山根明季子

noteは言葉を探したくて始めました。

山根明季子

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マガジン

  • キュレーション記録など

    企画・キュレーション時に書いた文章などを置いています。

  • 西洋音楽館(バーチャル)

    架空の演奏会場。こちらは私、山根明季子が同時代に書かれた曲について作曲者にお話を聞くことで曲を味わう場所です。明治期に急速に日本に広げられた西洋音楽だけど、21世紀の今、古典と比べて聴くことのできる機会が圧倒的に少ない同世代の作家、日本語や非西欧圏で活動する・・・ベートーヴェンじゃなくてもっと近いところにいる作家は何を書き、何を思考しているのかもっと知りたくて、言葉で共有することで味わえる場所が欲しいと思って作りました。特に書くにも音にするにも受け取るのにも物理的に大きな人力(数)と資本を要するにも関わらず社会構造上どんどん作っては流されていくように感じる管弦楽作品の作曲について。気が向いた時にマイペース上演。

最近の記事

C×C ケージ×山根 -program note- 優とされてきたことの反対側

「こうじゃなくても良い」。ケージは「こうあるべき」から西洋音楽を大きく解放してくれた存在で、接するたびに心が高鳴る。 2022年。既に把握しきれないほどの数の西洋芸術音楽作品が大量に有り、消化しきれず、 たくさんのエネルギーがかけられた同時代作品が構造的にどんどん刹那に過ぎ去っていく感覚がある。音楽において本来多様な価値観が存在する中、音楽活動形態のバランスとして今の西洋音楽内部はその内容に対して歪な状態ではないかと思う。 偏っている部分がほぐれていくことについて考える。

    • 小出稚子「南の雨に耽ける」

      環境・身体・思考停止 ーー山根:「南の雨に耽ける」(NHK委嘱)は、南国の雨の感覚を管弦楽で書いた作品ですよね。 小出:環境っていうのかな。自分が置かれちゃった環境をそのままドーンて。 ーーその発想に至った経緯はありますか?どういう風に。 小出:それがね、あるんだよね珍しく。ジャワに行ったとき。私ジャワに行く前オランダにいて、オランダから直でジャワに行っちゃったんだ。日本を経由してじゃなくて。日本からオランダに留学しててオランダ5年、ジャワ1年ぐらいいたかな。気候が全

      • 杉山洋一「自画像」

        音楽、はどこにあるか 自分が生まれ、現在までの半世紀における世界各国の戦争紛争地域の国歌や州歌を、並置した※解説より抜粋 ーー山根:この曲に対して作曲ではない、音楽ではない、という旨のことをご自身で書かれていましたが、私はとても音楽として心動かされたんです。杉山さんにとって、作曲や音楽ってどういうことですか。いきなりですけれど。 杉山:本質的なことですね。作曲じゃないと書いたのは、自分の中の音とか感情っていうものを・・・感情の昂りみたいなものを音に表すということは一切な

        • 塩見允枝子 | Scores & Dialogue 芸術の当事者性とテキストスコア

          フルクサスメンバー※の塩見允枝子さんのパフォーマンステキストスコア12曲と、実際に実践するにあたってどういうことを考えているのか、私から塩見さんに質問をしたやりとりをおさめたものを、ひとつの冊子にしました。 ※フルクサス=60年代NYを中心に世界中に広がった芸術運動。 私がここで言いたいのはフルクサスの新しさや60年代実験音楽こそ今なお素晴らしいなどということではありません(大好きですが)。特に新奇性・先鋭性が評価され注目されてきたフルクサスなどの昔のイヴェント作品、テキ

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        • キュレーション記録など
          3本
        • 西洋音楽館(バーチャル)
          5本

        記事

          冷水乃栄流「ノットファウンド」

          朽ちていくことを見届ける 人間不在の滅んだ世界の「第九」。 ──文明が退廃した世界で、過去の人類の活動の痕跡が風化し、自然に侵食され遺物となっていく・・・。──(※解説より) ーー山根:私は第九が崩れてボロボロになっていく綻びの断面がとても美しくて、ゾクゾクしました。 冷水:ベートーヴェンの「引用」っていう視点に縛られるとどうしても、引用部分vsオリジナルの部分という二項対立構造って聴かれることが多くて。 ーー何て言うかな、もっと内側に入っていく感じがするんですよ

          冷水乃栄流「ノットファウンド」

          中島夏樹 「ピクセル」

          画像を音に変換する ーー山根:中島さんとは仕事で一度ご一緒して、センスに私がすごく魅かれた。その後「ピクセル」という管弦楽曲を書いてらっしゃるのを知って、実演を聴くことはできなかったんですけど曲について知りたいと思いお話聞かせてもらいました。まず、曲は3パターンのグラフィックデザイン(ドット柄、ストライプ柄、チェック柄)のビットマップ画像を解析した結果からできているんですよね。 中島:元になった画像があって、フリー素材でシンプルなものなんですけど、 中島:3パターンの単

          中島夏樹 「ピクセル」

          渡辺裕紀子「折られた...」

          「立体」と「平面」 ーー山根:この曲に出会ったのは2016年の芥川作曲賞選考会の時。公開選考を経て胸の中で気になる部分があって。”独特の感性で描かれているがそのことが音楽とどう繋がっているのかはわからない、しかし素晴らしい” という評価のところ、もう少し踏み込んで知りたいなって。その「感性」の部分を、言葉として引き出せるものではないかもしれないけれど聞かせてください。まず渡辺さんはこの曲でどのようなことをしようとしたんでしょうか。 渡辺:実はそれまでは、オケを書きたいと一

          渡辺裕紀子「折られた...」

          東京現音計画#10 -program note- 資本主義における消費と音と質感

          売れる物、売れるコンテンツ、売れる音楽。もっともっと!過剰に……。 資本主義社会に生きる私たちは「売れる」「売れない」の尺度によって、意識している以上に多くの物事や行動、活動、環境が不可抗力的に方向付けられ規定されています。ひとつ公演を行うにも、管弦楽作品を一曲上演するにも、生き方の選択ひとつにも、翻弄されうる私(たち)。当たり前と思っていることでも少しズームアウトして見てみると、この消費構造によってしか実現し得ないような独特の状況というものがたくさんあって、今夜はそこにス

          東京現音計画#10 -program note- 資本主義における消費と音と質感