って強く結びついているのに、どうして結婚しないんだ?」
「……お金がないから」

「はっ!?えっ!?ダッサ、お金がないから結婚しないとか理由になんねぇだろ。
俺は結婚したかったやつと気持ちとタイミングがズレて出来なかった。そんなのどうしようもないよな?人の気持ちは変えられねぇんだ。
でもお前らは十分な気持ちがあるんだから、足りない部分が努力で補えることなら死ぬ気でやれよ。それでも出来なかった時に諦めたらいいさ」

そしたら俺が拾ってやるから。というのは聞かなかったことにしたけど。でもグサグサと突き刺さる言葉だった。

私、努力が足りないんだ。
学費と生活費を自分で払うために、夜働いてそのまま朝も働いて、夕方に起きて学校行って夜働いて…を繰り返してたら倒れて入院とかしちゃったけど。それでも努力が足りないんだ。


本当にそうなのかな。

本当に私の努力が足りないのかな。

愛し合って結婚した人たちは、私が想像出来ないほどの苦労をして、それを補う努力をしたのかな。

それだったら納得出来るのに、他人の苦労が上手く隠されている世界では、どうも自分だけ頑張っているように見えてとても孤独だ。

なんてことをグルグル頭の中で考えて、帰ろうとした玄関で座り込んで泣いてお互いに「ごめん」しか言えない思考回路で、甘かった2日間の最後を私の言動のせいで全て台無しにしてしまった。


「どんな貴方でもずっと愛してるよ。一緒に幸せになろうね」 

耳元で必死そうに伝えてくる恋人の声で、遠のいていた意識が戻る。

ありがとう、こんな私でごめんね。
一緒に幸せになろうね。もっと頑張るから。




舞浜に帰るための貯金に回します