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【story】LINE LOVE STORY-5

最初は同じ職場だったし、業務的なことで密に連絡を取っていたからこっちも気を遣ってすぐ返信するようにしていた。
先輩はものすごくマメで、LINEのメッセージも細かい。更に長文。
これが彼女だったらちょっとウザいかな。
先輩は2年後に別の部署に異動した。
けど、業務は絡むので何かと連絡を取り合っていた。
と言っても、僕から送るのは数えるぐらいで。大半は先輩からの質問に答えるという流れだ。
最初の頃は雑談やお互い気を遣うメッセージも送っていたけど、お互い多忙になってそれも省略と言うか…いや、僕がまったく余裕が無くなったのでLINEも結構雑になった。
先輩とも長い付き合いだし、僕が元々メール無精なのは解っているはず。
先輩も「既読スルーでいいよ」というメッセージを最後に追加していたし。

まあ、結論を言えば『僕は先輩に甘えている』のだ。

今の仕事も4年目を迎え、先輩の後を引き継いでチーフとなって2年目となった。
心配性の先輩も、そこまで連絡をマメにくれなくなったが、職場メールをつかって重要な情報を流してくれた。正直助かる。しかも返信不要。
気を遣わない関係って距離感もちょうどいい。
LINEが無い時は、先輩も忙しいのだろうと思って特に気にしていなかった。
それでも、先輩は何かしらLINEを週1ペースで送ってきていた。

今日、先輩からLINEが来なくなって1ヶ月経った。

5月に先輩が仕事のことで聞きたいことがあるからと、僕のところに寄ると言っていたが、僕が丁重に断ってしまった。
急な仕事が入ったのもあったが、その前に先輩から厳しい指摘があって、それに対して落ち込んでいて、先輩に『会いたくない』という気持ちが強く、思わず同僚のせいにしてしまった。すまない、後輩。
「田部さんが、先輩に指摘されて落ち込んでいるから、しばらく顔出さない方がいいと思いますよ。」
「…それって、私が悪いのかなあ。本来はチーフである板橋くんの役割じゃないのかな。」
確かに、田部さんは僕に事前に相談してきた。それをちゃんと話を聞きもせず了承してしまい、結果的に他部署に忙しいところ迷惑を掛けてしまった。
それを「対応が違う」と指摘してくれたのは、先輩だった。

それ以来、先輩から電話してくることは無くなった。
情報提供のメールは来るけれど、LINEもたまに。
たまに来るLINEも特段返信する内容ではなかったので、既読したままだった。最後のLINEは

『明日、誕生日おめでとうございます。』

その前に、先輩から誕生日プレゼントをもらった。毎年貰っているのが本当は申し訳ない。けど、申し訳ないと言えず、LINEで「ありがとうございます。」とただメッセージ送るだけ。先輩は素っ気ないなと思っていることだろう。
その間に、先輩も誕生日を迎えた。
僕は『誕生日おめでとうございます。』とメッセージすることが出来なかった。出来なかったというか、忙しさで忘れていた。

先輩、僕自分からLINEするとしたら何てメッセージを送ればいいか解らないんですよ。
『元気ですか?』なんて今更。
『ひとつ聞きたいことがあります。』いや、本当はいろいろまだ聞きたいことがあるけど…長文はめんどくさい。
『仕事どうですか?』いやいや、先輩の仕事はすごく大変なことを知ってる。
『怪我は大丈夫ですか?』いやいや、メッセージは先日まで先輩からも送られてきたし何を今更。

このまま先輩とLINEが途絶えてしまうのかな。
LINEを気にしなくていいなら、それはそれでいいはずなのに
つい、LINEの通知を確認してしまう僕がいる。

LINEの通知が鳴った。
先輩からだ。
とりあえず既読する。
疑問形で来ていたら返事は後にしよう。
あれ…
先輩からのLINE。質問だけどいつもの長文じゃなくなった。
先輩、そんな素っ気ないメッセージ送ってきたことなかったのに。

先輩も、いろいろ学んだのか。逆に先輩の素が出ているのか。
『僕』の気まぐれに『先輩』が戦いを挑んでいるのか。
動揺続ける僕は、先輩からの素っ気ない質問に、素っ気ない回答をした。

『了解です。ありがとう。』

この後、LINEは続かなかった。
ああ、僕は先輩のLINEに翻弄されている気がする。どうしたらいいんだと焦っている僕はこのまま夜を迎える。

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