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ハックルベリーという名の謎のベリー

最初に「ハックルベリーフィンの冒険」のお話ではないことをお断りしておきます。今日のお話は、農産物直売所で出会った珍しいベリー(?)、ハックルベリーについてです。

前置き
私が農産物直売所に足繁く通う理由の一つが、珍しい野菜や果物との出会いです。ここでの「珍しい」というのは、街中のスーパーではあまり見かけない、例えばポポーというカスタードクリームみたいな味のバンレイシ科の果物とか、京都のおばんざいでお馴染みの芋茎(ずいき)なんかを指してます。凄いヒットアイテムに出会えることもあれば、期待して食べたらイマイチなことも。市場に出回らないのは、流通が難しかったり少量生産という理由だけではなく、個性が強すぎて人によって好き嫌いが分かれたり一般受けしないというのもあるのかなと思います。

ハックルベリーとの出逢い
さて、前置きが長くなりましたが、はじめてハックルベリーを農産物直売所で見かけたのは、大好きなブルーベリーのシーズンが終わる8月末のこと。店の入り口の一番目立つ場所にどかーんとポップ付きで置かれていました。

ハックルベリー、生食不可。ジャムがおすすめ

ご丁寧にジャムのレシピまで添えられています。つやつやとした濃い紫色の実は、見るからに美味しそう(それにブルーベリーよりもちょっと安い...)。果物、特にベリーに目がない私が飛び付かないわけがないでしょう。レジのお姉さんは、満面の笑顔でスキップする客を見て呆れていたに違いありません。

帰りの車の中で、待ちきれず「ハックルベリー」でネット検索してしまいました。主人が運転席から尋ねます。
「何かわかった?」
「とっても目にいいんだって。アントシアニンがブルーベリーの4倍らしいよ」
「ふーん、あとは?」
「ハックルベリーは厳密にはベリーじゃなくて、ナスの一種みたい。それでね、毒があるんだって。毒があるナス、ポイズンナス(poisonous)、なんちゃって」
「…」
「でも、やっぱりジャムがおすすめって書いてあるよ。帰ったら作ってみよう」

ジャムを作ってみた
ハックルベリーがベリーでないという事実に、やる気をそがれつつも、レシピに従い、ジャムを作ってみることにしました。

なになに、「ヘタが有毒だからすべて取り除け」とな? パックにはおよそ200粒もの実が入っています。その小さなヘタをちまちま、全部取るのに半時間もかかりました。

次は「重曹を入れた大量のお湯で2回茹でこぼせ」。あー、面倒くさいけど、アクをとらなきゃ有毒だっていうんだから仕方がない。でも、この不気味な緑色の汁は、紫色のハックルベリーのいったいどこからわいて出たのか…。

最後に「大量の砂糖とレモン汁を加えて水気がなくなるまで煮詰める」と出来上がりです。鮮やかな紫色のジャムは、見るからに美味しそう。でも、ベリーを調理すると甘酸っぱい匂いがしそうなものなのに、かすかに香るのはやっぱりナス臭…。

実食レポート
秘蔵のレディーボーデンアイスに出来たてのジャムを添えて、「どうぞ〜」と、まずは主人に食べてもらうことにしました。

「美味しそうにできたじゃない」と、ご機嫌だった彼の顔が、食べ進めるうちに微妙に曇ってくるのが分かりました。

確かに甘い(砂糖をたくさん入れたから)。かすかに酸味もある(レモン汁もいっぱい入れたから)。でも、味はやっぱりナス。舌触りもモソモソしてお芋を食べているよう。これは、ひょっとして、あんまり、美味しくないかも…。

「ナスだね」
「ナスだよね」
夫婦でそう繰り返しながらこれはベリーではなく、「ハックルナス」だという事実を噛み締めました。そしてナス本来の味が極甘のレモン味とあまり相性が良くないこともよく分かりました。

それでも私たちは、大量に生産されてしまったハックルベリージャムをがむしゃらに消費しました。試行錯誤しながらさまざまな食材と組み合わせた結果、高級アイスクリームのレディーボーデンよりもお財布に優しいラクトアイスの「爽(そう)」のほうがさっぱりしてまだ合うという結論に至りました。これはオススメですよ(冷汗)。

まとめ
結論としては「もう二度と買わない!」だけだと芸がないので、反省しつつも今後の学びにつなげたいと思います。

私たちの最も大きな失敗は、「ハックルベリーにブルーベリーを期待した」ことでした。見た目や名前に惑わされ、ハックルベリーからしてみれば、勝手に期待して勝手に裏切られたと怒っている被害者意識だらけのクレーマーではありませんか。最初から「ベリー」ではなく「ハックルナス」として受け入れていれば、食べたときの感想も少しは変わっていたかもしれません。

そして、やはりリサーチ不足でした。あとから「ハックルベリージャム まずい」で検索してみたら、ここで書いたのと同じような失敗体験のブログがたくさん引っ掛かりました。今後は未食の果物や野菜を買う前には、検索ワードを駆使してリサーチしようと心に誓いました。

最後に、今回私たちが食べたハックルベリーの正式名称は「ガーデンハックルベリー」といって、物語のハックルベリーフィンの名前の由来であると想定される本来の「ハックルベリー」とは全くの別物みたいです。「ガーデン」のつかないハックルベリーは、アメリカのロッキー山脈に自生する、ブルーベリーと同じツツジ科の果実で生食も可能で美味だそう。日本ではまずお目にかかれることはないでしょうが、いつか食べられることを夢見ています。

加えて、(ガーデン)ハックルベリーだって、ジャムよりもっと素材に適した食べ方があるかもしれません。ナスの味を活用して、漬物とか煮物とかもいいかなと思います(有毒だけど…)。いつか、ハックルベリー愛を持った奇特な方が、その情熱を惜しみなく注ぎ込み、最高のレシピを開発してくれることに期待しつつ、今日も私は珍しい食材を求めて道の駅に足を運ぶのでありました。

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