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犬ヶ島

犬ヶ島(Isle of Dogs)
2018
ウェス・アンダーソン監督

イギリスから来た研修生ジェームスくんが、おすすめしてくれたストップモーションSFコメディアニメ映画「犬ヶ島」。
俳句が好きで、村上春樹やカズオイシグロが好きな彼のおすすめならと見てみました。

架空の都市、ウニ県メガ崎市が舞台。
犬嫌いの小林一族が治めるメガ崎市には、犬の伝染病が蔓延していた。渡辺教授により血清が発表されるが、小林市長は強引にゴミ島への犬の隔離条例を可決する。
小林市長の養子アタリ少年の犬スポッツが隔離犬としてゴミ島に送られ、1ヶ月後スポッツを探しにアタリは一人ゴミ島に乗り込み、そこで5匹の犬と出会う。
メガ崎市では、渡辺教授がわさび毒で自殺と報じられ、不審に思う高校生新聞部員達が、小林市長が権力を悪用し犬の伝染病を蔓延させたことを疑い、アタリ少年と犬たちの反撃を手助けする。

神社参拝から始まり、相撲場所、寿司屋、日本らしい場面が緻密にストップモーションアニメで表現されています。
全編に流れる和太鼓が少年アタリと犬たちの冒険と小林市長の暗躍にぴったり。メガ崎市やゴミ島の廃墟は軍艦島や鬼ヶ島伝説を思わせます。
声優が豪華で、渡辺謙さんがちょい役だったり、オノ・ヨーコさんにあんなセリフを!言わせていたり、犬たちがスナウト病の症状でするくしゃみ(特にスカーレット・ヨハンソンの演じるナツメグの)がかわいい。
登場人物や犬達は英語と日本語が入り混じっているので、字幕版だと途中から通訳が英語を話し出したり、日本が舞台というより異世界感。
俳句が人の心を揺さぶるメッセージとして使われていて感動しました。

キャラクターも魅力的で、色んな社会風刺もあって、ストーリーも面白かったけど、なんとなく残る違和感はなんだろう?
犬達は洋犬しかいないし、犬への接し方や、高校生の会話やニュース報道、議会の場面はアメリカスタイルで、アタリとスポッツの関係性が主従関係で、桃太郎が家来にするのとも違い、時々高圧的な態度なのが不快に感じる。
俳句は、桜の花を死や儚さと重ねることで、その悲しみを表現しているのであり、意思表明のように使われるのは違和感を感じる。
動物も神社では御霊として祀っているのであって、スポッツファミリーがヒーローとして神社に飼われているのは違う気がする。
犬や猫を神として祀るとか、辞世の句を詠むとか、日本人には当たり前に感じることを、西洋スタイルの中で象徴的に扱うと、ハラキリやカミカゼに近くなるようで気持ちがざわざわするのかもしれない。 
緻密に描かれていたからこそ、その違いがはっきりと感じられたのだろう。

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