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【展覧会記録】よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技

▼訪問した展覧会

『よみがえる正倉院宝物 再現模造にみる天平の技』

▼感想

宮内庁正倉院事務所が明治時代から作り続けている正倉院正倉の宝物の精緻な模造の展覧会。メインビジュアルにもなっている五弦琵琶の模造が見たくて訪問しました。

模造 螺鈿紫檀五弦琵琶

『模造 螺鈿紫檀五弦琵琶』
明治時代・19世紀 原品=奈良時代・8世紀
原品は唐式五絃琵琶の世界に唯一つの遺例で、その希少性と装飾の華麗さから、正倉院宝物を代表する存在である。撥面には玳瑁を貼り、螺鈿で駱駝に乗る人物や熱帯樹を描く。背面には宝相華や含綬鳥、飛雲を、螺鈿と伏彩色を施した玳瑁の象嵌で表わしている。

出典:文化遺産オンライン

琵琶はふつう弦が4本ですが,これは5本で,インドで生まれた楽器といわれています。五絃琵琶は世界中で正倉院にひとつしか残っていません。紫檀という南方の木で作り,貝がらを文様に切って貼る螺鈿という技法でかざっています。

出典:宮内庁キッズページへようこそ

模造と言えど、侮る事なかれ。人間国宝に指定されるような当代技術の最高峰を極めた職人と、1300年前の工法や彩色を解き明かすハイテクが掛け合わさって、聖武天皇が愛蔵していた当時のままの姿を再現しているという大変貴重な品々が展示されていました。

そもそも最近の私は空前の日本史(マイ)ブームの只中にいます。学生時代に受験日本史として勉強した点と点の情報を、connecting dotsさせる感覚が面白くて、ざっくり日本史を洗いなおすのが趣味化しています。本展覧会はそんな私にとっては垂涎ものの内容でした。

大陸で起こった仏教が様々な宗教と絡み合いながら、大乗仏教となり、それが奈良時代に日本へ伝わって、聖武天皇の時代に鎮護国家が推進される。※正倉院には当時伝来した大陸由来の品々や仏教用具の宝物が多数収められています。

その後、仏教が腐敗したり、神道と交わったり、民衆に向けたものが生まれたり、あれやこれやあって、明治新政府が「国家神道じゃーー!」ってなったので、廃仏毀釈の流れが生まれてしまう。危機感を覚えた宮内庁によって、明治時代に法隆寺正倉院の模造プロジェクトが始まったというわけです。

こういう日本史のダイナミズムの中で展覧会を眺めてみると知的好奇心がむくむくと湧き上がってきましたし、長きに亘って守り継いできた日本の宝物を、我々の代で壊してはいけない!そんな明治時代以来の関係者の強い思いを感じたことも感慨深かったです。

さて、展示されている作品は本当に豪華で、1300年前の技術とは思えない精緻で豪華なものばかり。特に螺鈿や象嵌の技術は信じられない細かさでした。

模造 螺鈿箱 一合 
模造 金銀鈿荘唐大刀 一口

こんなにも色彩豊かで装飾性に富んだ品々に囲まれて生活をしていたのか、聖武天皇は!!すごいな!!という感じでした。また、歴史上の人物で実在感が薄かった聖武天皇の、袈裟や楽器、碁石、文を切る刀などを目の当たりにすると急に本当に生きていた人なんだというリアリティが増したことも、歴史スペクタクルで大変面白かったです。

展示会場内は撮影禁止だったのですが、図録と五弦琵琶フィギュアを買ったので、ゆっくり堪能したいと思います。

購入したフィギュア



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