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藤野秀「日本の中小企業は成長しつづけている」

生い立ち

こんにちは、皆さん。私はファンドマネージャーの藤野秀と申します。
今からご覧いただくスライドには、私がファンドマネージャーとして成功した理由を証明する写真が含まれています。
まずはこのスライドをご覧ください。
皆さん、こちらを見て何が分かるでしょうか?
これは実は、私の母の写真なのです。
母はワコールで働いており、おそらく日本で一番多くのブラジャーを販売した人ではないかと思っています。
彼女は40年間ブラジャーの販売に従事し、何度もワコールの日本一の販売員になりました。
私は、日本で最も多くのブラジャーを販売した女性は母だと思っています。

私にとって、家庭での話題はいつもブラジャーのことでした。
年頃の男性にとって、毎日女性下着の話を聞くのは苦痛でしたね。
母は、「今日は40枚売れた」とか「今日は10枚しか売れなかった」といった話をよくしていました。
また、母がデパートで働いていた時、友達の母親がそのデパートでブラジャーを買うと、その話が周りに広まり、私は少し微妙な気持ちになりました(笑)。
しかし、今振り返ると、母がブラジャーをたくさん売ったおかげで、私たちは生活に困ることがありませんでした。
おかげでピアノの練習を続けられ、大学にも行くことができました。
ブラジャーのおかげで、私はファンドマネージャーになることができたのです。

ファンドマネージャーとは?

さて、ファンドマネージャーという仕事について説明がないまま話を進めてしまいましたが、皆さんの生活にとって非常に重要な仕事です。
年金の運用など、私たちが行っていることは、実は皆さんの生活に直結しています。
しかし、私が気になっていることがあります。
私は現在も大学で教鞭を取っているのですが、3年前に行ったアンケートで、金融業界に対する若者のイメージが80%が悪いという結果が出ました。
これは、若者の一般的な考えを反映しています。
日本では、多くの個人が大量の貯蓄を持っていますが、その多くが十分に活用されていません。
例えば、日本人の寄付の平均金額はたったの2,500円です。
これに対してアメリカは13万円で、50倍以上の差があります。
日本人の寄付率は低く、3人に2人が寄付をしていません。
一方、アメリカでは3人に2人が寄付を行っています。
これは非常に重要な問題で、日本人がキフーをもっと積極的に行うことで、私たちの生活はもっと豊かになる可能性があるのです。

このように、ファンドマネージャーとしての私の仕事は、皆さんの生活に密接に関わっています。
そして、私がこの道を選んだのは、母がブラジャー販売を通じて家庭を支え、私に教育の機会を与えてくれたからです。
私は少し特殊なファンドマネージャーかもしれませんが、この仕事を通じて皆さんの生活に貢献できることを誇りに思っています。

日本人はお金が嫌い?

日本人は自分たちを金銭に関して綺麗な民族だと思いがちですが、実際には投資と寄付が嫌いです。
私たちは、お金を貯めることを非常に好む民族なのです。
なぜお金に対しての嫌悪感があるかというと、働くことへの意識が関わってきます。
最近、働くことのイメージが悪化していると感じています。
私は明治大学を含む様々な大学で教鞭を取っており、そこで働くことに対する学生たちの意識について調査しました。
結果、18歳から29歳までの日本の若者の中で、働くことが当たり前だと思う人は全体の39%に過ぎません。
つまり、60%以上の若者が働くことを当たり前と思っていないのです。

日本人は会社が嫌い

また、日本人の愛社精神についても誤解があります。
企業に対する愛着に関するアンケートでは、日本人の僅か31%しか愛社精神を持っていないことが分かりました。
これに対してアメリカは60%、ドイツは47%です。
日本人の多くは、働くことをストレスと時間をお金に変える手段と捉えており、ポジティブな意味合いよりも辛い仕事を耐える「我慢料」として捉えているようです。
その結果、会社に対する嫌悪感が強くなり、働くこと自体が嫌いになっている人が増えていると思います。
これは、投資への関心の低さにも影響しています。

日本株低迷のわけ

さらに、日本とアメリカの株価の差について見てみると、30年間で日本の株価はほとんど変わっていません。
それに対して、イギリスではこの期間に株価が4倍になっています。
日本の資産総額が500兆円あるとすると、4倍になっていれば、今2000兆円もの資産があるはずです。
これだけの資産があれば、年金問題や社会保障の問題も一発で解決できたはずです。
そして、日本人の経済的な不安は世界28カ国中で最低です。
これらの事実は、労働意識や会社への姿勢、そして市場への理解不足が原因であると私は考えています。
ですから、私は日本のファンドマネージャーとして、これらの問題に対処しようとしております。

日本の中小企業は成長株

私は大学を卒業してたまたまモルガン・スタンレーに勤めることになりました。
配属されたのは、中小企業の株に投資する部署でした。
27年間ほど、投資の仕事をしていますが、私は中小企業には成長する企業がたくさんあると思っています。
2002年12月に上場していた会社の中で、2010年12月までの10年間、失われた10年と呼ばれる暗い時期に、どれくらいの会社の株が上昇したでしょうか?
多くの人は20%や30%と考えますが、実は70%なんです。
日本の上場企業の70%の株が上がっていたんです。
この70%の企業は、売り上げや営業利益、雇用数も増えていました。
この結果を見ると、失われた10年や20年とは感じません。
日本の企業の70%が、年率7%の成長を遂げているんです。

私は日本株のファンドマネージャーとして、困ったことがないんです。
いい会社がたくさんあるからです。
日本の市場総額上位30社の会社群は、素晴らしい企業ばかりです。
同じ時期に、売り上げのパフォーマンスはマイナス24%でした。
多くの人は大企業が成功していて中小企業が割を食っていると思っていますが、実際には逆で、大企業が足を引っ張って中小企業が成功していたんです。
ジャスダック市場では、同じ時期にプラス43%、マザーズ市場ではプラス67%という結果でした。失われた10年の時期であっても、適切な会社を選べば高いリターンを得ることができたんです。
だから私は、元気な会社を応援すれば日本はもっと元気になると思っています。

レオス・キャピタルワークス

そのために、私は自分で理想の投資運用を作ろうと思い、2003年にレオス・キャピタルワークスという会社を創業しました。
当初は非常に順調で、理想の投資運用を作るために外部から多くの人を雇いました。
会社は成長し、利益も上がり、私は70%の株を持っていたので、20億円の価値を持つことになりました。
しかし、調子に乗ると罰が当たるもので、会社はほとんど破綻しかけました。
そうした時、私はスタッフに対して、この状況を正直に伝え、別の道を考えるかもしれないと伝えました。
すると、スタッフの一人が「理想の投資運用を作ろうと言ったじゃないですか。まだ頑張れませんか?」と問いかけてくれたんです。
それが私にとって大きな転機となりました。

目が覚めた瞬間、僕が本当にやりたいことに集中しなければならないと感じました。
先ほど話したように、中堅・中小企業がたくさん成長していて、そういった企業を応援して日本をよくしたいというのが僕の思いでした。
すると不思議なことに、多くのお客様や社員が僕たちを信じてくれて、応援してくれたんです。
結果として、今僕たちの運用資産は2000億円に達し、日本の投資運用で3番目の大きさになりました。
5年連続でファンド大賞となり、とても良い成績を収めています。
まだ理想の投資運用には遠いですが、それに近づくことができました。
これは、僕たちが応援している会社がたくさんあったからこそ、元気な会社を応援すれば日本はもっと元気になるという信念を持っているからです。
これは僕たちが投資している会社のほんの一部ですが、そういった投資をすることで大きなリターンを得ることができました。

伝えたいこと

今日皆さんに伝えたいメッセージは、「一緒に投資家になりませんか」ということです。
投資家とは、お金だけではなく、すべてが投資になり得るということです。
例えば学校や会社、そしてこういった施設も、どこかの会社が作っています。
これらは誰かがリスクを取って作ってくれたおかげです。
実は投資というのは、私たちの前にも、そして私たちに囲まれていると言えます。
今ここにいるのは、お父さんお母さんが私たちに教育投資をしてくれたおかげでもあります。
今の自分たちがあるのは過去の人々の投資のおかげです。
これからの未来も、私たちの投資で作っていくのが当たり前だと思います。

今できること

今すぐできる投資があります。
それは「ありがとう」ということです。
コンビニエンスストアで買い物をしても、「ありがとう」と言わない人がたくさんいます。
私は必ず「ありがとう」と言うようにしています。
これは実は一つの投資なんです。
なぜなら、「ありがとう」ということによって、働いている人の気持ちに誇りを持たせることができるからです。
働いていることに誇りを持てないのは、私たちお客様側が働いている人に対して感謝の気持ちが足りないからだと思います。
それを逆転すれば、日本は絶対に良くなると思っています。
労働意識が会社意識を呼び、会社意識が投資意識を生み出します。
「ありがとう」はすべての人をワクワクさせる力があります。
この逆転ができれば、働くことが好きになり、会社が好きになり、そういう会社を応援することが良いことだと思うようになります。
そうすることで、心の純度を上げることができると思います。
感謝と誇りこそが投資の原動力だと思います。

私がこれを教えてくれたのは、ブラジャーを作っていた母です。
私のファンドマネージャーでした。
最後に、皆さんと一緒に「ありがとう」と言ってこのプレゼンテーションを終えたいと思います。
じゃあ、皆さん、一緒にいきましょう。せーの、「ありがとう」。

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