舞台「BASARA」~奇跡のような座組が届ける圧倒的な熱について

1/13~23まで新宿シアターサンモールにて上演された舞台「BASARA」。
先日観劇し、あまりにも素晴らしかったので大興奮して感想を書いた。


16日にあったライブ配信の前にどうしても誰かに読んでいただきたく、勢いのままの文章で、キャストさんについての感想もあとで追記します!と書いてそのまま上げてしまったのだが(すみません)改めて、先の記事で書ききれなかったたくさんの素晴らしかったところについて書き足してゆきたい。

舞台「BASARA」、大千秋楽おめでとうございます。本当に、本当に素晴らしい舞台でした……!

(※いつものごとくネタバレをしています)


【はじめに・アクシデントについて、そして座組の奇跡について】

まずはじめに、更紗役・田中珠里さんの負傷に心よりお見舞い申し上げます。順調に回復なさっていると伺いほっとしていますが、どうかお大事に。くれぐれもご無理はなさいませんように。
更紗ちゃんにおかえりなさいが言えてよかった。無事の公演再開、本当によかったです。


本来ならば不慮のアクシデントについて殊更に語るべきではないのかもしれないが、あえて記すことをどうか許してほしい。
なぜなら、この予期せぬ事態に接した座組の奮闘が、一丸となった結束力が、未来永劫たたえられるべき輝きを放っていたからだ。

一部公演休止をはさんだ再開後の公演はいくつかの演出が変わっていたのだけど、それが全く違和感なく自然で、クオリティを損なわないどころかむしろ進化していたのに驚いた。すごい。演出の久保田さんは天才だ。
そして22日・23日の公演は、千手姫役をされていた田中美麗さんが一部更紗役を兼ね、Wキャストとなって繋いでいかれた。
再び幕を開けるまでにどれほどのご苦労があったことだろう。休演の数日の間にこれだけの変更と調整を行った演出の久保田さんはじめスタッフの皆様、短い準備期間でそれらに見事に対応したキャストの皆様。とくに急遽の登板となった田中美麗さん、タタラ役として新しい殺陣を完璧にこなされた山下凌さんに心からの拍手を贈りたい。

公演を走りきるという意志の強さと、座組の絆の強さにひたすらに胸をうたれた。どんなアクシデントがあっても互いに支え合って立ち向かうのだというパワーに心揺さぶられて、圧倒された。
それだけではない。ふたたび幕が上がったあと、千秋楽まで更にどんどん座組がパワーアップしてゆくのが肌でわかった。「舞台は生き物だ」とよく言われるけれども、今回ほどそれを実感したことはない。躍動するキャスト皆さんのうねるような熱が高まって高まって、頂点に達した楽日の公演は圧巻だった。

劇中で朱理が言う。「考えるべきはするかしないかじゃない。すると決めたことをいかにして為すか、それのみだ」
更紗が言う。「迷うな。負けるな。最善を尽くせ」

まるでBASARAそのもののような座組だと思った。

幕を開けてくださってありがとう。この素晴らしい作品を、わたしたち観客に常に真摯に届けてくれてありがとう。届け続けることを選んでくださってありがとう。
全員が揃った千秋楽を見届けることができてとても嬉しかった。最善を尽くし、一丸となって進んでいったこの座組に、心からの敬意と賛辞と、精一杯のエールを。


【脚本脚色の見事さ】

舞台を観てから改めて原作を読み返してみたら、舞台の脚本が本当に丁寧に練られていることを実感した。
特にそれを感じたのは、冒頭の白虎の村襲撃~白虎の刀奪還までの一連のシーンだ。登場人物が整理され、一部シーンは省略されていながら、セリフ自体はほぼ原作そのままなのだ。細かく細かくシーンをピックアップして入れ替えて、物語自体の勢いはそのまま舞台として矛盾のないように成り立たせている。とても緻密な構成だった。
状況説明のセリフの的確なタイミングと短さが素晴らしい。言葉ひとつひとつが研ぎ澄まされていてすごく好き。

そして色々なところで既に指摘されているとは思うが、まず最初のシーンを『あの場面』から始めたことにとても感動した。溢れる原作愛と、最後まで完走したいという意気込みの両方が伝わってくる、これ以上ない幕開けだった。原作ファンとしても、とても嬉しい。

【緩急のよさ】

緩急のリズムがすごく良かった……!
緊迫した戦闘シーンはド迫力で、劇場があまり広くないことも相まって体にビリビリと伝わる緊張感に震えた。かと思えば、更紗と朱理のシーンや四道と千手姫のシーンなど、しっとりしたシーンはじっくりと見せてくれる。そのメリハリの良さがとても印象に残った。話の見せ方、進め方がすごくお上手。
BASARAの物語は基本的にシリアスに進む。その中で、清涼剤のように差し挟まれるアドリブの笑いも丁度よかった。随所にみえる遊び心ににっこりしてしまう(千秋楽に演出家がさりげなくアンサンブルとして混じっていたのには笑ってしまった。最高ですね)

【音楽について】

前の記事でも少し触れたが、音楽の使い方が本当に好みだった。
欲しい時に欲しいタイミングで音楽がぴたっとかかるからすごく心地よい。盛り上がるべきところできちんと盛り上がるのが最高にアガった。
プランクトンさんの手がける主題歌がまた素晴らしく格好良い!その格好良い曲をバックにしたオープニング、キャスト陣の動きも音ハメ完璧に合わせていて大好き。ただの自己紹介殺陣ではなく、ちゃんと互いの関係性がみえるOPになっているのがまた良いのだ…!おかげで主題歌を聞くだけでOPが脳裏に浮かび、挿入歌「ao」を聞くと反射で涙が出てくるような体になってしまった。大好き。

【アンサンブルキャストさんについて】

メインキャスト以外のアンサンブル(サブキャスト)さんについて、一点こだわりを感じたので書いておく。
開幕前に公開されたビジュアル解禁記事でも、パンフレットでも、サブキャストの方々にも全員に役名がついていた(本当はもっとたくさんの役を兼ねていらっしゃるのだけど)。他の舞台ではアンサンブルさんはお名前のみを記されていることが多くて、こういうのは実はあまりないことだと思う。
全てのキャストが同等にメインなんだ!という、確固たる信念を感じた気がした。勝手な推測ではあるが、ずっと演者として板の上に立ってきた久保田さんだからこそのこだわりなのかもしれない。そういうところが好ましいな、と思っている。

わたしとしては、紋白役の櫻井結衣さんのしなやかなダンスと、月城役・山本佳志さんの赤の軍での堂々とした振る舞いに特に魅力を感じているところ。


【キャスト皆様の熱演】

皆様、凄い。圧倒された。
お姿の再現度の高さもさることながら、佇まい、声、どれをとっても漫画から抜け出してきたよう。キャスティングが最高すぎる。
そして上にも書いたが、全員の熱量と気迫が半端ない。真正面からぶつかってくる圧倒的な熱を、劇場で直接受けることができて本当に良かった。これぞ舞台、これぞ演劇、という熱をおびた空間にいられたことが幸せだった。

・更紗(田中珠里さん)
こんなに更紗な方が現実にいらっしゃるのか!というレベルで更紗だった。特にお声が本当に素敵で、イメージぴったりの少年ぽいハスキーな響きが大好き。周りを制する気迫を放つタタラの部分と、年相応の可愛らしい女の子である更紗の部分、どちらも素晴らしく、格好良くて可愛くて いっぺんに大好きになってしまった。
今回、予期せぬアクシデントで誰よりも大変だったはずと思うのだけど、休演明けの公演でも強い目の輝きは変わらず、そこにはひたむきに戦う更紗がいた。
いつも一生懸命で、まっすぐで、表情豊かで、誰もが応援したくなる女の子……そんな更紗を見事に体現されていた珠里さん。珠里さんが更紗を演じてくださってよかったと、心から思う。叶うなら、これからもっともっと珠里さんの更紗を見てゆきたい。

・更紗(Wキャスト:田中美麗さん)
急遽のご登板、本当にお疲れさまでした。素晴らしかった!
この短い中で、そしてたくさんのプレッシャーを感じていらっしゃるだろう中で見事に更紗を演じきっておられた。しかも22日から23日にかけてで更に進化してクオリティを上げてこられていて、震えるほど感動した。
可憐で可愛らしく、恋する女の子の部分がよく見える更紗。凜々しい立ち姿が本当に本当に素敵だった。笑顔と涙で駆け抜けていった美麗さんの更紗をずっと忘れない。

・朱理(宇野結也さん)
『赤の王』と『朱理』のギャップが最高!赤の王としての激しい姿と、朱理としての男の子な部分が両方ともとても魅力的で、それでいて二面性が違和感なく同居しているのがすごい。
とくに赤の王の時の苛烈で冷徹な姿がめちゃくちゃに格好良かった。鋭い目力に圧倒され、びりびりと響く大音声は気迫たっぷりで、思わずひれ伏したくなるような威厳に満ちていた。紅丸のくだりなどもう、圧巻……!この人についていきたい、と思わせる堂々たる王だった。
宇野くん、テニミュのころから拝見しているのだけど、ほんとうにお芝居も殺陣も上手くなられた…。更紗ちゃんを頼もしく支えているのも印象に残った。思わずしみじみしてしまうほどの素晴らしい演技をありがとう!

・ハヤト(野口準さん)
エーステ(MANKAI STAGE 『A3!!!』)で一度拝見して以来、二度目ましての野口くん。こんなに動ける方だとは知らなくて、軽々としたアクションに何度も目を奪われた。
ハヤトの明るさは舞台全体を照らす。アドリブも全部可愛らしくてとても良かった。これからのハヤトの活躍をもっと見たい、そう思わせてくれる人。

・ナギ(岩永徹也さん)
まずビジュアルが完璧!長い銀髪と白い装束がおそろしく似合っていて、神秘的な佇まいがナギそのものだった。キャスト発表の時点で合いそうだなとは思っていたのだが、漫画から抜け出してきたかのようなお姿にびっくりした。
そして何より語り口が素晴らしい。たぶんご本人のお人柄や知識の深さとも相まって、更紗を導く数々の言葉に胸に落ちる説得力があった。

・千手姫(Wキャスト:田中美麗さん、上西恵さん)
どちらもたおやかでとびきり綺麗で、芯の強さの見える最高の姫だった!
田中美麗さんの千手はよりしとやかで、所作が見とれるほど美しく、貴族の姫たる育ちの良さが全面に出ているお姫様だった。だからこそ、終盤の激情がきわだって胸を打つ。
上西恵さんの千手は内に秘めた激しさがより感じられた。四道を一途に案ずる思いが溢れていて、感情の動きに毎回心揺さぶられていた。お声の響きが愛らしくてすごく好き。

・茶々(Wキャスト:原あや香さん、相沢菜々子さん)
原あや香さんの茶々は原作ぴったりの美しさ!はじめに出てきたとき、口を開けて見とれてしまったのをよく覚えている。完璧なプロポーションももちろんのことながら、姿勢がめちゃくちゃ綺麗でいつどの瞬間でも絵になるのだ。
相沢さんの茶々は、可愛らしい容姿とそこから出てくる腹の据わったセリフ回しのギャップに痺れた。ドスのきいた啖呵が茶々そのものですごくカッコいい!殺陣のしなやかさもとても素敵だった。

・座木(Wキャスト:熊沢学さん、北村海さん)
茶々・座木の海賊コンビ大好き!
座木さんはお二方ともものすごく格好良かった…!今回の舞台で改めて座木の良さを知り、座木が大好きになった。
熊沢さんの座木はスマートな格好良さが魅力で、口数の少ない中にも茶々を思う気持ちが深く伝わってきた。北村さんの座木はたくましく武骨な格好良さがあり、何より殺陣がものすごく上手い…!とても頼もしくてこちらが惚れそうになった。
「俺は茶々のものだが、茶々は俺のものじゃない」のくだり、座木さんのシーンの中でもトップクラスに好きなセリフだったので、やってくれて嬉しかったな…。

・角じい(ナカヤマムブさん)
角じいが出てくるといつも安心する。安定感と信頼感が半端ない。
殺陣もアドリブも毎回素敵で、角じいが更紗のもとに駆けつけるたびほっと息をつく自分がいた。網走編での活躍を今からとても楽しみにしています。

・鏵山将軍(阿見201さん)
圧倒的な存在感と説得力のある強さ。とくに冒頭の白虎の村襲撃の場面は本当に凄くて、客席のこちらまでも背筋が震えるような迫力があった。
けれど、強さだけではなく、素朴で不器用な面も描いてくださったのがとても嬉しかった。千草との場面がとても好き。

将軍に限らず、この作品はどのキャラクターも観ているうちに愛おしくなり感情移入できてしまうのが本当に素敵だと思う。キャラクター全員が血の通った魅力をそなえている。そしてキャスト全員が、彼らをちゃんと血の通った人間として演じておられた。

・亜相(赤塚篤紀さん)
亜相、どうやって漫画の中から連れ出してきたんですか? と思わず聞きそうになってしまうくらい、ほんとうに亜相。
ビジュアル公開されたときもあまりの再現度にひっくり返ったが、動く姿も完璧に亜相でただただ感嘆するしかない。すごい。鏵山将軍との凸凹コンビっぷりが素晴らしい。

・四道(細貝圭さん)
圧巻の素晴らしさだった…!今まで見た中で一番格好良い細貝さんだったかもしれない、というくらいに格好良かった。最高の四道を魅せていただいた…。
優しいお兄さんな部分と、容赦のない武人の部分。どちらも「仏の四道」そのもので、そこから徐々に追いつめられていく様が本当に見事だった。クライマックスの熱演を、どうか一人でも多くの方に見てほしい。
殺陣も格好良くて最高だった!キレと重みののった剣さばきが流石で、殺陣は久しぶりだったというのを後で知ってびっくりした。

生身のキャストが演じることで、キャラクターの魅力がよりくっきりする、ということがたまにある。今回の細貝さんの四道はわたしにとってまさにそれで、四道がより愛おしく哀しく思えたし、ただでさえ序盤屈指の名場面であるクライマックスがより胸に迫った。座組を名実ともに引っ張る熱演に感謝したい。

・揚羽(Wキャスト:瀬戸祐介さん)
瀬戸くんの揚羽、すごくすごくカッコ良かった…!
瀬戸くんを斬バサ(斬劇「戦国BASARA」)以来久しぶりに拝見したのだが、出てきた瞬間に場の空気を変える力をお持ちなんだな、この方は…と実感した。
侠客を思わせるような飄々とした軽やかさ。身のこなしは鋭く、殺陣のキレは抜群。帰蝶さんの華やかさは流石の似合いっぷりで溜息が出た。これはどちらの揚羽にも共通することなのだが、最初一本の刀からはじまって途中でいつのまにか二刀になっている殺陣がすごく好き。

美しい揚羽だった。つむじ風のような揚羽だった。
四道の最期に見せたひらめくような怒りと悲しみが、ずっと心に残っている。

・揚羽(Wキャスト:久保田悠来さん)
久保田さんの揚羽については、ちょっと分量を割いて語らせてほしい……なにしろ推しなもので。多分に贔屓が入っていることはわかっているけれど、贔屓目抜きにしても最高に素晴らしかった。

だって久保田さんの揚羽は、ずっと生で観たいと切望していたもののひとつだった。2012年の初演をDVDで見て以来、今の久保田さんの演じる揚羽を見てみたいと、何度夢みていたことか。まさかこんなふうに夢が叶うなんて思わなかった……本当に、生きていた甲斐があった。
9年前の初演の揚羽ももちろんとっても素敵だったが、そのころから段違いに深みを増した極上の揚羽を魅せていただいた。今この時に揚羽を演じてくださって、本当にありがとうございます。オファーを出してくださった原作者の田村由美先生には足を向けて寝られない。

わたしは久保田さんの、喜怒哀楽の枠におさまりきらない複雑な感情のひだを、まなざしひとつ、指先ひとつで伝えきる演技がとても好きなのだけど、今回それを本当に堪能させていただいた。
四道を見る目にこもる情念。哀しみと憐れみと未練と愛憎が分かちがたく入り混じった瞳がたまらなかった。四道の最期を見送るシーンはもう、圧倒的で。伝わってくる感情の深さに溺れてしまいそうだった。
そしてアクション!ダイナミックで大胆なのにしなやかで、大きくひるがえる青い衣がまさに蝶の舞うようで。風が吹き荒れるような殺陣だった。四道と対決する場面の速さといったら、何度見ても目が追いつかないくらい。

帰蝶さんの姿がまた本当に素晴らしく、あの素晴らしさをあらわす言葉をわたしはまだ見つけることができない。
男性的でありながら妖艶。指先から唇からあふれ出る艶と色気。あれを見られただけでチケット10枚ぶんくらいの価値があると思った。

それからどうしても書いておきたい、四道最期のイメージシーンのこと。
姿が変わったわけではないのに、膝を抱えてうずくまった瞬間、そこに傷ついた少年がみえて心臓をわしづかみにされた。アロにすがる姿は16才のあの揚羽そのもので、思わず溢れる涙を抑えきれなかった。
あそこに外伝のワンシーンを持ってきてくださったこと、原作揚羽のファンとしても感謝しかない。最高の演出で、最高の演技だった。


初演出に挑んだこの舞台を、久保田さんは「始発列車」と称された。
久保田さんがこれまで積み重ねてこられた経験と信頼を積んで出発した始発列車。その記念すべき最初の列車に乗せていただけて、こんなにも素晴らしい景色を見せていただけたこと、一ファンとしてとても幸せに思う。
これから久保田さんが舵をとる列車はどんな風景を進んでゆくのだろう。その行く先に思いをはせて、心の底からわくわくしている。


***

大千秋楽のライブ配信は30日まで1週間のアーカイブ配信付きです。今からでも買って観られます。ぜひ観てください!
というか、推しの作り上げた素晴らしい舞台を 頼む見てくれ…!の気持ち!笑

***

ラストシーン。真ん中に立つ更紗の後ろ姿が目に入った瞬間、原作1巻の表紙が脳裏に蘇って息をのんだ。背をまっすぐに伸ばして立つ珠里さんの姿は更紗そのもので、見据える先にはるかな砂漠が広がってみえた。

これは歴史の、――はじまりの物語。

大千秋楽、本当におめでとうございます。
どうかこの座組で、はじまったばかりのこの壮大なる歴史ロマンの物語を、最後まで観せていただけますように。

更紗の旅路を見届けてゆきたい。そう、切に願う。

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