見出し画像

妊婦、産婦になる

ご無沙汰しております、まいもんです。

各種SNSなどでは既にお知らせしていますが、無事に息子をリリースし、現在アカチャンという禁断のかわゆい生き物をキメまくる生活をしています。

簡単にではありますが、出産について覚書を残しておこうと思います。

前提

・2020年3月に妊娠確定、世はコロナでざわざわの時期
・里帰りはなし。実家は大阪で、母はわたしと住んでいた家を引き払って祖父母の家で同居をしているため実家といえるようなくつろげる家がないため東京に…というか、初めから里帰りは検討しなかった
・夫の育児休暇は1ヵ月。ということだったけど後に分かったのが、勤務先は男性社員に育児のための休暇取得を1ヵ月強制しているものの、1ヵ月まるまるではなく「1ヵ月の有給休暇」を取得させるということらしく、しっかり休める感じではなかった(ちなみに、産後1ヵ月半経った今でも1日も取得していません。建築業界は本当にブラックです)
・無痛分娩を希望し、区内で実績の多い某病院を選択。4月からはこちらの病院で受診。
・妊娠の経過はおおむね順調(こちらの記事でくわしく書きましたが、順調だったのは息子の成長だけでわたしの体調はあまりかんばしくありませんでした)息子は何度か逆子になるも、そのたびに大逆転してくれるすばらしい運動神経の持ち主
・息子の成長スピードはすさまじく、妊娠34週前後で「分娩を早めましょうか(=あまりに大きくなると骨盤を通り抜けられず、帝王切開になる)」と言われ、元々の予定日よりも早い10月27日だった計画日をさらに早め、10月15~22日の間でキャンセル待ちをすることに
・15日に空きが出たため、前日の14日に入院→15日に出産することが決定

10月14日(水)入院~分娩準備

朝10時に病院へ。7時以降は絶食とのことで、朝6時に起きてギリギリで朝食をとりました。
ちなみに多くの妊婦は安定期に入ったころからそわそわと「入院バッグに荷物詰めた」とか「おやつ何入れよう」とか準備を進めるが、わたしはいつもの旅行前日と同じように「やっべ明日なのに用意できてねーわ」と焦りながら荷物を詰めた。入院に必要なものは旅行に必要なものと少し違うので、意外と足りないものが多くてコンビニへ走りました。

10:00 病院に到着。今年は感染防止のため、妊婦健診の際の付き添いも面会も立ち合い出産もNGの産院がけっこう多いようです。わたしがお世話になった病院はおそらくもっとも厳しい「オールNG」。入院中の荷物の受け渡しも禁止でした。1週間分の荷物を持っていくのは無理なので、タオルやパジャマは病院と提携している業者のものを借りることに。夫とは病棟2階のナースステーション前で別れ、分娩予備室という個室に入りました(ふつうの病室と変わらない印象)。

10:45 麻酔ルート確保
無痛分娩は背中に麻酔を入れて痛みをやわらげるもので、そのためのルートをとります。横向きになって丸くなった姿勢をとるのですが、驚くほど腰が固い(長座体前屈がほぼできない)わたしは、以前受けた別の手術で同じ姿勢をとった際には「やる気あるの?」と謎の詰められ方をしたほどで、今回もか…と思っていたところ「上手ですね~!」とほめられ、助産師さんの最初の優しさにふれました。痛いことには変わりないけど、予防接種よりも痛くない。
麻酔用の点滴ルート確保は腰の中の嫌なところをクッと押されている感じでしたが、とにかくびびって背中を引っ込めない・動かないことが重要と再三言われていました。助産師さんが体を支えてくれていたので安心して身を預け、心を無にして視線の先にあった服のシワを眺めていました。

11:45 麻酔の効きを確認してから、子宮口を広げるためのミニメトロという器材を挿入。麻酔なしだとけっこう痛いらしいのですが、もちろん無痛です。麻酔を止めてからは自由行動ですが、特にやることも行きたい場所もないので昼寝をしていました。最後の休息…。

16:15 気のせいかと思ってたけどどうもお腹が痛い…。もはや懐かしいあの痛さ、生理痛のような痛さです。なんとなく間隔を計ってみると、このときの間隔は5分くらい。

17:00 NST(胎児の心拍、お腹の張り=陣痛の強さ、間隔などをモニタリングするもの)スタート。結構張っているらしい…。腰痛も加わり、鼠径部なども痛くなるものの、陣痛~!という感じはなし。

18:00 夕食をとって就寝準備へ。分娩中にうっかり脱糞する人も少なくないということ、産道を通りやすくするためにトイレにこもりました(ここで出ないと下剤→浣腸コースなので、なんとか成功してひと安心…)。また、シャワーなどは浴びられないためホットタオルをもらって清拭のみ。

19:45〜21:45 NST。胎児の心臓がある位置に合わせてセンサーを貼るのですが、ここへきてもまだまだ元気に動きまくるため助産師さんが度々センサー位置を調整。特に問題なく、22時頃に消灯。

画像3

↑コロナの影響で付き添いや立ち合いができないため(もともと立会は拒否していた)、夫とはLINEでやりとり。絶対に息子を連れて帰るぞと決意を新たにする。

10/15 分娩予定日

2:30 眠剤をもらってたものの尿意で起きる。ゴロゴロしながら過ごし
5:00 …てたつもりが朝。えっ早ない?(思わず出てくる関西弁) 5:30からNSTを装着。出産待機中はNSTとの仲が切っても切れない。

5:50 いよいよ出産に向けて麻酔を開始。麻酔を下半身全体にまんべんなく行き渡らせるために右向きで5分、左向きで5分と姿勢を変えます。

6:30 お腹が定期的に張っているらしいけど、まったく感じ取れない状況が続きます。麻酔はすごい。

画像1

↑後日お誕生日新聞を確認したところ、やはりフランスの外出禁止令が一面にきている新聞がありました

7:25 医師による内診。子宮口は3cm(分娩できる子宮口の大きさは10cmなので、分娩まではまだまだ)ですが、徐々に開き始めているため人工破膜をして破水させます。破膜は一瞬で、パチンと音がして水が流れ出る感覚がありました。

7:35 麻酔を一度ストップ。無痛分娩は基本的に分娩時の痛みや子宮口最大開付近のタイミングでの痛みをとるもので、お産がある程度進む=子宮口がある程度開く までは麻酔を止めて通常の陣痛と同じように過ごします。

ところで、この日は付属の看護系大学の学生さんの実習日だったようで「見学してもいいですか?」と打診を受けました。処置などの実習でなければOKです、と答えていたので、このタイミングで挨拶に来られました。

8:50 促進剤を追加。このあたりから、お腹に不穏な痛さが現れ始める…。

9:31 あっ、痛い(と当時のメモに残っていました)

9:40 助産師さんが学生さんとともに様子を見に来て、学生さんにお腹を触ってもらっていると、偶然にも胎児が産道へ向かって回りながら下りてくる「回旋」を体感しました。(胎児は体の向きを変えながら生まれてくるそうで、その回転を「回旋」というそうです)

その後、薬を飲み忘れた二日目くらいの生理痛がわりと短い間隔で訪れる。ふだん、生理痛は重い方ではないので、まだたいしたことないかな?と耐えていました。助産師さんの内診では子宮口4.5cm。あと一段階進んだら麻酔を始めましようか〜とのこと。

10:00 その一段階…はなかなか進まず、促進剤追加。バイトなら休むレベルの痛さに。
10:10 なかなか痛い。これはもう、家でお腹をあたためながら寝込むやつ。他の方の出産レポートなどで見た「全集中・お産の呼吸」に切り替えました。鼻から息を吸い、できるだけ細く長く口から吐き出す呼吸ですが、これがよく効いた。呼吸に集中することで痛みから気がそれるし、一石二鳥。
痛みは1分くらい持続して、そのあと2〜3分空きます。本当に「波がある」という感じで、波がひいた後は全く痛くないのが不思議。
モニターを見ると張りの数値は78。数字よりも間隔を気にするように、と助産師さんにアドバイスをされていたものの、数字は気になる。ちなみにこの数値は100が最大なので、今の痛みはまぁまぁ強めだということがわかりました。

10:30 限界が近いのでナースコール。麻酔を入れてもらい、痛み7割→3割くらいに。全くの無痛にはならないものの、痛みのピークが短くなる感じ。このとき、張りレベルは88でした。
11:15 さらに麻酔追加。
11:30 子宮口5cm。少し子宮口が固いとのことで、お産を進めるために一度麻酔をストップ。麻酔をしていると痛くないため、母体が陣痛や張りに気づけずお産の進みが悪くなりがちなのだそうです。

12:35 胎児が酸欠ぎみ?とのことで酸素マスクを装着され、めちゃくちゃびびりました。張りの回数が多いため胎児が苦しそうな感じ…とのことで、促進剤もここでストップ。

12:50 酸素マスク終了。へその緒が絡まっていたり胎児が足に挟んでしまっていたりで、一時的に酸欠になったのではとのこと。痛みはなく、張りだけがわかる状態。
13:10 促進剤再開。張っても痛みレベルは10のうち1〜2くらい、そのかわりに便意に似た「いきみ感」が表れはじめました。麻酔なしで分娩する人は最後の最後ギリギリまでこの「いきみ感」に耐えねばならないのが相当つらいそうですが、わたしはまだ「ちょっとトイレ行きたいな」程度。
14:10 麻酔再開。痛みは下腹部痛といきみ感、さらに腰がじわじわと横に広がっていっているような感じ。
14:45 内診。子宮口は8cmまで開いているものの、胎児が下りてきていないのでお産が進まないとのこと。無痛分娩では基本的に麻酔中は寝たきり(つまり、立ち上がったり歩いたりして重力によって下ろすのが難しい)なので進めにくいのだそう。うまく回旋するように寝返りと声かけとお祈り。あと、やっていいかわからないけどベッドのリクライニングを少し起こして重力もかけてみることに。

画像4

↑とにかく祈る両親。

16:00 血圧測定と促進剤の効き確認。進みはかんばしくなく、陣痛も1〜3分間隔が続いていました。病院の運用上、促進剤を使えるのは20時まで。それを過ぎるといったん全てを止め、翌日再び仕切り直しになります。痛いのも全部最初からやり直し。入院費も余分にかかる…!それは困る!!
とはいえ現実にはうっすら持ち越しの可能性が見え始め、夫に「明日になる可能性もありそう」とLINEを送りました。

16:15 あまりにも痛いので麻酔を追加。30分にもおかわりの麻酔をしてもらいました。看護師さんを呼んで麻酔を入れてもらい、効くまでの数分がキツイな…と思い、限界が来る前にお願いすることの大切さを痛感…。
17:00 内診。リクライニング効果かお祈りが通じたのか、なんとか胎児が少しずつ降りてきていて、もう少し降りてきたら分娩OKそうとの診断が下りました。
ところが、ここへきてとにかく眠い…麻酔の作用だそう。足のしびれもMAXで、はてどこに麻酔かけてるのか?状態。張りはわかるものの、眠くて反応できない。いきみ感が必要らしいがとにかく…眠い…。

画像2

↑息子の来訪を待つ親ふたり。

18:00 内診。子宮口はあと2mmくらいで全開大。2mmってなに?誤差の範囲じゃないの???と不思議な気持ちに。しかし胎児もようやく降りて来つつあるとのことで、いきみの練習をスタート。深呼吸を2回、次に深く吸って息止めて便を出すイメージでいきみますが、何せ下半身にはほぼ感覚がないのでこれが難しい…!

18:45 導尿と内診、再度いきみの練習。股関節が人よりも緩く、前屈はダメだけど開脚系の柔軟がとても得意なので「足がよく開くね〜!」とほめられていい気分に…。

いよいよ出産

19:00 助産師さんがまた様子見に来たと思ったら「分娩室いきましょっか~」
突然のことすぎて「あっハイ」と準備を始めてしまい、夫にLINEするのを忘れかけました。助産師さんに「旦那さんとかに連絡しなくて大丈夫!?」と聞かれ「アッ…」と思い出し、なんとかLINE送信と行ってきますツイートをして分娩室へ。ベッドに寝たままガラガラと運ばれますが、通り過ぎていく廊下の壁に時計がかかっていて「19時ジャストか…」と記憶に刻みました。

分娩室に入り、助産師さんのナビを受けながらいきみの練習を3回くらいしていたところにいつも検診でお世話になっていた先生が登場。
一回いきんでみるものの「いきんで出てきかけても、いきみ終わると同じところまで戻っちゃうね〜」とのことで、会陰切開と吸引が決定。
(のちに聞いたところによると、通常はまっすぐに回旋して下りてきているはずの胎児が少し斜めになってて引っかかっていたらしい。ここへきてそのどんくささ、かわいい)

ここから、妊婦の間でまことしやかにささやかれていた安産の呼吸法「サンシャイン池崎」を実践。​

そんな自分を客観的に分析するとけっこう滑稽だなと思って、分娩中とは思えないくらい笑ってしまっていたのですが、実はずっとマスクをしていたため笑ってもバレる心配はなく、ずっと「フフ…」と笑いながらいきんでいました

下半身に力が入らないので実際にどれだけいきめていたのかは定かではなく、助産師さんがアバラ折れそうなくらいお腹を押して胎児を押し出そうとしているのを「そんな押すか…そこは麻酔かかってないから普通に痛い…あと息ができん…」と思いながらいきむこと2回、先生が「次で出ますよ、最後は自分の力でいきんでー」と指示を出し、予言通り(?)次のいきみで突如足の間からアカチャンが現れました。マジ!?もう!?!?

助産師さんと先生が「19時20分ですね」と確認している声を聞き、夜生まれか…といまさら実感。自分が真昼に生まれたので、なんだか夜に生まれる子どもに不思議な感覚を抱きました。
産声をまだ上げていない息子はすぐそばの台に乗せられ、助産師さんたちに「がんばれ〜!泣いて〜!!」とお腹を揉みしだかれて無事にギャン泣きがスタート。先生も助産師さんも「大きいね~!!」と笑ってました。※3356gでした。最近の赤ちゃんにしては大きいらしい。
いろいろな処置を受ける息子をぼんやりと眺めながらハッと思い出し、あわてて「男の子ですよね!?」と確認。なぜか「確認しておかねば!!」と強烈な危機感に襲われました。エコーで何度も見ていたものの、現物が“ついて”いるかどうかは見ていなかったので…無事についてました(当たり前)。

生まれたばかりの赤ちゃんを母親の胸に乗せるという儀式もやられ、なんというか出産に感動とかそういうのを全く求めていなかったわたしはおもはゆい気持ちで胸の上に置かれた息子をぼんやり眺めていたのですが、「…あったかいな…」ということに気づいた瞬間、

この子、い、生きてる~~~~!!!!!!

となぜか当たり前のことに爆発的に感動してしまいました。思えばこの瞬間から、わたしは息子をめちゃくちゃかわいいと思うようになったのかも。

切開した会陰を縫合している間、「胎盤、見ますか?」と言われたので、これはまぁ記念に見とくかと思い見せてもらいました。
膿盆いっぱいに乗せられた胎盤。まぁレバーだな…という感じで、思っていたより大きい。これが入ってたならそりゃお腹も重いわ…と納得。出産までの期間、よく息子の健康を守ってくれましたね…ありがとうございます…としみじみ。
20:00 縫合などの処置が終わり、予備室へ。

その後しばらくして、きれいに拭いてもらっておくるみを着た息子が部屋に運ばれてきて、しばし接触タイム。助産師さんのすすめで試しに胸を吸わせてみたところ、しっかりと吸う姿にこれまたびっくり…!え、さっきまで人の体の中にいたくせにもうそんなことできるの…!?と、新生児の能力の高さに驚かされるばかり。
15分ほど二人で過ごす時間がありましたが、わたしはまだ母親としてのレベルがゼロ。ひのきのぼうすら装備していない状態。正直ここで泣きだしたら何もできないため、夫に送る写真や動画を撮りつつも「早く回収に来てくれ」とハラハラしていました。

21時に助産師さんが来て息子は再び新生児室へ。
こうしてわたしの出産は終わりました。

無痛分娩は、わたしにとってすばらしい方法だった

無痛分娩の感想としては「最高」以外の言葉がありません。
麻酔なしでの分娩を経験していないので比較はできないけど、よく言われる「鼻からスイカ」みたいな痛みはついぞ味わわずにすんだし、しいて言えば「最初の点滴(麻酔のではなく、その前に水分やブドウ糖を入れるために腕に刺した太い点滴)痛かったな…」「麻酔切れてからはお股が痛かったな…」くらい。陣痛や分娩にまつわる痛みはほとんどなかったといっていいと思います。麻酔が効く体質でよかった。
あと、痛みがないおかげでとても冷静で、スマホでメモをとりつつずっとツイッターのタイムラインでも実況をしていたせいで「お産が進んでいないのでは」と心配してくださっていた方もいたみたいで、これは予想外でした。ご心配をおかけしました。

たぶん次はもうないけど、ないからこそ余すところなく記録しておけて満足な出産でした。現代の医療は素晴らしい…!

後日談

待機中にお話をした実習中の学生さんとは、退院日にも新生児室で会うことができました。基本的に実習はそれぞれの部署(エリア)で1日だけだそうで、素敵な偶然が重なったもよう。「あのときお腹にいたのがこの子なんですね!」ととてもうれしそうに言ってくれて、わたしもうれしい気持ちに。どうか素敵な医療人になってほしいと願っています。

サポートなんて恐れ多いですが、好きな漫画を買ったりネット配信サービスの利用料を支払ったりさせていただきます!