シェルブールの雨傘
雨に煙る港町シェルブール.
おしゃれな雨傘屋の娘ジュヌヴィエーヴと、斜め向かいのガレージの修理工ギイ。
若い二人は、お互いしか見ていない。
資金繰りに苦労していてもおしゃれをすることはやめられない母には内緒.
自分を育ててくれた、脚の不自由なおばには内緒.
二人は結婚を夢見る.
ある日、ギイの下に兵役令状がくる。
彼は2年間シェルブールに戻ることはない.
残されたジュヌヴィエーヴのお腹には彼の子が.
彼の不在にやつれ、元気を無くしていく。
手紙を書いても返事は途切れ途切れ.
危険な場所にいるのか?ほかに好きな人ができたのか?
日に日に大きくなるお腹に、不安が募って途方にくれる。
そんな彼女を慰めてくれたのは、傘屋の負債を助けてくれた宝石商のカサール.
彼は彼女の子を自分の子として育ててもいいとさえいってくれる.
ギイからの手紙がふっつりと絶えて数ヶ月.
ジュヌヴィエーヴはカサールと結婚し街を出て行く.
そのシェルブールに、足を負傷し生死をさまよったギイが戻ってくる.
病床に臥せっていたおばをずっと見つづけてくれていたマドレーヌだけが彼を待っていた.
ジュヌヴィエーヴと子供、そして傘屋もなくなり、ギイは荒れていた.
復職したガレージでもごろつき呼ばわりされ、酒をあおる毎日.
叔母が亡くなり出て行こうとするマドレーヌに、
ギイは今自分が必要としているのが彼女だと打ち明ける.
数年後、ギイはガソリンスタンドを経営し、マドレーヌとの間に男の子もできた.
ある雪の降る日、そこに一台の高級車が.
降りてきた喪服の女性はジュヌヴィエーヴだった。
車には女の子の姿が見える.
よく似ている、という彼女に、ギイは顔を合わせることを断った.
色とりどりの傘が咲き乱れるオープニング.
人を愛する喜びに夢中になっている二人.
ラスト、
降りしきる雪の中、高価な装身具をつけたジュヌヴィエーヴと、
セーター姿のギイ.
二人が静かに話しをし、静かに別れたのは、
それぞれ違う道を選んだことを、今は納得しているから.
無邪気なまでに純真な愛を誓ったのがいいわけでも、
苦しい不安に耐え切れず別の愛を選んだのが悪いわけでもない.
人生における段階を、一つ一つ、カードをごまかさずに進めていくこと.
誰かのためにではなく、自分のために最善の選択を
自分も周りの人も幸せにできる選択をし続けること.
悔やむような過去など存在しない.
起こってしまったことは変えられないけれど、その意味は変えられる.
素晴らしい愛を経験したこと、素晴らしい子供を授かったこと、
本当の愛に気づけたこと.
起こったことはすべてベストのタイミングで起こり、すべてに意味がある.
そうして生きていくことは、けっして見苦しくはないことをこの映画は教えてくれる。