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好きなもの

クリームソーダの氷との接地面のシャクシャクした食感。
お粥とか豆腐干糸とか、なんでもない味のもの。
火傷しないギリギリの熱い食べ物がのどを通ったときの、のどを熱いものが通ってる感覚。
村上春樹の主人公が、どこかへ行くときの準備期間が結構差し迫った状況でもゆったり充実しているところ。
先斗町と書いて、ぽんとちょうと読むこと。
生姜焼きの付け合わせの千切りキャベツ。
‪本物の油淋鶏を作るのにめっちゃ時間がかかるって話と、本場のカルボナーラは日本のと結構違うって話。
夜の高速バスで渋谷か新宿の中心部に入る瞬間。特に西新宿。
お母さんのきんぴらごぼうと餃子。
飲んだ翌朝コートのポケットから出てくる冷えたコーンスープ。
サバ缶の骨のホクってするとき。
何回も読んでる本ではじめて気づく誤植。
旅先で早々に観光に飽きたときのカフェでの人間観察。
過去に読んだ小説についているドッグイヤー。
パンちゃんのいびきと寝言。
穂先メンマやわらぎの最後に残る穂先のペラペラ。
ミロを混ぜるスプーンについたミロのかたまり。
娘の寝顔と寝息と朝のダンス。
深夜にカップ麺を食べる旦那からもらうひと口。
ダースの長辺側を高さの半分くらいのところで歯を入れるとすっと切れる感じ。
冷たい有塩バター。
ペラペラのロースハム。
休日の昼間に飲むビール。
朝イチあるいは深夜の人の少ない映画館と、その映画館から出て人混みにまぎれる瞬間。
猛烈に眠い状態でそのまま寝る瞬間。
娘がメガネを渡して起こしてくる朝。

***

なんとなく、ふと、日記を書きたい、自分の文章を書きたいって思ったのが、年明けのこと。

悲しいかな。文章だったりメディアに関わることを仕事にしていると、思いのままに、とか、筆が動くままに、とかができなくなっていた。
トンマナは?テーマは?ターゲットは?伝えたいことは?とぐるぐるしていたら2月も終わろうとしている。

過日、いい話を聞くことができた。
「いいな」と思ったときのその「いいな」とか「好き」とか「心地よさ」に正直でいること。
そうありたいと思って、そんな「いいな」を書いていこうかと思った。
(それにしても、その時間もまた、なにがどういいと説明しづらいけれど、たしかないい時間だったなぁ)

「いいな」の理由も、背景も、分析も、意味も、結果も、学びも、これからもなく、「いいな」と思ったことをそのまま。
いつまで続くかわかんないけど。
そんなことを考えて過去の私が書こうと思ってやめた下書きを覗いてみたら、ただ好きなものが並んでいた。
改めて見ても「いいよねー」ってものばかりだったのでそのまま。


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