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《ドラマ》 Woman を観て

ドラマ/Woman/坂元裕二/2013

坂元裕二脚本の作品はいくつ目だろう、と思い数えてみた。
ドラマ、ドラマスペシャル、短編、映画など合わせたら、22作品目だった。
いやー、かなり観たね。数字にするとすごい。少し達成感を感じるくらい。
このドラマはなかなか連続で観る時間を取れなくて、少し観るのに時間がかかってしまった。
昔のドラマを見る時は、なるべく短い時間で集中して観たほうが没頭できるから良いかも、と思った。


事故で夫(小栗旬)を亡くしたシングルマザーの小春(満島ひかり)とふたりの子供達、さらに小春の実家、母親の植杉さん(田中裕子)と再婚相手のナマケモノさん(小林薫)と、その夫婦の娘で妹でもあるしーちゃん(二階堂ふみ)との関係のお話。
結構重めなテーマで、ゆっくり物語が進んでいく。
重要なシーンのセリフに音声がなくて、別の人の言葉や“遠き山に日はおちて”の曲が流れているのが印象的。
観ていて飲み込まれていくような感覚になる。


“幸せとか 不幸なこととかってないの
「幸せだ〜」って感じられる心だけがあるの”


小春は幼少期、母親に捨てられ(たと思い)、夫を事故で亡くし、それでも子供達に愛情を注ぎ、貧困の中でも一生懸命に生きている。
本当に良いお母さんだな、と思う。

自分が病気になってしまったこととを子供達に伝えるタイミングって難しいよね。
自分しか親がいない、守れる人がいないと思っていて、子供達にとっての父親を亡くしている状況で、自分もいなくなるかもしれないということは、子供達の心にとんでもなく大きなダメージを与えることになる。
かと言って何も伝えないということもできない。

覚悟を決めて、全てを引き受けた小春は強くて美しい。
私はあんな風に生きることができるだろうか、と思う。
どうしても許せないことがあって、それを受け入れることは、なかなかできることではない。
母親だから、何よりも子供達を守っていかなくてはいけないから。


小春が病気になったことは、決して良いことではない。
以前、Podcastのそうだ!ゲイにカミングアウト で、“本当に辛い経験はなければよかったと思うけど、それが今の自分を作っているから、あってよかった”というようなことを何度か話していた。
そうなんだと思う。

辛い経験があったからこそ今がある、とは思いたくはないし、なければ良かったことだって絶対にある。
ただの結果論でしかない。
それでも、小春は病気になったことで、もう頼るしかないという状況まで追い込まれたことで、母親ともう一度会い話をし、心を通わすことができて、最後には笑顔になれた。


物事には良い面も悪い面も、どちらもある。
私はナマケモノさんがいてくれて本当に良かった、と思うのだけど、ナマケモノさんってテーラーが儲かっていないのにあまり働いていなくて、代わりに植杉さんが働きに出ているんだよね。
でも、でないと、あのナマケモノさんという明るくてひょうきんで穏やかなキャラクターは生まれないと思う。
ナマケモノさんがいなかったら、小春と植杉さんは、あの関係にまで至らなかったと思う。

ナマケモノさんがしーちゃんに河川敷で叱るシーンがすごく好きなんだけど、悪いことは悪いと叱って、でもあなたが大切だと伝えて、親として真正面から向き合ってくれる。
そういう父親だったから、しーちゃんは更生しようと思えたのだと思う。
これは植杉さんとの関係では生まれなかったことで、人には役割があるのだなぁと感じる。


先生役の高橋一生も良かったな。
自分の大切な人を亡くしているからこそ、親身に自分のことのように心配し喜んで。
でも、そのたびに思い出して辛そうだな、と思う。
患者を救うことが先生の救いになっているといいのだけれど。


“人生に答えはない
人は最後のページを読むことはできない”


観終わった後は、すっ…と滑らかに日常に戻るような感覚だったんだけど、少し時間を置いてから、色々と思うことが出てきた。
植杉さんの気持ち、しーちゃんの気持ち。

人を頼ることで、心を開くことで、自分の罪を認めることで、どんなに辛くても踏ん張って前を向くことで、そんな自分も周りの人をも受け入れる努力をすることで、物語は少しずつ変わっていくのだな、と。
人は一人では生きていなくて、周りの人と助け合い、愛を伝え合い、傷つけ合いながら、影響し合っているのだな、と。


田中裕子のシーンで観覧車が出てきたの、Motherと繋がっているようで、良かったな。


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