経済指標はどこまで予測できるのか?
本文章は、シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」(ネイト・シルバー著)の内容を要約しております。
経済指標をシグナルと勘違いする
米政府は毎年、およそ45,000の経済指標を公表しています。
さらに、民間企業によって公表される経済統計は400万にも上ります。
中には、これらのデータを混ぜ合わせた結果を“高級料理”と主張するエコノミストもいます。
第二次世界大戦以降に起こった主要な不況期は約11回ですが、これらを説明する統計モデルを400万ものデータから選んで設計しようとすると、多くの間違った結果が生じる可能性が高いです。
これは、ノイズをシグナルと誤認する過剰適合の一例です。
スーパーボールが先行指標として扱われた
かつてスーパーボウルの勝敗が経済の先行指標とされていたことがあります。
1967年の第1回から1997年の第31回まで、旧ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のチームが勝つと、その年の株価は平均で14パーセント上昇しました。
一方、アメリカン・フットボール・リーグ(当時の区分)のチームが勝つと、株価は10パーセント下落しました。
この先行指標は31年間で28回、予測が当たりました。
偶然この結果になる確率は約470万分の1となります。
一見高い正解率に見えるかもしれませんが、これはただの偶然だったようです。
その後、この指標は機能しなくなりました。
1998年にはAFCのデンバー・ブロンコスがスーパーボウルを制覇しましたが、株価は予想に反してITバブルの中で28パーセントも上昇しました。
2008年にはNFCのニューヨーク・ジャイアンツがディヴィッド・タイリの劇的なキャッチによりニューイングランド・ペイトリオッツを逆転しましたが、住宅バブルの崩壊を食い止めることはできず、株価は35パーセント下落しました。
1998年以降は、AFCのチームがスーパーボウルで勝つと株価が平均で10パーセント上昇するという、以前とは逆のパターンが見られました。
偶然はなぜ起こるのか?
470万分の1という確率の偶然がどうして続いたのでしょうか?
宝くじが約1億9500万分の1の確率で当たるにも関わらず、数週間ごとに誰かが当てているのと同じ理由です。
一人の人間がくじに当たる確率は非常に低いですが、数百万人が宝くじを買っていれば、必ず誰かは当たります。
同様に、世界には数百万の統計指標があり、その中のどれかがたまたま株価やGDP、失業率と一致しても不思議ではありません。
たとえそれがウガンダの養鶏業の統計であっても、それはただの偶然に過ぎません。
経済学者たちはスーパーボウルのような指標を真剣に受け止めないかもしれませんが、経済的に意味のあるように見える指標なら、景気の重要な先行指標として信じ込むこともあります。
主要な経済指標が20から30あれば十分と思いますが、一方であるシンクタンクは400もの指標を参照して解説します。
中には、半導体企業の出荷受注比率のような難解な指標で予測を行う人もいます。
これだけ多くの指標が存在すると、過去のデータの中でノイズに適合するものを見つけるのは容易ですが、本当のシグナルを探るのはずっと困難です。
本当に予測できるものはほとんどない
因果関係と相関関係を区別するのは非常に難しいです。
多くの人が「相関関係は因果関係とは別物」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
2つの変数が統計的に関連しているからといって、一方が他方に責任があるとは限りません。
例えば、アイスクリームの売上げと森林火災は夏に増えるため相関関係がありますが、因果関係はありません。
アイスクリームを買ったからといって、森林火災を引き起こすわけではないのです。
特に経済において因果関係を理解するのは非常に難しいものです。
失業率は一般に遅行指数とされており、不況の後で企業が新しい雇用を控えるのは理解できますが、失業率が高くなると消費者の支出が減るために景気がさらに悪化することもあります。
そのため、一般的には遅行指数である失業率もある条件下では先行指標になり得るのです。
経済予測は不確実性を伴うもので、多くの異なる要因が絡み合い、それらが絶えず変化するため、予測が難しいのです。
消費者は経済の警告サインを素早く感じ取るが、経済の回復を実感するのはしばしば遅れて、不況が終わったと広く感じられた時である。
このため、消費者信頼感が先行指標なのか、それとも遅行指標なのかについては、エコノミストの間でも意見が分かれる。
どの段階に景気があるかという認識の違いによるものだろう。
また、信頼感は消費者の行動にも影響し、経済への期待と現実の間にさまざまなフィードバックループが発生している可能性がある。
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