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逗子スカイランナーズが山陰へ、そして映画に

先日、映画『夢見る小学校』を観てから、子どもが自ら考えて仲間と動く力について、なんとなくずーっと考えている。

大人は、ただ見守っていればいいかというとそうではない。子どもの世界、子どもの自治が走り出すまでは、決して先まわりせず、かつ、ちょうどいい塩梅で「ちょっとだけ場を整える」大人がいるといい。

でもこの「いいタイミングで」「ちょっとだけ」というのが、実はすごく難しい。

身近に、子ども同士が響き合い、子どもの自治 が成り立っている大好きな場所がある。コロナ禍で休校が続いた期間に毎日声をかけ合い、森を走りはじめた子どものチーム 「逗子スカイランナーズ」 だ。

最初はただ走るのが好き、仲間が好きで集まっていたメンバーは、ヒマに任せて裏山の開拓や農作業もしはじめた。刈った笹をサンドペーパーで磨いては熱消毒して、エコストローやエコ支柱を制作。「遠征費を稼ごう」と路上販売も行なった。学校がなく、ゆったりした時間に手を動かしながら、世界のどんな場所を走ってみたいか、どんな大会に挑戦したいかも話し合った。

そんな子どもたちの話を聞きながら「世界を目指したかったら、競技としてはトレランよりもスカイランニングのほうが近道かもね」という大人がいた。それを聞いて初めて「スカイランニング」という言葉を知った彼らは、自分たちのことを「逗子スカイランナーズ」と呼ぶようになった。

自分たちでチームのロゴを考え、Tシャツを作り、毎日集まっては新しい遊びとトレーニングを考え出す彼らを見ていて、親の私はあの時期、「このまま学校がなくてもいいんじゃないか」とさえ思っていた。

チーム名を得た彼らは、毎年参加していた地域の大会に加え、米国のバーチャルレース ”100Miles to Aubern” や、県外のトレラン・スカイランニングの大会にも参加するようになった。インスタグラムで活動の発信もするようになった。

( https://instagram.com/zushi.skyrunners )

声かけあって走るのは、子ども。大会の存在を教えるのは、大人。何の大会を目指すかを決めて、そのためにどんな練習をするかを決めるのは、子ども。

子どもたちは、学校が再開してからも毎週火曜日に自分達で声をかけあって練習会を続けた。仲良くなったトレイルランナー 宮崎喜美乃さんと朝練もするようになり、たくさんの刺激をいただいている。


2年たつ頃には町の飲食店 AID KITCHEN がチームに遠征費とお弁当のサポートを申し出てくださり、3年たつ頃にはなんと、メンバーの一人がスカイランニングのユース日本代表選手に選ばれた。



初期メンバーはこの春で全員が中学生になった。
春休みには、新5年生たちに引き継ぎ式が行われた。

上級生たちで話し合って新部長と副部長を決め、新部長には「なぜ君に部長を託そうと思ったか」の理由までしっかりと伝えていた。たくさん褒められた5年生の新部長は思いっきり照れて、でも確実に勇気を受け取っているように見えた。


中学生になった先輩は言った。

「大事なこと言うよ。
    その日、どこにいくかはみんなで相談して決めること。
 鬼ごっことか遊びもたくさん入れていいけど、山には必ずいくこと。
 ゆっくりな人もちゃんと楽しめているか、みんなで気にかけること」

ちょっと不安そうな新部長に、元部長が伝えた。

「大丈夫。中学生で相談したんだけどさ。
 みんなが慣れるまでは俺たちが毎月1回ずつだけ部活を休んで、
 交代で練習を見にくるよ」


子どもたちの自治力に、心が震えた。




私が中学生のときは、部活の日々の練習メニューはもちろん、新しい部長だって先生が決めていたと思う。

先生たちの働き方改革が叫ばれる中、もっと子どもたちに任せるのは難しいのだろうか。

顧問の先生の仕事はあくまでも困ったときの相談役・対外試合の調整役となり、「日々の練習は自分たちでやりなさい」と伝える。先生は、そのつもりで上級生たちを育てていく。

子どものリーダーが育つには少し時間がかかるだろうけれど、信頼して任せ、自治を目指して寄り添ったら、中学生ならきっとできるようになるのにな。



逗子スカイランナーズの話に戻る。

「走るのが大好き」な数人が集まりはじめてから3年。今も選手として大活躍中のランナーもいれば、中学校入学と同時に選手は引退して、別のことをはじめる子もいる。どちらも共存できているのがすごくいいなと思う。

小学校高学年の多感な時期にこんなに楽しい子どもの自治を経験できて、自分をサポートしてくれる地域の大人の存在を肌で感じることができたこと。一生の宝物だ。

子どもが育つには「3つの間(時間・空間・仲間)」が必要だという。何かが足りないときだけ、周りの大人がほんのちょっとサポートすれば、子どもの集団はどこまでも伸びていくのを、スカイランナーズに見せてもらった。


きみたちのこと間近で見れて幸せ。

これからも応援しているよ。それぞれのペースで、前へ、前へ!



そんな逗子スカイランナーズの6年生(だった)4人が、春休みに山陰を旅してきた。

大好きなトレラン選手宮崎喜美乃ちゃんに声をかけてもらい、山陰海岸のトレイル36kmを数日間かけて走る旅。皆で山陰の美しさに浸り、がゆえに一層際立つ海洋ゴミの問題に触れた。

走り、遊び、笑い、環境問題を考える12歳たち。
そんな彼らの様子が、なんと!

このたび、40分間の短編映画『Our Beautiful Playground』になりました〜。

「山陰海岸がこんなにも美しいことも、にも関わらず海流の関係でこんなにもゴミがあることも、たくさんの人たちに伝えたいなと思ってた。
 走ることも海も大好きな6年生のみんなと一緒になら私には思いつかないような方法で伝えてくれるかなと思ったんだ。
 よかったら、山陰を一緒に走りに行かない?」

と声をかけてもらい、二つ返事で出発。美しい海岸線と、海洋ごみの問題に向き合った4日5日の旅は、40分のショートムービーになりました。


同行したカメラマンは24歳の若き監督・多田海くん。すっかり子どもたちの仲間になりながら、一緒に走り、気づき、動いてくれた。

主演は #とびうおクラブ で小さな頃から遊んできた6年生の4人組。親元を離れ、喜美乃ちゃんや海くんをはじめ、ディレクターの 田中嵐洋くん、写真家の志津野雷くん、サポートの上山葉ちゃん他、たくさんの魅力的な大人たちと一緒に行った旅。小学校を卒業して中学校に入るこのタイミングって独特の感受性と、がゆえの眩しさがある。いろんなことを感じさせてもらった、宝物のような時間だったろうな〜!


5月4日、逗子海岸映画祭の The North Day で本邦初公開した映像が、この度、ウェブ上でも視聴可能になりました。40分間のショートムービー。
お時間があるときに是非、ご覧ください。

https://drawingandmanual.studio/our-beautiful-playground2022

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